確かに空っぽ
* * * * * * * * * * * *
郊外の小さな出版社で働く、直実(多部未華子)。
両親の急死により、叔父夫婦の計らいでタワーマンション高層階で暮らし始めます。
忌引きの休暇を終え仕事に戻っても、何やら喪失感に囚われている直実。
高層階に住む自分がなんだか空に住んでいるように感じます。
そんな時、彼女は同じマンションに住む人気俳優・時戸森則(岩田剛典)と出会い、
親しくなっていきますが・・・。
うーん、正直言って何が言いたいのかよくわからない作品でした。
現実感から浮遊した主人公が、ぃつか「現実の生活」に帰るために、
地上に戻っていく・・・と、そういう話ならまだ納得がいくのです。
でも本作、結局彼女が何を望んでいたのか、
何を失って何を得たのかが、全然みえてきません。
両親が死んでも全然泣けなかったという直実。
そして、長く飼っていた猫の死。
きっかけは何でもいいのです。
例えば気に入ったピアスの片方が見つからないとか・・・。
そんなことでもいいから、突然直実が号泣する、
そんなシーンが入っていてほしかった。
じゃなければ、見ているものの気持ちの落としどころがないのです。
時戸にしても、何やら独自の哲学を持っている、といっては いるのですが・・・、
なんだか単にかっこつけているだけにしか見えません。
彼自身の弱みや苦しみはどこにある???
私には、不倫のあげく妊娠してしまい、別の男をだまして結婚にこぎつける直実の後輩(岸井ゆきの)の方が、
遙かに人間的魅力を感じました。
彼女はいよいよ出産と言うときに、「まだ産めない、今はまだ産めない」と泣き叫ぶのです。
こんな風な感情の発露を、一度でも直実が見せてくれれば・・・。
ラストも、納得いきません。
直実と叔父夫婦との関係。
叔父夫婦は確かに直実に踏み込みすぎのようには思います。
でも彼女はそれを嫌そうには見えなかった。
嫌なら嫌といえばいいし、関わりたくなのなら、マンションを出た方がいい。
でも直実は住み続けながら居留守を使うのです。
こんなところでも、直実がどうしたいのかさっぱり見えてこない。
多部未華子さんが好きなので見ましたが、誠に残念なストーリーでした。
<シネマフロンティアにて>
「空に住む」
2020年/日本/118分
監督:青山真治
原作:小竹正人
出演:多部未華子、岸井ゆきの、美村里江、岩田剛典、鶴見辰吾
空っぽ度★★★★☆
満足度★★☆☆☆