映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「六つの峠を越えて髭をなびかせる者」西條奈加

2023年06月08日 | 本(その他)

蝦夷地と江戸

 

 

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直木賞作家の新たな到達点!
江戸時代に九度蝦夷地に渡った実在の冒険家・最上徳内を描いた、壮大な歴史小説。

本当のアイヌの姿を、世に知らしめたい
―― 時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。
幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、
蝦夷地開発が計画されていた。
出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、
師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊に随行する。
そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、
和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。
イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、
いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく……。
松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威、様々な困難にぶつかりながら、
それでも北の大地へと向かった男を描いた著者渾身の長編小説!

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本作は、江戸中期に九度も蝦夷地に渡り探索を行ったという
実在の最上徳内という人物を描いた物語です。
北海道出身の西條奈加さんならではの題材ではありますが、
実のところ北海道生まれ・育ちの私もこの人物については全く知りませんでした。

Wikipediaによる、最上徳内の説明は次のようになっています。

最上徳内

実家は貧しい農家だったが、長男であるにもかかわらず
家業を弟たちに任せ学問を志し、
奉公の身の上になり奉公先で学問を積んだ後、
師の代理として下人扱いで幕府の蝦夷地(北海道)調査に随行した。
後に商家の婿となり、さらに幕府政争と蝦夷地情勢の不安定から、
一旦は罪人として入牢しながらも、
その抜群の体験と能力によって、
のちに蝦夷地の専門家として取り立てられ幕臣となった。
蝦夷地に渡ること9回で、当時随一の「蝦夷通」として知られ、
身分差別に厳しい江戸時代には異例ともいえる立身出世を果たした人物である。
シーボルトが最も信頼を寄せていた日本人ともいわれ、
その知識は世界的なものにまでなったといわれる。

 

ということで、本作を読むとしっかり忠実に歴史をなぞりながら
物語が進んでいることが分かります。

 

特に、幕府の命で行われた1回目と2回目の蝦夷地調査。
徳内のみならずその一行は、皆忠実に熱意を持って職務に当たりました。
蝦夷地のことは松前藩が仕切ってはいるものの、ろくな地図もなくわからないことばかり。
いま、ロシアが南下する機会をうかがっているのでは?
ということの調査でもありました。

しかし、任務を終えて、江戸に帰ってみれば、とんでもない仕打ちが待っていた・・・!

まさにドラマチックではあります。
権力者の思惑一つに人々は振り回され運命を狂わされてしまう。
そういう時代の話でした。

そしてまた、当時のアイヌの人々が松前藩から受けた仕打ちがひどい。
まあ、そのことは分かってはいるつもりでしたが。
徳内は、アイヌの人々と親しみ、言葉を学び、その文化の素晴らしさにみせられたのです。
だからこそ、生涯9度も蝦夷地を訪れたわけで。

江戸から蝦夷地まではさぞかし遠かったでしょうに・・・、
そしてまたそれはほとんど命がけでもあったでしょうに・・・。

いつの時代にも、スゴイ人はいるものですね。

 

<図書館蔵書にて>

「六つの峠を越えて髭をなびかせる者」西條奈加 PHP研究所

満足度★★★★☆

 



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