映画と本の『たんぽぽ館』

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パンとバスと2度目のハツコイ

2020年11月30日 | 映画(は行)

片思いは、好きな気持ちが終わらない。

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パン屋で働くふみ(深川麻衣)は、ある日、
中学時代の初恋の人・湯浅たもつ(山下健二郎)と偶然再会します。
ふみは2年付き合った相手にプロポーズされましたが、
結婚に踏ん切りがつかず、結局別れたばかり。
たもつは離婚した元妻のことを忘れられないでいます。
そんな2人が、同じく中学の同級生さとみ(伊藤沙莉)も交え、
何度か会うようになりますが・・・。

乃木坂46の元メンバー深川麻衣さんと、
三代目 J Soul Brothersの山下健二郎さんの起用ということで、
もっとお気楽なアイドル路線のラブコメかと思ったのですが、
意外とさりげなくも奥深いラブストーリーでした。

作中の人物たちは25歳くらいの設定のようでした。
だからまあ、今時の女性ならまだ結婚に焦るほどの年齢ではないですね。
ですけれど、2年付き合った相手からプロポーズされたら、
普通は嬉しくて舞い上がって、すぐOKするのではないでしょうか。
けれどふみは、相手にずっと「好き」でいてもらえる自信も、
自分が相手をずっと「好き」でいる自信もない、と思うのです。
そんな彼女の中に、もしかしたら初恋の人への思いがまだほんの少し残っていたのかも。

というのも、さとみが言うのです。
片思いだから、好きという気持ちが終わらないのだ、と。
両思いで、もしその恋がうまくいかなかったら、
その恋にはしっかりと「終わり」の時がある。
だからそれは忘れられる。

でもそれが片思いなら「好き」の気持ちに終わりがないので、
いつまでも忘れられない。

なるほど、なかなか納得のいく考え。

再開したたもつをやはり好きだとふみは思うのですが、
でもたもつはやはり別れた妻のことを今も思っているのです。
それは実にはっきりしている。
でも作中のふみは、自分の片思いをそれほど悲しいこととは思わないのです。
もともと、1人でいることが嫌いではない。
たとえ片思いでも、いつまでもそんな思いを胸の内で転がしながら
1人生きることも悪くはないかな?と思っている。

作中では、ふみには友人もいるし、妹と同居を始めたところでもあり、
さほど悲惨な「孤独」というわけではなりませんが。

仕事があって、生活に困らないくらいの収入もあって、
パン屋は朝が早いけれども、一定の時間には帰ることができる。
そんなおだやかな日々の暮らしが、結構結構気に入っているふみ。

良いですね。
大きな夢などなくても、等身大の自分が好きになれたら、それで十分。
こんなさりげない日常生活が、妙に胸にしみる感じがする、この頃でもあります。

<WOWOW視聴にて>

「パンとバスと2度目のハツコイ」

2017年/日本/111分

監督・脚本:今泉力哉

出演:深川麻衣、山下健二郎、伊藤沙莉、志田彩良

日常生活度★★★★☆

満足度★★★★☆