映画と本の『たんぽぽ館』

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ファースト・マン

2019年02月18日 | 映画(は行)

50年前の危険なミッション

* * * * * * * * * *

人類初、月面に足跡を残したニール・アームストロングの実話です。



1969年米国アポロ11号により、人類初の月面着陸が成功。
ちょうど50年になるのですね。
その時私は中学生・・・。もちろんその時、夜中の生中継も見ましたよ!
今の若い方は、人が月へ行ったと言われてもピンとこないかもしれませんが・・・。
その時、科学技術はここまで進んだのだと感動したわけですが、
本作を見ると、まだまだ未開発。
ほとんど賭けのようなものだったのかもと、驚かされます。
コンピューターはやっと開発が始まったばかり。
多分その頃のマシンよりも、一人一人のポケットに入っている今のスマホの方が機能は上でありましょう。
50年というのはそういう歳月の流れでもあるわけです。

さて、ニール・アームストロング。
宇宙飛行のためのパイロットとして数々の危険なテスト飛行をこなし、
ついには初の月面着陸の任務につく。
それまでには失敗もあり、多くのパイロットの犠牲も見ている。
だからその危険性を誰よりもよくわかっているのですが、
彼はその内心の不安を押し隠し、ほとんど淡々としています。
元来人前で喜怒哀楽をオーバーに表現するタイプではないわけです。
けれど、彼の幼い娘が病死したシーンで、その熱い胸中を垣間見せる。
わりと日本人的かもしれません。



私はラストシーンで夫婦のリアルな関係性を強く感じました。
ニールは地球に戻ってからもしばらくは検疫のために隔離され、家に帰ることができなかったのです。
そのため、帰還後妻と会うのも、分厚いガラス越し。
だからまあ、抱き合うことができないのは当然ですが、
この二人はガラスがなくても抱き合わなかったのではないかと思う。
始めは硬い表情の二人。
おずおずとニールが口元に当てた指を差し出して・・・。
不安に押しつぶされそうだからなおさら不機嫌になってしまっていた妻。
そういう二人の有り様が凄くリアル。

リアルと言えば、まあこちらのほうが本筋なのでしょうけれど、
宇宙船内部の様子もすごいですね。
宇宙船というよりもほとんど鉄の棺桶のようにも思える狭苦しさで、
ドアを締めてロックされるシーンには恐怖すら感じます。
そして打ち上げ時の振動とか音とか、今にも空中分解してしまいそうで、怖い怖い・・・。
アポロ11号が無事任務を終えて帰還したことを知っていてさえも、
乗員の不安と緊張感をしっかり共有したと思います。
砂漠のような月面の光景、遠くに浮かぶ地球。
その絶対的な孤独をも共感できてしまう、力作。

それにしても、宇宙開発でソ連に大きく立ち遅れて焦りまくっているアメリカ。
そしてまた国内でも、莫大な予算をかけて人を月へ送ることへの社会の反発など、
かなり切羽詰まった当時の状況ですよね。
そんな中では、人が月へ行ったというのはインチキで、
実は砂漠で撮影していた、ということにも信憑性があるような気がしてしまいますね・・・。



<シネマフロンティアにて>
「ファースト・マン」
2018年/アメリカ/141分
監督:デイミアン・チャゼル
原作:ジェームズ・R・ハンセン
出演:ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール

リアル度★★★★★
時代再現度★★★★☆
満足度★★★★★



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