置賜農業高校演劇部、次回一般公演は、コントとダンスのステージだ。コントは、「さがしものは何ですか」をテーマに5本。やっと第四話まで完成。
書きながら、これいいじゃない、いけるよこれって、自画自賛しきり。そこで公演前に特別公開。読んでみてくださいよ。でも、もし、上演するなら、ご一報!
第四話『入れ歯・老眼鏡・棺桶』
舞台中央に棺桶が置かれている。しかし、それは飾りもなく、ただの箱にしか見えない。婆ちゃんが何か一生懸命捜し物をしている。どうやら話し方から、探しているのは入れ歯らしい。
婆ちゃん まったく、どこにやっちまったんだかね。入れ歯が無くちゃ、なんも できゃしないよ。話すんだって、こんな風にふがふがだし。恥ずかしいったらないよ、まったく。隣の源さんに見られたら、もう、あたしゃ死ぬに死ねないよ。源さんあたしにほの字なのにさ。ああ、もう、どこに行っちまったのかね。腹へってたまんないよ。もう二日も何も食べてないだからね。まったく、嫁の奴ときたら、「お婆ちゃん、さっきご飯食べたでしょ。」なんて、人のこと呆け扱いして。あたしゃちゃーんと知ってんだ。ああ言って、二日に一度しか食べさせてくれてないんだ。本当だよ。年寄りのひがみなんかじゃないよ。嫁の陰謀なのよ。陰謀。食事抜いて、早くくたばれってね。
婆ちゃん、ようやくポケットに入っていた入れ歯を見つけて、
婆ちゃん あった!こんなとこに、(入れ歯をはめて)やれやれ、これ、嫁が隠したんだよ、きっと。そうさ、そうに違いないんだ。入れ歯が無けりゃ、おまんまたべられないもんね。腹空かして早くおっちねってね。ひがみじゃないよ。兵糧攻めってやつだよ、兵糧攻め。年寄りに食わせるおまんま、もったいないって、飢え死にさせようってんだよ。ああ、恐ろしい。
と、懐からあんパンを取り出して食べる。
婆ちゃん あたしだってね、やられぱなしじゃありませんよ。ちゃーんと自衛手段こうじてますからね。兵糧攻めでおっちんでなんかいられるかいってもんだ。あ、いけない。賞味期限確かめなくちゃね。不二家はあんパン作ってないはずだけどね。危ない、危ない。年寄りの目悪いのに付けこんで、カビだらけのもん食わせられちゃかなわねえからね。
婆ちゃん、あんパンの袋の表示を読もうとして、
婆ちゃん ありゃりゃ、かすんじゃって。読めないよ。そうか、眼鏡。眼鏡はどこに置いたっけねえ。やだ、また無いよ。そこらに置いたはずなんだけど。おかしいねえ。たしかさっきそこに、・ないねえ。ない。・・ははーん、陰謀だよ。陰謀。ひがみじゃないよ。あの嫁さ。どっかに隠しやがったんだ。眼鏡隠して、カビだらけの腐ったもの食わせて、早くおっちんじまえってね。まったく、なんて嫁なんだろ。鬼だね、鬼。鬼嫁だ。今頃、髪の毛逆立てて、
と、頭に手をやると、そこには眼鏡があった。
婆ちゃん あら、あったわ。いやだ。年取ると物忘れが激しくなってね。でもね、嫁の陰謀はね、
袖で息子達の声が聞こえる。
息子 おーい、そろそろお弔いのお客様来るぞ。
嫁 分かってますよ。今、仏様にあげる御膳準備してますから。
婆ちゃん お弔い?はあ?仏様?・・あっ、忘れてた。
婆ちゃん、棺桶のふたを開け、中から経帷子を取りだして身に付ける。
婆ちゃん 年取ると物忘れが激しくなってねえ。なんまんだぶ、なんまんだぶ。
手を合わせながら棺桶に入り横になる。
問題は、高校生にこれができるかってことだ。う~ん!