ステージおきたま

無農薬百姓33年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

紙屋町さくらホテルを見た。

2007-01-08 21:03:12 | 演劇

 こまつ座演劇公演『紙屋町さくらホテル』を見た。旅興行の初日の舞台だ。まず、4ヶ月という長い公演の初日を、地元川西町フレンドリープラザで開けてくれたことが感動だ。この後、三重から北陸を回り、2月には厳冬の北海道、3月は静岡県内各地、4月は首都圏を回って5月5日は東京で打ち上げるという日程だそうだ。いやはや、聞いただけで、疲れがどっとでてしまう。皆さん、元気で東京までたどり着いてください。

 さて、このお芝居、初演はたしか新国立のこけら落とし公演だったはずだ。出演は森光子、大滝秀二、三田和代他。この舞台私、見てるんです。いやあ、やっぱり豪勢だな。森光子の歳を感じさせぬ華やぎや大滝の頑固一徹、三田の繊細さなど今でもくっきりと思い出す。ってことは、今回は、う~ん、比較してはいけないとわかっていても、ついついね。特に、女優陣がいけない。三人とも同じ年頃で、同じ雰囲気で、似たような声で、はっきり言ってミスキャストだと思いました。特に、前半は単調な演出もあって、睡魔と戦うのにかなりの労力を費やしました。寝ませんよ、寝ませんでしたけどね。

 でも、後半はぐっとしまったいい舞台になっていました。特に言語学の先生が、教え子の死を無念の思いとともに語るシーンから、最後の天皇の戦争責任を追及するラストまで、張りつめた緊張感がホールを完全に飲み込んでいました。終幕、薬屋に扮した長谷川大将が、さくら隊のみんなに歌で送られるシーンもよかった。歌の途中で、装置の二階部分が飛び、大黒がさっと開いて、バック一面に青空と白い雲が浮かびました。演劇を通して一つに結ばれた人々の思いを象徴するさわやかさ。と、突如、歌も隊員達もストップ。そして、暗転。原爆の落とされた瞬間でした。見事な演出です。演出面で納得いかなかったのは、互いに身分を偽る海軍大将と陸軍中佐が、他の桜隊のメンバーに内密で、互いの密命を探り合ったりするシーンでした。何度がありましたが、内緒話しの感じがまるでなくて、不自然さはぬぐえませんでした。あと、劇中劇も含めもっとはじける部分があってもいいのかなと、これも初演渡辺浩子演出の印象が残るせいでしょうか。

 井上さんの脚本の見事さに、改めて感心しました。ある意味、井上さんの集大成です。演劇への礼賛、言語学の博識、緻密な資料踏査、ぶれない歴史観それらが、井上さんの真摯な問いかけをしっかりと支えていると感じました。しかし、この作品が素晴らしいのは、筋立ての巧みさだと思います。本土決戦の可否を判断するため送られた天皇の密使、それを付け狙う陸軍の資料室課長、アメリカ国籍の日系2世とそれを密着監視する特高刑事、それら虚構の部分をさくら隊という歴史事実に巧みに組み込んだこの構成の見事さにこの芝居の成功はもう保証されていると言えると思います。こういう人を唸らせ、観客を一気に引き込むような脚本をいつか書いてみたいものです。

 さて、この芝居、置農演劇部の部員全員と見ました。高校生達はどんな風に見たんでしょうかね。明日、このブログのURLを教えるから、ぜひ、感想をコメントしてほしい。最後に、今回も菜の花座の若手は一人も見に来ていなかった。いやいや、他の劇団の若手もまったくいなかったな。これは絶対ダメだよ!好みはあるかもしれないが、せめて、置賜で見られるプロの舞台はすべて見ないと、役者としての成長はあり得ない。

コメント
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