ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

「ショコラ」は頑なな心に効きます!

2015-01-30 20:21:40 | 映画
 またまた古い映画のお話しだ。「ショコラ」(監督:ラッセ・ハルストレム)2000年だって。昔だねえ。なんで今頃?そりゃ当然、NHKBSで放映してたから。

 だからさ、暇々引退タイムに入った僕としちゃ、今更ながら過去名画なんかで楽しんでるわけだよ。

 で、まずは、良かった。面白かった。泣いてしまった。

 ショコラの効能を伝えるために旅する運命を背負った母と娘の流浪と定住のお話しだ。マヤ文明の血を引く彼女たち、カトリックの信仰深いフランスの田舎町では住民との確執が絶えず、もうすでに何カ所もでいびり出され、北風に追われるように小さな村にたどり着く。母親の大きな武器は、生きる情熱を与えるショコラ、人の欲望を見抜く占いの力、そして、虐げられた人への思いやり。カトリックの戒律遵守に凝り固まった村長からの執拗な排撃に耐えながら、一人また一人とショコラ仲間、ショコラ同士を陣営に引き寄せていく。村長に先導されたショコラ排除の策動は、川づたいにたどり着いたヒッピー?らしき集団とショコラとの交流をきっかけに、ついに破滅の危機へと突き進んでしまう。またもや定住の夢破れた母は嫌がる娘を無理強いして村を出ようとするが、夜明け前、階下の工房に見たものは、ショコラ祭りを盛大に祝おうと準備に明け暮れる村人たちの姿だった。堅物の村長もショコラの味を知って、生きる喜びに目覚めていく、目出度し目出度し。

 そう、ウェルメイドな作品だ。蔑む意図はまるでない。100%褒め言葉として、良くできた作品だと言っちゃおう。巧みな設定、上手い役柄作り、テンポの良い展開、ときめきの恋の後には破局、さらにはハッピーな終末へ、本当に上手だなぁ。そりゃ、こんなん出来過ぎでしょ、とか、人間が薄っぺらとか、信仰ってこんなもんじゃないとか、つっこめばいくらだって穴は見つかる。でも、いいんだよ、これで。人間性の奥底でとらえるなんて、この際、別の事柄なんだ。見る人が幸せになる映画、見た後でチョコレートがつまみたくなる映画、それで十分じゃないか。

 なんて言ったら、作った側からクレーム付くかもしれない。そう、きちんとしたメッセージあるからね。それは、他者へ寛容であれってこと。信仰や思想や生き方、人それぞれに大切な思いをお互い大切にしましょうよってことだ。これ、今の時代、最優先のテーマと言えるんじゃないか。キリスト文明とイスラム文明、先進国と途上国、それぞれの偏屈な思いが、世界のあちこちで火花を散らしているもの。寛容!いくら叫んでも叫び過ぎってことはないな。特に、日本のような宗教的にゆるい国民性が、険しい対立の緩衝になれれば良いと思うんだけど、どうも、今この御国の流行は、敵対願望とでも言うか、自分の主張ばっか押し出して行く、野郎、めんた切りやがって!のならず者志向だから、無い物ねだりってことかな。なんて、傍観評論家気取りじゃだめなんだけど。お隣さんが、汚く見えて、ずるく感じて、不安に感じる人たちにはぜひぜひ見てもらいたい映画だよね。

 もう一つのメッセージは、欲望を抑え込まないで!ってこと。愛する人には素直に告白する!美味しいものは嬉しくいただく!嫌な亭主からは逃げる!女房に逃げられたら次なるターゲットへ一直線!歌いたい歌は大声で歌う!それまで抑圧していた欲望が、ショコラの魔力で解き放たれる。そうか、そうなんだ、チョコレートって肥満の元凶なんかじゃなかったんだ!ってことを気付かせてくれるのが、この「ショコラ」ってことなんだ。うん、悪くいない。

 でも、村人から認められ定住の足がかりを得た母娘、幸せな暮らしが待っているんだぁ、と思うのか、ここからだよ、苦労はって思うか、それは見る人の人間観、社会観、集落観に掛かっているわけだけれどもね。
 
コメント
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