問題だらけの女子たちだけど
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経営難で閉校が決まっていた萌木女学園。
とにかく全員卒業させようと、課題のハードルは限界まで下げられていたのに、
それすらクリアできなかった私達。
もう詰んだ。人生終わったと諦めかけた矢先、
温情で半年の猶予を与えられ、敷地の片隅で補習を受けることに―。
でも、集まった生徒達は、さすがの強者「ワケあり」揃い。
こんな状態で、本当にみんな卒業できるの?
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経営難で閉校が決まっていた萌黄女学園。
そこをどうしても単位不足で卒業できない者が出てしまったのです。
しかしここの理事長の温情で、半年間彼女らに補講を受けさせるという取り組みが始まりました。
全員寮生活。
敷地内以外は外出禁止、面会も禁止というほとんど監禁状態。
彼女らは本当に卒業できるのか・・・?
・・・と、このように書くといかにも学業を怠けていただらしない女性たちばかり、のように思えてしまいますね。
ところが、彼女たちがまともに学校に通い学ぶことができなかったことには、
それぞれのどうにもならない事情というものがあるのです。
例えば、どうしても朝起きられない朝子。
そして、ところ構わず意識を失い倒れてしまう夕美。
同室となった朝夕コンビの眠り姫は決して「怠け者」ではなく、これはそういう病なのでした。
2人は互いを認め合い、助け合いながら、前へ進む力をつけていきます。
他にも、トランスジェンダー、拒食症、過食による肥満、などなど・・・。
そしてどこからどう見てもしっかりきちんとしている者もいて、この人はなぜここにいるの・・・?
という謎もあるのです。
一人一人の事情が、まるで現代の縮図。
言われてみれば、ここまで極端ではないにせよ、
私たちもいずれかのトラブルのもとに心当たりがあるかもしれません。
ここで、少しずつ生きる力をつけていく彼女らを見るのが何よりも嬉しい。
そして本作ステキなのは、彼女らのトラブルの事情を理解し、
一人一人に見合った解決策を探りつつ彼女らを卒業させようとする、この理事長の存在。
理事長といえばかっこいいのですが、見た目は単に人の良さそうなハゲたオジサン。
それが、理事長兼学長兼寮長件臨時講師・・・。
つまり彼一人でこの企画は成り立っているのです。
その上寮母は理事長の奥様だし、寮内の様々なことのお手伝いをしているのがその娘さん・・・。
この「学びの場」かつ「癒やしの場」は、角田理事長の家族経営委で成り立っていたというわけ。
なんか、いいですよね~。
こういうほとんど損得抜きの行為を家族でできるなんて、すごい!!
なんだか勇気付けられて、そして心が温かくなるステキな作品です。
「カーテンコール!」加納朋子 新潮文庫
満足度★★★★★