45年前、パン屋だったんだぜ!知らない?そうだろ、わずかに5年間の職人暮らしだったからな。東京の中程度の規模の製パン会社で働いていた。前半は工場勤務、後にインストアベーカリー、ほら、スーパーやデパートにあるだ焼き立て売る店、でパンを焼いていた。まだ若造で知識も技術も未熟だったから、一緒に働く先輩からはずいぶんいろんなことを教えてもらった。パン作りばかりか、飲む、打つ、買うも教えたがった彼らだったが、そこは、打つ部門、競馬にだけお義理でお付き合いするに止めた。ほんと!
そのころのパン焼き職人修行が、その後に大いに役立って、今も時折頼まれちゃ焼いたりしてるわけだ。若いうちの寄り道は買ってでもしろって教訓そのものだぜ。もちろん、パンの方もいろいろ教わった。阿佐ヶ谷店のチーフなど、ほとんどオーナー気分で会社の指示などどこ吹く風、自分の作りたいものを勝手に作っちゃ店に並べていた。時には、手作りハンバーガーやろうぜ、なんて、売り場裏の隅で手ごねハンバーグ焼かされたこともあった。そんな職人気質の先輩が教えてくれたものに、メロンパンがある。今みたいにメロンパン人気が弾けるずっと前のはお話し。
なぁに、簡単にもんよ。菓子パンの生地にクッキー生地被せりゃいいんだ、とちょちよいと種をこね、適当にちぎり取って丸める。この手わざが凄い、計ったりせずとも、誤差1グラム内!!職人の神業!!発酵前の丸めた生地の尻をつまんで、そのクッキー種の上に押し付け、ぐりぐりと回す。生地は徐々に広がり、パン生地の表面を覆う。天板に並べスケッパーで格子目をつけたら発酵させ焼き上げる。なんと、簡単な!あの秘密いっぱい、どうやって作るんだ?が、クッキー生地ぐりぐりで解決してしちまった。偉大なりパン職人!
そうか、メロンパン、流行り出しなぁ。認知症サポートコントにも書き込んだ。ここは一つ、45年ぶりのメロンパンと行くぜ。
ただ、あの時のメロンパンは、クッキー種と言うより、安物のビスケット種って感じだったから、固さも粘り気も作業しやすく、ぐりぐりで済んだが、今時、見かけだけのあの配合じゃ、誰も見向きもしない。バターたっぷり卵黄身ふんだん、香料はとんでもないから、代わりにミカンジャム入れて、オレンジメロンパン、なんじゃそれ?にしてみよう。バターが多い分、柔らかいしべたつくので、生地をこねた後は冷蔵庫で寝かす。そう、高配合のクッキーと同じことさ。
神業は伝授してもらえなかったから、当然だ5年くらいで身に着くものか、円筒状にして小口から切り出す。べたつくので手粉を使いつつ麺棒で展し、発酵完了直前のパン生地の上に被せる。スケッパーで格子目、焼き具合は菓子パンと同じ。10分前後で焼き上げた。
あらら、格子目消えてる!なるほどバター多めだからなぁ、もっと、1個あたりのクッキー生地を分厚くすりゃ良かったんだ。味だって甘く美味しく仕上がるはずだ。次回は、そこらが改善点だな。ミカンジャムミックスは、成功!そんじょそこらにゃねえだろ。ブルーベリージャムってのもありだな。
45年前の経験、生きてるぜぇ!先輩、もう死んじまってるけどな。