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2024年から贖いの業の2000周年(33 - 2033)のノベナの年(2024-2033)が始まります

皇帝の新しい旗 その7 --- 2+2=5 ----

2011年07月08日 | トマス小野田神父(SSPX)のひとり言
アヴェ・マリア!

皇帝の新しい旗 その7 --- 2+2=5 ----

愛する兄弟姉妹の皆様、

 いかがお過ごしですか?

 6月29日は、ベネディクト十六世教皇様の司祭叙階60周年でした。いろいろなニュースがありました。教皇様、叙階60周年おめでとうございます!
Le 60e anniversaire de l’ordination sacerdotale de Benoît XVI
The 60th anniversary of the priestly ordination of Benedict XVI
教皇ベネディクト16世、司祭叙階60周年




 また、7月7日は『スンモールム・ポンティフィクム』の4周年記念でした。

 こちらは、7月末にフィリピンであるメディカル・ミッションの準備のために毎日、文字通り奔走しております。そのためにコンピュータの前にいる時間が制限されていますが、元気にしております。

 しかし、自由に使う時間があまりありません。そこで以前、有名なアンデルセンの童話『裸の王様』(原題は『皇帝の新しい服』)ももじって「服」を「旗」に取り替えて、似た話を考えてみましたが、その続きの原稿を引っ張り出してきました。

皇帝の新しい旗 その1
皇帝の新しい旗 その2
皇帝の新しい旗 その3
皇帝の新しい旗 その4
皇帝の新しい旗 その5
皇帝の新しい旗 その6

 今回の愛する兄弟姉妹の皆様にお見せするものは、以前、村上春樹の『1Q84』という小説が売り出されると騒がれた時に書いたものです。御笑読下さい。

天主様の祝福が豊かにありますように!
トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)

【前承:フランツヨーゼフ皇帝との謁見のため、アソ県の知事フランシスコは帝都アモールへと道を急いでいる。アソ県知事は、地方のオデ空港から帝都アモールへと飛行機に乗る予定であった。車で移動中のフランシスコは、秘書のドミニコと、フランシスコと同じ保守党の腹心の党員であったベネディクトと共に、車内でロザリオを手にして祈っていた。】

 オデ空港に着くと、フランシスコ県知事ら三人はチェックインを済まし飛行機の搭乗の時刻を待った。するとベネディクトはなにやら翻訳本をもって読書を始めた。

 一方、知事のフランシスコは、フランツヨーゼフ皇帝との謁見の準備のため資料にパラパラと目を通すのだった。が、秘書のドミニコはベネディクトがあまりにも熱心に本を読んでいるのに興味を覚え、冷やかし半分に言った。
ドミニコ「何を読んでるんですか?」

ベネディクト「ああ、これ?これは、もうずっと前にアキオ・ムラカミという作家がアメリカで書いて出版した本ですよ、最近翻訳されたんです。ジョージ・オーウェルの小説『1984』へのオマージュとして、その続編として書かれてるんですよ。全編2巻で、題も『1986』と『1988』です。」

ドミニコ「ふぅーん。ジョージ・オーウェルの『1984』は私も読みましたよ。ジョージ・オーウェルの『1984』では、1984年核戦争後の世界のオセアニアという超大国を舞台に描いていますよね。主人公のウィンストン・スミスは、オセアニアの一部となった旧イギリスのロンドンに住んでいるんですが、1984年のイギリスはイギリスではなく、エアストリップ・ワン(滑走路一号)という名前で呼ばれ、オセアニアの不沈空母という露骨な名称が与えられていることになっているんですよね。」

ベネディクト「そうです。」

ドミニコ「オーウェルによると、その時世界はオセアニアとユーラシアとイースタシアという三つの超大国に分けられ、互いに永久戦争を維持することによって自分たちの体制と支配と権力を維持しているんです。三つの国はどれも一党独裁制で、どれも似たり寄ったりの全体主義なんですよね。」

ベネディクト「その通りです。ところでアキオ・ムラカミは日系アメリカ人作家で、ジョージ・オーウェルの描かなかったイースタシアという超大国を舞台にストーリーを展開させています。第1編の『1986』では。主人公はマルセル・スミスで、彼はイースタシアの一部となった旧日本東京に住んでいます。
 マルセル・スミスの「スミス」は、古英語で「鍛治」「職人」「鐵匠」を意味しているそうで、アキオ・ムラカミの『1986』ではニックネームとして時には、「Kajiya」さんとも呼ばれることもあります。」

ドミニコ「ふーん、スミスさんが、カジヤさんね。ラテン語だったら faber だね。」

ベネディクト「『1986』の今回為された翻訳では、イースタシアは東亜国、ユーラシアは欧亜国、オセアニアは大洋国となっています。『1986年』の日本の名称は「浮沈空母」となり、東京はエドと言われるようになっています。東亜国でも、ジョージ・オーウェルの大洋国(オセアニア)と似たような全体主義的支配を行っています。まあ、これはオーウェルの真似ですね。」

ドミニコ「おもしろそうですね。全くジョージ・オーウェルのコピーですね。」

ベネディクト「そうなんです。例えば、東亜国にも首都が無く、人民は自治が行われていると錯覚しています。エドには、政府の建物が威圧感をもって建てられており、全くジョージ・オーウェルの大洋国(オセアニア)の平和省(Minipax)、豊富省(Miniplenty)、真理省(Minitrue)、愛情省(Miniluv)などの制度をまねして取り入れています。オセアニアとは違ってイースタシアつまり東亜国は漢字文化なので、語彙の制限と漢字の簡略化などによる新しい国語を通して、人民が危険思想を持たないように、東亜国でも「新国語」運動が始められています。政府の省庁は例えば、次のように呼ばれています。
平和少:戦争を遂行する省
物資少:物資の管理をする省
真正少:思想統制をする省
友愛少:尋問と拷問を行い党に従わせる省
などです。」

 ベネディクトは言葉を続けた。
「新国語は、過去の伝統との断絶と思考の単純化と思想犯罪の予防を目的に成立しました。語彙を少なくし、漢字を簡略化し、超自然に関すること、天主に関することなど、今まで持っていたような意味を持たないようにされました。この言語が普及するならば、唯一の変わらない真理があるとかという「反社会的」な思想をもてなくなるのです。昔からの言葉の意味が分からないので、過去との断絶が生じるのです。
 1950年代から始まって核戦争に終わった大戦争の後、東亜国(イースタシア)は毛沢東の成し遂げなかったことを遂行すべく、第2次文化大革命(1962年~1965年)を行いました。東亜国のイデオロギーは「死の崇拝」とか「個の滅却」と言われていますが、本当は「人間の崇拝」であり「真理の滅却」でした。
 第2文化大革命の後、東亜国では、過去との断絶が組織的に体系的に行われました。言語による断絶、国民の歌う歌の断絶、儀式の断絶、暦の断絶、教育内容の断絶、法体系の断絶など、全てにわたって過去との断絶が生じました。」

ドミニコ「第2文化大革命による、過去との断絶ですか、ふぅーん、どこかで聞いたことがあるような話ですね。その第2次文化大革命って、どこかの丘の上で行われた偉大な会議のようですね?」

ベネディクト「良く分かりましたね。毛沢東の後継者であった毛沢山の指導する会議から第2次文化大革命が始まりました。その会議では、たとえば「2+2=4である、しかし、2+2=5であると信じている人々と同じ数である、また、2+2=6と言う兄弟たちを尊重して対話をし、決して彼らを傷つけてはならない」というようなことが言われて、「2+2=4である」という人々は、第2次文化大革命の精神に従わない不従順な反逆者であると考えられるようになりました。
 主人公のマルセルは指導的な立場にいた人ですがこの第2次文化大革命の大会議の時から声を高くして「旧思想」を固守します。しかし、大多数の指導者たちは、毛沢山になびき「新思想」を受け入れました。
 そこで決定的なことが起こるのです。1986年10月27日に、東亜国の全ての人民は、第2文化大革命の新思想の象徴である大きな大会を開いたのです。世界平和と人類一致のために、オセアニアやユーラシアなどからも指導者たちが一同に集められ、それぞれの指導者たちはそれぞれに「2+2=7」「2+2=2」「2+2=10」などと自分の思うままを叫びだし、東亜国の指導者である毛沢山はそれを全て正しいとしたのです。「2足す2は5である、もしくは3にも、同時に4と5にもなりうる」ということを信じよ、というメッセージが全国民に伝えられたのです。この本のタイトル1986はそこから来ています。」

ドミニコ「ふぅーん、それでその続きはどうなるの?」

(つづく)


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