映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

せかいのおきく

2024年05月29日 | 映画(さ行)

江戸のSDGs

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江戸時代末期。

武家育ちのおきく(黒木華)は、寺子屋で子供たちに読み書きを教えながら、
父(佐藤浩市)と2人で貧乏長屋に暮らしています。

ある雨の日、厠のひさしの下で雨宿りをすると、
紙くず拾いの中次(寛一郎)と、下肥買いの矢亮(池松壮亮)に出会います。
それから3人は少しずつ心を通わせるように。

ところがその後、お菊はある事件に巻き込まれ、
父を亡くし、自身は喉を切られて声を失ってしまいます・・・。

 

ほとんどがモノクロ、ごくわずか画面に色が差す部分もあります。

下肥買いという矢亮の商売。
作中では「汚わい屋」と呼ばれていましたが、
つまり人家の厠の糞尿をくみ取って買い上げ、
運搬し、農家へ肥料として売るのです。

糞尿を汲んでお金を払うと言うのにちょっと驚きました。
でも、このシステムのおかげで江戸の町はとても清潔だったと言いますね。
パリの町などは路地が糞尿にまみれていたといいますから・・・。
紙くず拾いの中次も、結局下肥買いのほうが儲かるので、
矢亮と組んで仕事をするようになります。

ともあれ、何もムダにしない江戸のSDGsをしっかり堪能させていただきました。

・・・と言うわけで、本作その糞尿のシーンが実に多い!! 
だから、これは白黒で良かった~と思う次第。
カラーはリアルすぎてちょっと恐い。
そして映像に匂いがなくて良かったなあ・・・。

おきくは、感情豊かで思い切りの良い性格。
ほとんど強情と言ってもいいくらい。
一応武家の娘ですが、すでに本人にはそんな自覚もなく、
汚わい屋の中次になんの差別も持たずに心惹かれていきます。
ところが、声を失ってしまったおきく。
おきくの思いを伝えるにはジェスチャーしかありません。
中次は読み書きができないのです・・・。
しかし2人にはそんなことはなんの障害にもなっていないというのも、いっそ心地よいですね。

佐藤浩市さんと寛一郎さんの親子共演も見所です。

 

<WOWOW視聴にて>

「せかいのおきく」

2023年/日本/89分

監督・脚本:阪本順治

出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、真木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司

 

SDGs度★★★★☆

ばっちい度★★★★★

満足度★★★★☆



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