だめだった、3年連続の全国。僕は行けたって思ったんだけどね、発表終わった時。生徒達素晴らしいプレゼンしてくれたもの、声も大きいし明るいし元気はあるし。会場もしばしば笑いに包まれた。発表だけなら、断然のトップだ。でもねぇ、最近のごはんDE笑顔は、表現力をほとんど重視していないんだ。評価基準からも抜けてしまったしね。
内容重視ってことで、紅大豆本舗はどうやらほんのちょっぴり届かなかったようなんだな。審査員の一人が講評で、名指しで惜しかったって言ってくれたので、多分そうなんだろう。いや、僅差だったって思いこむことにしよう。でも、負けは負けだけど。
どこが不足したか。指摘されたのは三点あった。一つは活動の中に紅大豆の特徴を生かし切れていないってこと。これはその通りだろうね。お弁当のおかずはすべて紅大豆料理なんだけど、お年寄りにお弁当を届けることが主体になっていて、必ずしも紅大豆である必然はないものね。
二点目は配達するおばあちゃんたちから代金を頂戴する方向で仕組みを整えるべきだとの指摘。これは僕とはまったく正反対の考えだな。お金を取って弁当を届けるってのは容易なことじゃない。まず営業になってしまうからね。施設も整えなくちゃならないし、調理師さんも必要になるだろう。しかも、お店としてやっていくなら、責任ってものが発生する。試験中は休みとか夏休みは休業ってわけにはいかない。週一度の配達だって大変なのに、調理師科のある学校ならいざしらず、高校生にはかなり難しい取り組みになるだろうな。
ワッフルとかソイばぁを販売してその売り上げでお弁当の費用を賄うっていうのが今回紅大豆本舗が作り出したシステムなんだけど、それの方が高校生のボランティアとしてはより適切な形なんじゃないだろうか。紅大豆本舗を一つのNPOと考えれば、製造販売で得た収入でお年寄りとの夕食を楽しむって方向はなかなかいいアイディアだと思うんだけどね。審査員の一人はノーペイノーフードなんてカッコイイこと言ってたけど、川西辺りの一人暮らしの老人は経済的に厳しい人少なくないと思うし、高校生からのたまのお弁当プレゼントくらい、町民福祉の一環ってことでいいんじゃないのかな。
でも、代金を払いたいって人もいることはいるから、カンパ制にしてそれを溜めてさらに新しいボランティアに使うってやり方はあるかもしれない。町の社会福祉協議会に使ってもらってもいいし、被災地に送ってもいい。これは考えてみる価値があるかもしれない。
さて、最後の指摘は、プロジェクトを拡大していく視点がないってことだった。そう、わずか9人だからね。お弁当配っているお年寄り。これはたしかに狭い。どうやって広げて行くんだ?って疑問は当然でる。それはわかっていた。一昔前の言葉で想定内だ。
これに対して、いろんな夢を語って将来展望の風呂敷広げることもできたんだけど、僕は敢えて、この小さな規模、顔の見えるつきあいってことにこだわったんだ。どうもプロジェクトって言うと、どでかい成果を誇りがちなんだ。東京の有名レストランで使ってくれたとか、全国なんとかフェアで評価されたとか、何万個販売したとかって話しばかりなんだ。でも、これってどうなんだろ?本当に高校生の活動なんだろうか?
まっ、スケールを誇るのも悪くない。成果の広がりを強調するやり方もあるだろう。でも、高校生が半年くらいでできることっていったら、おばぁちゃんにお弁当届けるなんて凄い実践活動なんじゃないだろうか。毎週毎週きちっとこれを実践し通す。素晴らしいことだと思う。それだけでも十分だって思うんだ。
だから、敢えて、少人数にこだわった。発表もわざとそのことを強調した。高校生がお年寄りのために調理をし、心を込めたお弁当を作り、それを配達して一緒に楽しい夕食のひとときを過ごす。お年寄りとの出会い!お年寄りの発見!これ以上の何がいるというのか。
この素敵なケータリングサービス・ボランティアの仕組みを作れただけで、今年の生徒たちはもう十分。これをさらに一歩進めて、福祉の授業の一環に組み込むとか、学校全体のボランティアにするとか、おっと待てよ!これは行けるかもしれない。うん、そうだ。まずは校内に希望者を募って紅大豆料理の講習会をし、そこで作った料理の数々を町内のお年寄りと一緒に食べる。その輪をどんどん広げて行って学校全体が「おじいちゃん、おばあちゃんとお弁当の日」なんてものができれば、これは紅大豆の普及にも宣伝にもなるし、学校あげての福祉社会の学習にもなる。ああ、これは計画してみてもいいかもしれないな。
負けた言い訳をくどくど書き連ねるつもりが、思いがけないアイディアが浮かび出た。でもそれいつやるんだい?農業クラブ東北大会は一週間後だって言うのに。