今日は送り火、愛する人たちとの逢瀬を楽しんだ魂も、またいずこともなく旅立っていく日。このお盆、いつも以上にたくさんの御霊がこの東北の地をさまよったことだろう。帰ってきた者も迎えた人たちも、その心はせつなくつらいものだったと思う。
恐山のいたこに亡き人の声を求め、人々が列をなした、という報道もあった。いささかの心の備えもなく死地に赴いた人たち、あの瞬間の叫びはきっと激しく凝縮し御霊となってこの地を漂っていることだろう。
門門でたかれる送り火に見送られこの地を離れる御霊は、これからの月日をどこでどう過ごすのだろうか。とりわけ海の彼方に連れ去られた人たちのことが気になる。たとえ遺骨や遺品は発見されていなくても、残された家族の強い願いに引き寄せられて数日をともに過ごしたに違いないそれらの御霊、今宵また海に戻り、ゆらゆらと海上を漂うことになるのか。広い大海の中、魂同士の出会いはないのか。交わされる会話は?
そんな思いがずっと頭を離れず、『漂流』を書いた。送り火は歌にしなかったが、海岸線にきらめく数々の迎え火は歌の中に描いた。
SONG4『迎え火』
ほら、たくさんに見えましょう?
光の滴、はるかかなた
ほっと一息ため息まじり
愛しき人を迎える火
悲しき人を手招く火
あなた迎える火はひとつ
あなた色した火はひとつ
同じ炎に見にましょう?
どれもおぼろに夕闇はるか
そっと一言祈りの吐息
忍ぶ思いが燃え上がり
悼む心が色添える
あなた迎える火はひとつ
あなた色した火はひとつ
遠く隔てて見えましょう?
大海原のその向こう
水底八尋ゆらめいて
思いはこえて一散に
願いは翔るまたたく間
あなた迎える火はひとつ
あなた色した火はひとつ
この歌詞に知野さんの美しく優しい曲が付いた。大切な人を失った人たちばどう聞いてくれるだろうか?