映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

昼顔

2020年01月13日 | 映画(は行)

不倫ドラマの名作

話題を呼んだTVドラマ「昼顔 平日午後3時の恋人たち」の劇場版。
といっても、私は見ていませんでしたが、
そのドラマ以前から斎藤工さんのファンではありましたので、
やはりみてみましょうか、と。

互いに結婚相手がいながら不倫関係に陥ってしまった主婦・沙和(上戸彩)と
高校教師・北野(斎藤工)。
北野の妻によって二人は引き裂かれ、別れます。
ここまでがテレビドラマのストーリー。
本作はその3年後から始まります。



夫と離婚した沙和は、何もかもを失い、海辺の町で一人で暮らしています。
北野とはもう決して会わない、連絡先も交わさない、話さない・・・と誓約書を書いていて、
その後の北野のことも何も知りません。
しかしあるとき沙和は、町の講演会講師に北野の名前を見つけます。
北野は大学の非常勤講師として、この町に来るのです。
講演会当日、迷いながらもやはり講演にやってきてしまう沙和。
そして、会場に沙和の顔を見つけた北野は・・・。

再び出会ってしまった二人の、切ないストーリー。
私はTVドラマを見ていなかったので、この北野という男の印象が少し意外でした。
しかし、なるほど・・・とも思ったのです。
彼は蛍の生態を研究している学者肌、というか少しどんくさいくらいの、
真面目で誠実なヤツなのですね。
不倫をしそうな感じではない。
ただ、その優しさ誠実さゆえに、妻をも恋人をも傷つけたくないと思ってしまい、
そこでどうにもならない泥沼に沈んでいく、というわけなのです。


このたびも、実は出会うべきではなかった。
けれども出会ってしまうわけですねえ・・・。
ドラマですから(^_^;
そしてまた、これがばれてしまうんだなあ・・・、北野の妻に。



それで修羅場となってしまうのはもう、お約束。
しかし、この妻の気持ちが私にはよくわかりません。
つまりはすでに夫の気持ちはもう自分から離れてしまっている
というのは多分、もっと前からわかっていたはず。
夫を脅すようにして無理矢理恋人と引き裂いたり、自分の方を向かせたりして、
それはむなしくないのだろうか・・・? 
もし私なら、悔しいけれどきっぱり別れますね。
慰謝料たっぷりとって。
そうでなければ自分のプライドが許さないし、
この先到底まともな夫婦生活を送れるとも思えない。
私が淡泊過ぎるのかなあ・・・?
でも、ドラマなどでは大抵、妻は妻の座にしがみつきますよね。
やはり私の方が変わっているのかしらん???
でも本作見ていると、やっぱりこの妻のことは好きになれず、
「ヒトゴロシ!」と叫びたくなってしまいます。

だがしかし、ラストに驚きの事実が・・・。
私は最後に沙和が百葉箱の中から指輪を見つけて、泣き崩れる・・・
というようなラストを予想したのですが、そうではなかった!! 
やられました。

とりあえずテレビドラマの方を見ていなくても、大丈夫でした。

 

 

<WOWOW視聴にて>
「昼顔」
2017年/日本/125分
監督:西谷弘
出演:上戸彩、斎藤工、伊藤歩、平山浩行

不倫の修羅場度★★★★★
悲劇度★★★★★
満足度★★★★☆

 


パラサイト 半地下の家族

2020年01月12日 | 映画(は行)

半地下ならまだ良かった・・・

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家族全員失業中のキム一家は、ジメジメして虫が出る環境の悪い半地下の家に住んでいます。
あるとき長男が家庭教師としてIT企業CEOパク氏の豪邸へ通うことになります。
そして家族であることを隠して、次々に妹をアート指導の教師に、父を運転手に、
そして母を家政婦としてこの家に引き入れてしまいます。
しかし主人一家が留守の大雨の夜、ある人物が訪ねてきて・・・。

パラサイトは寄生虫のことですね。
この一家が大富豪の家に寄生してうまい汁を吸う、と。
けれど、確かに身分詐称、経歴詐称ではあるけれど、
キム一家は意外と優秀でしっかり仕事をこなします。
多少給料が高すぎ(?)かもしれないけれど、
それは支払う側が納得して決めたことだし、
つまりWin-Winの関係だったのですよ、ここまでは。

ところが彼らは「半地下」よりももっと惨めな「地下」の生活を見てしまうのです。
それが故に、キム一家の人々は富めるものと貧しい自分たちとの格差を、
それまで以上に感じるようになってしまう・・・。



どうにもならない格差。
今はその格差も埋めることは絶望的に難しくなってきているように思います。
お金持ちのパク氏の一家は基本いい人たちなんです。

優しく素直で純粋。
特にここの母親が「天然」といっていいくらいに、人を信じて疑わない。
けれど、お母さんは言いますね。
「私だってお金をたくさん持っていれば、誰にだって優しくなれるよ」と。
確かに。
その優しさは「ゆとり」のなせる技か・・・。

でもそんな優しさも、ふとしたところから本性が露呈します。
パク氏が「運転手の匂いが我慢ならない」と奥さんに言っているのを
密かに本人が聞いてしまうのです。
この言葉がお父さんの心にグサリと刺さっていて、
そして終盤の大惨事へとつながっていきます。
いつから経済の格差=人格の格差みたいな風潮になってしまったのでしょう。
コメディタッチでありながら、私たちの心にもグサリと突き刺さります。

 

そして本作のラスト。
一瞬希望を見せておいて、やはりそれは「まぼろし」に過ぎないという、
恐ろしい現実を突きつけられたような気がします。

<シネマフロンティアにて>
「パラサイト 半地下の家族」
2019年/韓国/132分
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジュン、チェ・ウシク

格差度★★★★★
大惨事度★★★★☆
満足度★★★★★


「栗本薫と中島梓  世界最長の物語を書いた人」里中高志

2020年01月11日 | 本(解説)

湧き上がる創作意欲と、孤高の魂

 

 

* * * * * * * * * * * *


栗本薫と中島梓、二つの名前を持ち、
作家・評論家・演出家・音楽家など、
才能を自在に操り多くの人たちに感動を与える稀有な存在でありながら、
ついに自身の心理的葛藤による苦悩から逃れることはできなかった人。
その生涯を関係者への取材と著作から検証する。

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栗本薫さんが2009年5月、56歳で亡くなって、もう10年にもなるのですね。
考えてみると私、彼女のファンのつもりでいましたが、
「グイン・サーガ」の他は伊集院大介のシリーズをほんの少し読んだだけ。
中島梓名義のものはほとんど読んでもおらず、
北海道在住では演劇もライブも行ったことがない、
全くファンとは言えない状況なのでした。

 

そこで、というわけでもないのですが、
没後10年に合わせて出版されたであろうこの本を手に取ってみました。
栗本薫さんの生い立ちや作家活動、人生についても広く深く考察された意義深い本です。
本作を読むと彼女が作家・評論家・演出家・音楽家として
いかに卓越した才能をもっていたかを改めて知ることになります。
しかしまた、その実、彼女は常に自分をこの世の異邦人のように感じ、
孤独の縁に立っていたということもわかります。
根源的には障害者である弟の存在、そのことに発する母親との関係性・・・、
私、今までそういうことは何も知らないのでした。
彼女の編集者であった人物と不倫の果ての結婚ということも・・・。


けれどもそんなことを知っても知らなくても、グイン・サーガの面白さになんの変わりもありません。
ただひとつ、この地上にただ一人豹頭の存在、自らの出自もわからず苦悩する孤独の王者グインと
彼女自身に重なり合うところがある、そのことがわかったのは良かったと思います。
そしてまた、彼女は多くの「やおい」というか「BL」ものを書いているのですが、私は読んでいません。
読み始めたらはまるのかもしれませんけれど。
でも、これらは「少女にとっての性解放」なのだという下りで、
なんとなく腑に落ちた気がしました。
しかし今の「おっさんずラブ」や「きのう何食べた」を見る限りでは、
同性愛のそうした役割はもはや終わったような気もします。

 

ものすごく早く多く原稿をこなし、その命の限りまで原稿を書き続けたという、
栗本薫さんの偉業に改めて感謝です。
私に、ノスフェラスやパロ、ケイロンなどへの旅をたっぷり届けてくれた栗本薫さんに。

いま改めて栗本薫・中島梓を知るために、とてもいい本だと思います。

 

さて、ところで未完の「グイン・サーガ」は、栗本薫氏に心酔する幾人かによって
今も書き継がれています。
私もしばらくは読んでいたのですが、数年前から一切読むのをやめてしまいました。
ストーリーは変幻自在、確かに面白くできてはいるのです。
でも、例えば一冊読んで数ヶ月後にその続きが出る。
するとその頃には前巻の内容をすっかり忘れてしまっているのです。
栗本薫さんの時はそんなことはなかった。
そのストーリーはくっきりと胸に刻み込まれています。
前のストーリーを忘れているなどと言うことはなかった。


私、こう言ってはなんですが栗本さんの文章は少し「くどい」と思っていたのです。
一つのシーンに相当多くのページ数が費やされる。
もうたくさん、と思うくらいに。
しかし今にして思えば、このくどさ故に、
ストーリーがこちらの身体隅々にまで染み入っていたようです。
栗本氏自身が、グイン・サーガは誰かが書き継いでくれれば良い、
とおっしゃっていたようなのですが、いやいや、
たとえひみつのストーリーが誰かに伝えられていたとしても、
それを表現できるのは唯一栗本薫氏だけなのです。
だから私は、グイン・サーガは栗本薫さんの未完のストーリーだけを宝物として胸に抱くことにします。

当ブログでは「グイン・サーガ」第113巻から始まっているのですが・・・、
ぼちぼちと第1巻から紹介していこうかしらなどと、無謀なことを考え始めました。
もう一度読み直して見たくなってしまいまして・・・。
合間合間に、本当にゆっくりと・・・。

(図書館蔵書にて)

「栗本薫と中島梓  世界最長の物語を書いた人」里中高志 早川書房
満足度★★★★★

 


運命の女

2020年01月10日 | 映画(あ行)

平和な生活を狂わせる「運命の男」

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専業主婦コニー(ダイアン・レイン)は、
会社を経営する夫エドワード(リチャード・ギア)と、9歳の息子と暮らしています。
暮らし向きは良くて、充足した日々。
ある日、フランスの青年ポール(オリビエ・マルティネス)と出会い、
情事を重ねるようになります。
エドワードは妻の様子がおかしいことに気づき、
探偵を雇い愛人・ポールの存在を突き止めますが・・・。

 

単なるよろめきドラマかと思っていたら、なんとサスペンスに発展するのでした。
しかし本作中のダイアン・レインがなんとも妖艶な熟女・・・美しい。
狂おしいほどに、愛人ポールとの愛欲に埋もれていきます。
そして、その体のうずきを隠せない、忘れられない・・・。
まるで麻薬のように彼女をむしばんでいく・・・。
不倫故に、燃えるということもありそうですが・・・、
しかし彼女はまた妻・母としての立場を十分にわきまえてもいる。
この生活をやはり捨てることなどできないということも・・・。
女としての狂おしいまでの思いが、大胆に描かれていてなかなかステキでした。

しかしやっかい(?)なことに、夫の妻への愛情は思いのほか強かったわけで・・・。
いえ、こういう場合、妻への愛情の度合いというよりも、
妻を寝取られたことの悔しさなのかもしれませんけれど・・・。

 

ところで本作の原題は「Unfaithful」つまり、不貞なとか、不実なという意味。
まあ、あまりにもストレートです。
でも「運命の女」というのはちょっとちがうような気がします。
この夫婦の生活を決定的に壊してしまうという点で
「運命の男」とすべきなのでは? 
まあしかし、これではロマンのかけらも何もないか・・・。

 

 

<WOWOW視聴にて>
2002年/アメリカ/124分
監督:エイドリアン・ライン
出演:リチャード・ギア、ダイアン・レイン、オリビエ・マルティネス

愛欲度★★★★.5
サスペンス度★★★☆☆
満足度★★★★☆

 


屍人荘の殺人

2020年01月09日 | 映画(さ行)

謎に満ちた山荘で・・・

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原作は読んでいたので、本作は劇場で見ないで終わりそう・・・と思っていたのですが、
結局見てしまいました。
まあつまり、神木隆之介さんと中村倫也さんなら、
多少の不出来でも許せてしまいそうな気がしたので・・・。

ミステリ小説オタクの大学生・葉村(神木隆之介)は、
先輩でありミステリ愛好会会長の明智(中村倫也)に振り回されながら、
ホームズとワトソン気取りで学内の些細な事件に首を突っ込んでいました。
そんなところに出会ったのが同大学の剣崎比留子(浜辺美波)。
実は彼女こそ、警察の実際の捜査に協力したこともあるという本物の名探偵なのですが、
音楽フェス研究会の夏合宿に参加しようと、二人を誘うのです。
というのも、「何かがおこる」という犯行予告が届いていたため。
そしてその当日、山奥のペンション・紫湛荘で研究会メンバーと合流した3人。

折しもその近所では大がかりなロック・フェスティバルが開かれており・・・、
そこでこの不可解な出来事の幕が開けるのです。



見ればすぐにわかる本作の「前提」となる仕掛けなのですが、
相変わらずここはネタばらしタブーのようなので、あえて触れません。
ペンションは紫湛荘なのに、なぜ作品名が「屍人荘」なのか・・・、
というあたりで、お察しください。



しかしここの部分は、なぜこのペンションが「閉ざされた」場所となってしまったか、
という状況作りであって、その先のミステリはしっかりとした本格ミステリです。
いや、それにしても、このような状況でなければ
あのエレベーターの殺人トリックも成り立たないワケで、
さすが各賞総なめの原作なのであります。

神木隆之介さん、中村倫也さんのコンビはいい感じ。
しかし、原作通り明智は割と早くに舞台から姿を消してしまうのがいかにも残念です。
(しかし本作は最後にも出てきた!!)

そして、比留子さんがめちゃめちゃかわいい♡ 
やたら葉村が彼女に対して「かわいい!」を連発しますが、
本当にかわいいのだから仕方ない。
その上、ホームズ&ワトソン気取りの二人の推理など
ケチョンケチョンにしてしまうのだから面白い。
是非とも続編を作ってほしくなってしまいました。
不出来の心配など無用でした!

<ユナイテッドシネマ札幌にて>
「屍人荘の殺人」
2019年/日本/120分
監督:木村ひさし
原作:今村昌弘
出演:神木隆之介、中村倫也、浜辺美波、矢本雄馬、佐久間由衣、古川雄輝、柄本時生
原作再現度★★★★☆
コミカル度★★★★☆
満足度★★★★☆


「レベレーション 5」山岸凉子

2020年01月07日 | コミックス

捕縛されるジャンヌ

 

 

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フランスの王位継承をめぐるイギリスとの百年戦争のただなか。
「フランスへ行け。王を助けよ」との啓示をうけたジャネットことジャンヌ・ダルクは連戦連勝。
王太子の戴冠式をランスで行う。
しかしシャルル7世の命に反して行ったパリ奪還攻撃は失敗。
山賊ペリネ・グレサールにも大敗を喫し、戦いをともにしてきたベルトランまで失ってしまう。
連戦連勝のジャンヌに影が差す中、オルレアンの領主から贈られた深紅のマントを羽織り、
ジャンヌは戦いの道を進む決意を新たにする。

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山岸凉子さんによるジャンヌ・ダルクの物語。
しかしだんだん読むのがつらくなってきます。
当初の、神の啓示を受けてひたすら前進あるのみ、希望に燃えたジャンヌは見ていても楽しかった。
けれども、いつまでも幸運は重なってくれないし、
周囲の思惑は「正義」ではなくて、いかに動けば自分の有利となるか、そんなことばかり。
男社会の中の女性の立場が如実に表れますな。
ただしこの場合の「正義」というのも、完全に彼女から見た一方的な正義のわけですが。
このあたりで彼女はもう引き返せば良かった・・・。
平和な故郷の村へ・・・。


しかし、女の身でありながら常に先頭に立って戦うジャンヌは、
ついにコンピエーニュの戦いにおいて、敵軍に捕縛されてしまいます。
この当時のフランスは、かなり複雑にイギリスと入り乱れた構造になっていて、
フランス人だからといって、必ずしもフランス王を抱く完全なフランス独立を目指しているわけではない、
というあたり、これがジャンヌの立場の微妙さを生んでいるのですね。

 

そしてやがてジャンヌは異端審問にかけられることになりますが、
そこから先は続く・・・ということで。
まあ、続きを待たずとも結果は明らか。
歴史的事実がありますし、そもそも本作の冒頭は
いよいよ処刑される寸前のジャンヌの場面から始まるのですから。
となれば気になるのは、この最期の時にジャンヌが何を思うか、なのです。
これまで神を疑うことなどみじんもなかった彼女が、最期にどう思うのか。
次号を待ちましょう。


「レベレーション5」山岸凉子 講談社モーニングKC
満足度★★★.5

 


フォルトゥナの瞳

2020年01月06日 | 映画(は行)

運命は変えられるか?

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幼少期、飛行機事故で両親を失い、孤独に生きてきた慎一郎(神木隆之介)。
彼は死を目前にした人間が透けて見える能力=フォルトゥナの瞳を持っています。
そんな彼が、桐生葵(有村架純)という女性と出会い、
互いに惹かれ合い、幸せな日々が訪れるのですが、
ある日、慎一郎は葵の体が透け始めているのに気づきます。

運命は変えられるのか・・・? 
本作の大きな命題です。
慎一郎はある相手で試みてみる。
慎一郎が関わって、その人の行動を変えれば、その人物は助かるのです。
しかし、実はその行為は自分自身の命を削ることだということもわかる。
不用意に死ぬべき人の運命を変えると、自分が死ぬことになってしまうということなのです。
しかし、葵の命が脅かされている時、彼はわかったように思うのです。
自分が子どもの頃飛行機事故で助かった理由。
そしてフォルトゥナの瞳をもつ理由。

悲しい結末に、涙、涙・・・。

本作のラスト付近で葵が自分自身の秘密を語るのですが、
どうもそこは必要ないように感じます。
なくても全然問題なかった。
逆にそうしたことによって、私にはこのストーリーの大きな矛盾が見えてしまうのですが、
いかがでしょう・・・(?)

志尊淳さんが始め、タチの悪い男として登場します。
通常ほんわかと優しい感じの役が多いので、ちょっと意外でしたが、
こんなきれいな顔で悪質なヤツというのは余計凄みが増して、怖いです。
・・・けれどさすが志尊淳さんに振り当てられた役だけあって、
次第に慎一郎に親しみを覚えるようになっていきますので、ご安心を。

 

 

<WOWOW視聴にて>
「フォルトゥナの瞳」
2019年/日本/110分
監督:三木孝浩
原作:百田尚樹
出演:神木隆之介、有村架純、志尊淳、DAIGO、時任三郎
自己犠牲度★★★★★
満足度★★★.5

 


アナと雪の女王2

2020年01月05日 | 映画(あ行)

美しい映像にうっとり

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お正月の劇場映画鑑賞は「アナと雪の女王2」と「屍人荘の殺人」となりました。
どちらも、あとでネットかWOWOWで見ればいいや、と思っていたので、
パスするつもりだったため、ずいぶん遅い視聴だったのですが。
新年第一週は、新規上映がほとんどなくて、しかもお子様路線、ドル箱路線ばかり・・・。
と言うことでほとんど選択の余地もなくなってしまっていたわけですが、
まあ、こういうお楽しみもたまにはいいか、ということで。

ところで、昨年閉館したディノスシネマズ札幌が、
今年6月には場所を変えて復活することが決まったようで、
これはうれしい限りです。
やはり現状ではあまりにも選択の幅が狭い・・・。
楽しみです!!

さて、前置きばかり長くなってしまいました。
今さらですが、本作は大ヒットしたディズニーアニメ「アナと雪の女王」の続編。
あらら、前作はもう5年も前だったのですね。
雪と氷に閉ざされたアレンデール王国に陽光を取り戻し、
深い絆で結ばれた姉妹、エルサとアナ。
幸福に暮らしていたある日、エルサは彼女にしか聞こえない不思議な歌声を聞きます。
この声に導かれ、姉妹は未知の世界へ足を踏み出します。

続編と言えば、多くはとってつけたような物語が多いのですが、
本作はエルサが魔法の力を持った理由や二人の両親のことが描かれていて、
まるで始めから図ったかのようなストーリーとなっており、
これなら続編としてもとても納得がいきます。
両親の出会い。そして大自然。時の流れ。
人は大いなる自然から離れては生きられないのですね。
クリストフのアナへの求婚もまたサブストーリー。
アナの気持ちがなかなかつかみきれなく、悶々とするクリストフがまたいいのだワ。


それにしてもエルサの造形が、美人ですよね・・・。
なんて上品なプラチナブロンドの髪。
高貴で優雅で、そして強い! 
彼女の歌うInto The Unknownのなんと素晴らしいこと・・・。
私はエンディングで歌われるこの曲よりも、
やはり松たか子さんの作中の歌の方が好きです・・・。
映像も美しくて泣きそうでした。
うん、これはやはり家のテレビではなく、劇場の大画面でみて良かった、と思った次第。

雪だるまのオラフのおとぼけシーンでは場内の小さい子どもたちがクスクス笑い出し、
その笑い声をかわい~く思い、そして何やら幸せな気持ちになりました。
私の通う普段の劇場では滅多に聞かない声。
やはり子どもは世界の宝でございます。

<ユナイテッドシネマ札幌にて>
「アナと雪の女王2」
2019年/アメリカ/103分
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
映像美★★★★★
満足度★★★★.5

 


「信長協奏曲 19」 石井あゆみ

2020年01月04日 | コミックス

本能寺へのカウントダウン

 

 

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帰蝶は、信長と光秀の顔が同じことを知っていた。
その事実に気づいたサブローとおゆき。
だが家の中に大きな変化はなく、
一方で、時代の中で織田勢は
ますます存在感を増していく・・・。

いよいよ武田攻めの時が迫る…!

羽柴勢の怪しげなうごめきは絶えず、
いよいよ、「本能寺」のその時も迫っていて…

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本作は天正10年(1582年)1月から始まります。
本能寺の変が同年6月なので、いよいよそのときが間近に迫っています。


3月には武田軍を壊滅させ、いよいよ天下統一までもう一息というところ。
そんな中、サブロー信長が明智と語り合うシーン。
相変わらずサブローは「本能寺の変」という歴史上の出来事の名前だけは覚えていて、
しかしその謀反を起こすのは「あいだ」さんだと思い込んでいます。
しかしさすがに身の回りに「あいだ」さんはいない。
もしかして「あ」のつく名前?というところで、
明智は自分も「あ」がつくと言い出すのです。
いやいや、そんなわけはない、とみじんの疑いも挟まないサブロー。


そしてまたあるときには、サブローは
「もう教科書とはちがう歴史を、作っちゃってるのかもしれない」とも言います。
いや、そうだといいのだけれど、実のところサブローがこの時代に来たからこそ、
私たちが教科書で知る「歴史」が作られているわけです。
となれば、やはり本能寺の変は避けられないのか? 
ここまで来て未だにそのなりゆきが想像もつかない・・・、
石井あゆみさん、恐るべし。
ただ、気になるのは秀吉の動向ですね。
始めからチャンスをうかがいながらここまでその本性を隠してきた秀吉。
そして本巻ではその弟、秀長がなおも怪しい動きを見せる。
本能寺の変にはこの二人の思惑が絶対に絡んでくるのだろうなあ・・・。

緊迫した状況の中、少しほっとさせられるのはおゆきちゃんととき丸。
こんなにも思いを寄せて協力してくるとき丸の気持ちになぜ気づかない、おゆきちゃん。
でもこの超天然のニブさがいいんだなあ・・・。
早く先が知りたい、けれどもそれを知るのが怖い気もします。


「信長協奏曲 19」石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

 


フロントランナー

2020年01月03日 | 映画(は行)

浮気は男の甲斐性???

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1988年、アメリカ大統領選挙時の実話に基づいています。
ゲイリー・ハート上院議員(ヒュー・ジャックマン)は、
史上最年少、46歳で民主党の大統領候補となり、
予備選で最有力候補<フロントランナー>となります。
ジョン・F・ケネディの再来ともいわれ、大衆にも人気がありました。
ところが、マイアミ・ヘラルド紙の記者がハートの若い女性との密会をスクープ。
スキャンダルは一斉に報じられ、ハートの支持率は急落していきます・・・。

ハートは「政治家は政策で判断されるべき」と考えています。
だからちょっとした浮気くらいなんの問題もない、と。
確かに、男の浮気は甲斐性だ、などと言う人もいます。
そしてその頃までは実際に多くの人、特に男性はそう思っていた。
けれど、そのあたりがちょうど世間の考え方の変わり目だったのかもしれません。
「素行も政治家の資質のうち」と考える人が多くなってきたのです。
つまりは女性の社会進出につれて、浮気は男の甲斐性だ、
などという理論は成り立たなくなってきた、ということなのだと思います。

確かに、マスコミの過剰反応という問題はあります。
実力も意欲もある若き政治家が道を断たれてしまった。
浮気がそれに見合うようなことだったのかといえば、どうにもお気の毒というほかありません。
でも、作中のある人が言っていました。
男の浮気はつまり女性蔑視なのだ、と。
ハートのこのたびの浮気騒動は、実はこれが初めてではなくて、
これまでにも何度もあったことなんですね。
つまり女性を遊び道具としか見ていなくて、そこに「人格」があるのを認めていない。
だから確かに女性蔑視なのです。
いかに崇高な政治理念を掲げたとしても、私ならこんな人に大統領になってほしくはない。

結局、ハートの自滅によりライバルのブッシュ氏が大統領に収まったというわけで、
これがアメリカにとって良かったのかどうか、それは私には全くワカリマセン(^_^;)

 

 

<WOWOW視聴にて>
2018年/アメリカ/113分
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ヒュー・ジャックマン、ベラ・ファーミガ、J・K・シモンズ、アルフレッド・モリーナ、ケイトリン・デバー、マムドゥー・アチー

歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


THE UPSIDE 最強のふたり

2020年01月01日 | 映画(さ行)

人と人として、同じ目線で

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オマール・シーの出世作、フランス映画「最強のふたり」のハリウッド版リメイク。
いつも思うのですが、あれほど映画として完成されている物をわざわざリメイクしてしまう、
アメリカ人はよほど字幕が嫌いなのだなあ・・・と。

で、その元作品はもちろん見ているのですが、
でもやっぱりハリウッド版も見てしまうという、物好きな私です。

スラム街出身で前科があり、職もなく妻子に見放されたデル(ケビン・ハート)。
求職活動をした証拠書類が必要になります。
そこで、介助の仕事の面接に出かけ(本人は清掃の仕事だと思い込んでいた)、
サインだけもらおうとしたのですが、なんと採用に決まってしまったのです!!
彼が介助するのは全身麻痺で車椅子生活を送る大富豪フィリップ(ブライアン・クランストン)。
彼は他の面接者がみな自分を「障害者」として、
ただ世話をするだけの対象としか見ないことにうんざりしていたのです。
そして、障害者であることに全く頓着せず、ため口をきくデルを気に入ってしまったのですね。

キャリアも教養もないお調子者のデルを雇うことに、
秘書のイヴォンヌ(ニコール・キッドマン)は反対しますが、フィリップに押し切られてしまいます。
しかし、仕事が始まってみれば、二人は互いに一人の人間として、友情を育んでいくのです。
さて、フィリップには密かに「文通」している女性がいて・・・。

実話を元にした話なので、感動のツボは元作品と同じ。
首から下が動かないからと言って、できうる限り健常者と同じ生活をしようというのは、
先に見た「ブレス しあわせの呼吸」のカベンディッシュの考えが元になっているわけですね。
そう思うとなんだか感慨深いです。
今はAIで、声さえ出れば様々な電化製品を使うこともできて、
少しは過ごしやすくなってもいるでしょうし。
でも、いくらそのような器具などが発達しても、
人が人を大事に思い、支える心があることが一番大事。
そういうことです。

まあ、結局のところやはりわざわざリメイクするまでもなかったとは思いますが、
本作でまたこのストーリーが多くの人に伝わるのならばそれも良し、と言うことですね。

もう少し詳しい考察はこちらへ
「最強のふたり」2011年フランス版

<シアターキノにて>
「THE UPSIDE 最強のふたり」
2019年/アメリカ/125分
監督:ニール・バーガー
出演:ブライアン・クランストン、ケビン・ハート、ニコール・キッドマン、ゴルシフテ・ファラハニ、アヤ・ナオミ・キング

友情度★★★★☆
満足度★★★.5