ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

婆声発声練習

2012-09-12 21:54:04 | 演劇
 全国行った『どんがら山奇譚』も婆さんだった。演歌ショーのコントも主役は婆さん。そうだ、去年の大会作品『漂流』も婆さんが出た。そして、今回の『壁20XX』も。それも5人も出しちゃうっていう婆の大盤振る舞い!

 当然なんだな、設定が現代の姥捨て山なんだから。そう、少年たちも見捨てられた存在、婆さんたちも見放された存在。さらに「壁」の内側からはじき出された女性、出てくるのはみんな不要とレッテルを貼られた者たちばかりだ。

 今、時代はよろしくない方に流れている。資本主義が一人勝ちして、やりたい放題の弱肉強食がまかり通りつつある。はじき出されているのが、若者と年寄り。そんなあり様がますます広がるに違いないって読んでの近未来設定だ。激しい憎しみの暴発が、静かだがしたたかな抵抗へと昇華されて行ってほしい、そんな願いを込めて舞台を作っている。

 さて、問題は婆さんだ。高校生が婆さんをやる、それも1人や2人じゃない、5人もだ。これはかなりの賭けだ。先日のゲネでは、婆さんどころか、まったくの女子高生でしかなかった。だから、婆さんたちの恨み辛みの憤りや嘆き節がさっぱり届いてこなかった。少年たちと婆さん、この二つの怒りが補いあって盛り上がる作品なのに。

 で、まずは台本を書き足した。もっと明瞭に彼女らの呪いの言葉が伝わるように。そして、翌日には、メイクを徹底的にダメだしした。顧問Nが必死で描いてくれたので、これはかなりのものになった。黙って座ってれば結構それらしい。でも、台詞ある。しゃべるとこれはもうまるで高校生!もう、どうしてくれよう?

 てことで、今日は婆声の発声練習から始めた。高校生の素直な声を敢えてがらがらのだみ声に変形するエクササイズ。声帯の周りの肉や骨や皮膚を最大限振るわせて、余計な音を付け加える。そうやって一人一人だみ声を作っていった。声を作るってことに抵抗がないわけじゃなかったが、この舞台ではどうしても婆声が欲しかった。徹底した婆声発声練習の効果が実って、格段に婆さんぽい声になった。

 でも、声はあくまで入れ物、容器だ。そこに婆たちの怒り、呪い、涙、諸々の辛い思いを詰め込まなくちゃならない。都会の孤独死のこと、仮設住宅で暮らす年寄りたちのことなど話しながら、今の時代、年寄りが如何に見捨てられた存在かを伝えた。

 年寄りの憤りやため息が役者たちのものになったとき、はじめてこの舞台は息の通ったものになることだろう。後4日、どこまで怨念に迫れるか、少年たちも同じだが、そこが勝負の分かれ目になるだろうな。

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする