初々しい、少女バルサの日々
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王の陰謀に巻き込まれ父を殺された少女バルサ。
親友の娘である彼女を託され、用心棒に身をやつした男ジグロ。
故郷を捨て追っ手から逃れ、流れ行くふたりは、
定まった日常の中では生きられぬ様々な境遇の人々と出会う。
幼いタンダとの明るい日々、賭事師の老女との出会い、
そして、初めて己の命を短槍に託す死闘の一瞬
―孤独と哀切と温もりに彩られた、バルサ十代の日々を描く短編集。
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守り人シリーズの番外編、短編集です。
本編を読んだ後では、なんだかゆったりと安心して読むことができます。
本巻には4篇が収められていますが、最後のはまあ、おまけみたいなもの。
いずれにしても、バルサ10代、
まだジグロと共に修行しつつ各地を流れ歩いていた頃の話となります。
あとがきで、著者・上橋氏が元々番外編など書く気はなかったのに、
あるとき突然、本巻中の「ラフラ」のストーリーが浮かんできた、とおっしゃっています。
ですが、残念ながらわたしにはこの話がいちばんピンと来なかったかな・・・?
サイコロを使う「ラフラ」というゲームが想像上のものということもあってか、
いまいち入り込めない。
ただ、ここに登場する賭事師である老女の心境については、しみじみと味わいました。
「流れ行く者」では、ジグロとバルサが用心棒の仕事をしています。
バルサはまだ13歳で、修行の途上。
そういえば、ジグロについてはこれまで話にだけは出てきましたが、
実際に登場したことはなかったのですよね。
ストーリー自体は、彼の没後から始まっているので。
(若干、生身ではないジグロの登場シーンはあったのですが。)
だから、ここで生身のジグロが登場して、ちゃんとバルサと会話をしているのを見るのは、
この上ない喜びでした。
そして、本編中では始めから自立した強い女性であったバルサの、
未完成なところ、ジグロに守られているところを垣間見るのも楽しいのです。
ジグロとバルサはときおり呪術師トロガイの家を訪ねてしばらく滞在していく。
それを心待ちにしていたのがタンダ。
ラストの小篇は、ホント、ほっこり来ます。
こんな風に子どもの頃から親しんで信頼で結ばれている2人の絆。
まさしく、ファンにはとーっても嬉しい一冊なのでした。
私、ふと思いましたが、グインサーガの続きは上橋菜穂子さんが描くべきだったのでは・・・?と。
<図書館蔵書にて>
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子 軽装版偕成社ポッシュ
満足度★★★★.5