映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

凪待ち

2020年11月04日 | 映画(な行)

ダメ男の果て

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恋人・亜弓(西田尚美)と彼女の娘・美波(恒松祐里)と共に暮らしていた木野本(香取慎吾)。
亜弓の故郷、石巻に移り住むことになりました。
亜弓の父(吉澤健)は末期癌に冒されながらも漁師を続けており、
近所に住む小野寺(リリー・フランキー)が、世話をやいていたのです。
木野本は元来のギャンブル好きで、競輪でお金をすっては亜弓に無心していました。
この度の移住に伴い、木野本は亜弓に、もうギャンブルはしないと約束したのですが・・・。
そしてある夜、娘・美波のことで口論となった二人は別行動となりますが、
その後、亜弓は遺体となって発見され・・・。

亜弓は美容師で、この度この町で美容室を開く事になっていたのです。
つまり木野本は“髪結いの亭主”ということで、
まともに仕事もせず、競輪に浸っていた・・・。
ダメ男の代表みたいなヤツ。
籍も入れていないので、いつでも亜弓は彼を追い出せたと思うのですが、
そこが男女の機微というもの・・・。
木野本も気のいいところがあって、高校生の娘・美波とは妙に気があっていたのです。
この母子は東日本大震災で被害に遭い、川崎に移り住んでいたのですが、
美波はそのことでいじめに遭い不登校になっていた、という背景もあります。

木野本は自分自身の娘ではないことが逆に責任を負わない立場なので、
美波には説教めいたことは言わず、彼女の意思を尊重する形で接していた。
それがよかったのだろうと思えるのです。
だから美波にとっては実の母・亜弓の方がちょっと苦手な存在。

こんな風に登場人物の背景が詳しく造形されていることで、物語にとても深みが出ているのです。
そして、やめようと思いつつも、どうしてもギャンブルから抜けられない、情けない男の心境も・・・。
バカだなあ、いくらお金を失えば懲りるのだろう
・・・と、つい思ってしまうのですが、
現実に、同じ事を繰り返しギャンブルや薬物をやめられない人はいるものです・・・。

そして、亜弓の突然の死には私までショックを受けまして、
あ、ヤバい、これでは木野本が疑われてしまう・・・という心配は、
やはりその通りになってしまいました。

でも彼は犯人ではないのです。
そして犯人は、犯人の顔をしていない・・・。

でもこの物語はそうした犯人当てのドラマではなくて、
やはり「家族」の物語なのでしょう。
木野本と亜弓は正式に結婚していない。
だから、亜弓が亡くなった後は、もうこの家で木野本は赤の他人なのです。

行き場を失った木野本は、さらにまた大失敗を重ねていきますが・・・、
果たしてこんな事態を、木野本と美波、そして祖父はどう乗り越えていくのか・・・。

ぐいぐい引き込まれて行くドラマでした。

香取慎吾さん、マジでダメ男。
でも、いつか彼は気づいてやり直す。
そうした期待を持たせてくれるところもいいですよね。

 

<WOWOW視聴にて>

「凪待ち」

2019年/日本/124分

監督:白石和彌

脚本:加藤正人

出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢磨、リリー・フランキー

 

ダメ男度★★★★★

家族の成長度★★★★★

満足度★★★★.5