ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『蜜姫村』の口直しは『卵をめぐる祖父の戦争』

2011-02-15 00:16:31 | 本と雑誌

 詰まらない本を読むと、次こそは!って思う。

 『密姫村』(作:乾ルカ)これが相当ダメだった。期待して読んだし、書き出しはぐいぐい引き込まれたので、中盤からのだらけようは、もういい加減にしろ!っとわめき散らしながらかろうじて最後のページに到達した。

 ファンタジーの面白さは、アイディアと構想力だと思う。『蜜姫村』にはそのどちらも欠けていた。村人のあらゆる病気を吸い取る蜜姫、その毒素?を口移しされる「壺」。このアイディアどう?今どきの病、すべて口から吸い出せるなんて、納得できるかい?食中毒や感染症ならありだろう、でも、心臓疾患とか糖尿病といった生活習慣病はどうだ?さらに遺伝子病なんてのもあるぞ。こんなのどうやって吸い取るっていうんだ。

 でも、病気吸引のアイディアは許そう。その後がいけない。後半は書き古された伝奇小説、剣豪小説。それだけ!数百年もの間、村と不即不離の関係を築いてきた蜜姫や黒王が、そのちぎりの重さをわきまえもせず、嫉妬と反逆に怒り狂って山を下りてくるって、あまりにちゃちでしょ。蜜姫の世界がどれほどの人たちに支えられ、どんな仕組みで暮らしを成り立たせているか、なんてさっぱり描かれていない。だいたい、別世界に暮らす一族の子どもたちが村の小学校に行く!!!なんなの。

 と、まあ、期待して読み始めただけに読後の苛立ちは相当のものだった。なので、次はまともなもの読まなくちゃ、ぜったい!

 『卵をめぐる祖父の戦争』(作:David Penioff)素晴らしい作品だった。第二次大戦の転換点となったレニングラード包囲戦を題材に戦争の悲惨さや愚かしさを描きつつ、友情とほのかな純愛が読者に迫ってくる。と、書くとありきたりの戦争文学と思われそうだが、その肌触りも手応えもまるで違う。一言も二言も余計な脱走兵と自負の思いとは裏腹に貧弱な少年との奇妙で息詰まる活劇ものになっている。

 あの上下二段組みのポケミス350ページがあっという間に過ぎていった。最後の一行まで本当に気の利いた文とせりふの連続だ。口先一つで窮地を切り抜ける脱走兵のキャラクターがいい。主人公が思いを寄せる赤毛の女狙撃手もこれまでにない魅力を放っている。さらに、若者二人の下ネタ満載のやりとりも、かえって戦争という現実妙に実感させる。

 なにより、次から次と、読み手を飽きさせもせず、首をかしげさせることもせずストーリーをつないでいくその力量に感心する。もちろん、その背景にあるのは包囲戦の想像を絶する悲惨さだ。人肉売買を生業とする夫婦、皆から貴重な食料として狙われる鶏を固守して死んでいった老人とその孫、人間地雷ならぬ犬にくくりつけられた地雷、雪中に佇立する死んだ兵士の立て看板、さらにはドイツ軍将校の慰安婦として囲われた娘たち、レジスタンスの男たちと狙撃の腕を自慢する女スナイパー、そして、チェス狂いのナチス将校、・・・・とこれまで耳にしたことのないエピソードが、巧みな展開の中で一つにつながれ行く。そして、最後は共に苦労した友との惜別、そして、夢見た女狙撃手との再会!

 こんな素晴らしい小説に出会えたことをつくづく幸せだと思う。読了とともに、この作者の処女作『25時』をアマゾンワンクリックで注文してしまった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

裏方が支える!『東北学生音楽祭』

2011-02-13 20:59:16 | 地域文化

 スィングガールで有名なった『東北学生音楽祭』って言うより、あの映画の感動をいつまでも!と続けられているアマチュアジャズの祭典だ。映画のクライマックスシーンの再現を目指して、その撮影会場となった川西町フレンドリープラザホールで行われている。今年で第7回を迎えた。

 毎年、県内外のアマチュアジャズバンドが集い、白熱の演奏を繰り広げている。中学校吹奏楽部あり、高校生あり、地元ジャズバンドやこの催しのために作られたバンド、さらには地元中学校の合唱なんかもあって、1日超満員の観客・演奏者で大にぎわいする。

 今年も置農演劇部は裏方としてびっしり1日お手伝いした。仕事は例年通り、椅子と譜面台を出し入れする舞台係、出演団体をサポートするアテンド、そしてピンスポットが割り当てられた。演劇部のOB・OGや菜の花座メンバーなども会場係やらアテンドやらでお役に立った。もちろんそれ以外にも町内外からたくさんのボランティアがスタッフとして役割を担っている。受付や物品販売や各種の出店など果たして総勢何人くらいになるのだろう。

 僕は舞台係の下手チーフということだったが、演劇部OBもいたので彼に全権委譲、一兵隊として舞台を行ったり来たりした。今年は、ゲストが『ピンクボンゴ』という人気バンドでその演奏が1時間以上とほぼコンサートレベルとなったので、その仕込みはかなり気を使った。と言っても、プロの舞台スタッフがほとんどやったことだけどね。プロはやはり音作りに厳しいからね、ちょっとぴりぴりした。

 もう7年目となるので仕事は手慣れたもので、ほぼ順調にすすんだが、事前に提出している舞台のセッティング図を本番の舞台上で勝手に直す指揮者(=指導者)にはさすがにカチンときた。しかもメンバー数まで違っていて、せっかく出した椅子と譜面台を引っ込めた。みっともない!それならそうと本番前に言ってよね!こっちは必死で椅子と譜面の配置覚えて取り組んでるんだから。スタッフにはスタッフの仕事の意地ってもの、ありますから!

 ついでにちょっぴり不満を言うと、たくさんのボランティアに支えられてこの催しが成り立っているって意識に乏しい出演者が多いってことだ。例えば、舞台係は8時半の打ち合わせから19時の片づけまで昼食時間を除きずっと立ちっぱなしで仕事してたって知ってるだろうか。演奏会の終了後、出演者は交流会で盛り上がっている時、置農演劇部やそのOB・OGは舞台のばらし・後かたづけで汗を流していたって気づいていただろうか。引き受けた仕事だからそのことを厭う気持ちはない。出演者の緊張感をそがないように立ったままで仕事する、これは舞台スタッフの礼儀だ。最後まで舞台を始末することにも僕たち演劇人、大袈裟!は誇りを持っている。ただ、それが終わって交流会の傍らをすり抜けて帰る高校生に誰一人、ひとことのねぎらいやお礼の言葉もないってのはどういうことなんだろう?!

 置農演劇部の場合、公演はさせていただくものだとの意識を徹底している。だってそうだろ、高校生、アマチュアの拙い舞台を見てもらったんだもの。それだけでありがたく感謝しなくちゃいけない。だから、終演後の清掃は徹底して行う。日頃手が回らぬ小学校の体育館など、間違いなく使用前よりきれいな状態にしてお返ししている。そして、主催の方たちに心から御礼を申し上げて退出する。さらに、舞台挨拶でも、楽しんでいただけましたか?という表現は厳禁だ。君たちの技はそれほどのものではない。自惚れてはいけない。これを部員たちにはとことん教えている。

 アマチュアジャズミュージシャンの皆様!どうですか?皆さんのパフォーマンスを高校演劇部と比べては失礼ですか?今回の出演者がみなそうだったわけではない。中には袖で準備しながら、裏方大変ですよね、と高校生に声を掛けてくれていた人もいた。多分少なからぬ人たちがその気持ちをお持ちなのだろうと思う。

 いろんな人たちが様々な思いでこのイベントを応援している。ジャズが大好きな人もいれば、プラザ大切の思いからはせ参じてている人もある。個人的な義侠心で来ている人だったいる。そして、もうメチャクチャなエネルギーを費やしてこの音楽祭を仕組んでいるプラザ職員がいる。こういうことが貴重な演奏の場を保証してくれているってこと、もう少し気づいてもほしいと思うだ。せっかくここまで盛り上がりを見せている音楽祭、みんなで大切にしようじゃありませんか。

 

 

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新メンバーで演歌ショー

2011-02-11 22:31:40 | 地域文化

 昨日校内公演で、今日はさっそく演歌ショー『夢芝居』の公演だ。こんな時期にやるはずじゃなかった。しかも、米沢の万世だ。11月に頼まれていたのが、偶然置農のオープンスクールとぶつかって延期させてもらったことで、この日の公演になった。

 一週間前、置農受賞報告会に押しかけて踊らせてもらってはいたけど、あれはわずかに4曲、新メンバーでレパートリー全部踊るのは今日が最初。メイクでも着付けで踊りでもリードしてくれていた3年生が抜けた穴を2年生がすべてカバーしなくちゃならない。これはなかなか大変なことなんだ。

 これまではメンバーに美容師志望の部員が必ずいて、自分進路のためにもって気持ちで頑張ってくれていた。でも、今年のメンバーにはそんな美容のプロを目指しているのは誰もいない。興味・関心の少ない者たちでこれまでの作業をすべてしなくてはならない。ということで、念には念を入れて3時間前から会場入りをした。

 時間的なゆとりは十分だったけど、うーん、やっぱり化粧下手だなぁぁぁぁ。これまで何度もメイクしてきているはずなのに、どうしてこうも消極的なのだろう。ともかく地味だ!!口紅なんか、おい!おばさん!って皮肉ってしまうほど控えめな色を使う。化粧で変身するって経験ができていないんだよな。というこで、ゆとりの時間はメイク直しに当てた。

 さて、公演の方は、お年寄りに若者の元気をしっかり伝えられたんじゃないかな。ともかく、アンコールも含めラスト4曲は踊り詰めだったからね。あれだけエネルギッシュに踊れば、上手下手なんて超えてしまう。あの若さのバイタリティだけで、お年寄りには十分だったと思う。次回公演は3月12日南陽市ハイジアパーク、それまでにはコントの方もしっかり仕上げておかなくちゃならない。子どもミュージカルの稽古と同時進行、相変わらずの忙しい日々が続く。

 食育子どもミュージカル『ベジタブル!ワンダフル!!』Youtubeに第2弾をアップした。ご覧ください。今回は「猫ならぜったい!キャットフード」です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

よくやった!部員たち:校内公演2作品

2011-02-10 22:43:12 | 教育

 終わってみれば、生徒たちも納得、満足の校内公演だった。作品は『ごはんの時間2ぃ』と『アスタリスク』どちらも高校演劇の名作だ。16人の一二年生が2チームに分かれて制作した。

 今年は取りかかるのは遅くなかったのだが、なんせ途中に他の公演を入れすぎた。1月に子どもミュージカル、2月に演歌ショー、さらに新チームのための着付け講習会も入った。いくら以前から手慣れたものだとは言え、再演する以上は3日間は稽古に費やす。そんなこんなで、仕上がりがどうしても遅くなってしまった。数日前の通しなど、途中何度もフリーズ状態が現出したくらいだ。

 さらに直前になって『ごはんの時間2ぃ』チームに体調不良者が出た。どうしても出演不可能とわかったのが公演前日。当然、代役は無理!うーん、この一本は中止するしかないか、・・・お客さんのことを考えれば、当然中止あるいは延期ってことだ。でも、この後のスケジュールがぎっちり詰まっている置農演劇部としては、順延はまったくムリな相談。ならば潔く頭下げちゃうか。

 でもね、残りのメンバーはこの日のために2ヶ月も頑張ってきたわけだ。それなりに仕上げてもきていた。演出もよく頑張った。稽古の様子を見ながらずーっと考え続けた。どうする?どうする?

 結論は、あいた穴については袖でせりふを読んで、残ったメンバーだけで舞台を続ける、ってことにした。そして、そのせりふ読みは僕がつとめることにした。女子高校生の役なのにどうして私じゃないんですか?!と顧問Nに強く抗議?を受けたけど、俺がやる!で押し通した。理由は、最後の仕上げを僕が付き合っていたってこと。特に会話のテンポを強調していたので、僕がやれば自然とリズムが良くなると踏んだんだ。

 で、実際その通りになった。もちろん女子高校生役を爺さんがやったわけだし、途中あちこちでかみかみであったから、素晴らしい出来なんかにはほど遠いが、他の役者たちの勢いは引き出せたように思う。こちらの作品は後半に回し、稽古場公演ということで、あらかじめお断りをして見ていただいた。やっぱりやってよかった。校内公演だから許されたことだけど、部員たちの表情はみな充実していたな。

 もう一本の『アスタリスク』も、学校嫌いの不良高校生たちの話しだが、うちの超まじめな高校生たちが、熱演した。きっとどんなにまじめな子たちにも、反抗や脱線への願望てのは根強いものなんだろうな。けっこう上手に演じていた。

 どちらの舞台も至らぬ点は有り余るほどあったが、自分たちだけでここまで仕上げたのは大したものだと感心した。今年のチームは実力不足か、などと感じていたが、どうしてどうして、やれば良いところまで行くものだ。そして、年々仕上がり熟度は上がっていく。これが伝統ってものなんだろうな。

Img_7100

Img_7152

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初見参!Youtube

2011-02-09 21:22:45 | 演劇

 『ベジタブル!ワンダフル!!』Youtubeに初登場です。

 前々から、考えてたんです、このまま終演してしまうのは惜しいって。もっともっと多くの人に見てもらいたい。いろんな人の感想を聞いてみたい。できればそれをきっかけに新しいつながりができればもっといい。

 全編通して見てもらえれば一番いいのだけど、1時間強のミュージカル、そうはいかない。ならせめて歌のシーンだけでも映像で見てもらおう、そう思ってのYoutubeアップだ。今年は、昨年10月に行われた『こころを育む総合フォーラムIN川西』での公演が舞台の出来としても画像としても水準に達していたので、ここはチャンスと思ったってわけ。

 今回はまず『ウェルカム トゥ ベジタランド』を上げた。わずか1分30秒ほどの動画だけど、歌といい、部員たちの踊りといいなかなか良い。きっと多くの人に楽しんでもらえると思う。

 まずは皆さん、見てください。Youtubeのトップページまたはグーグルで、「食育ミュージカル」、「山形県立置賜農業高校」で検索するとヒットします。これからも全曲上げていくつもりです。ご期待ください。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする