新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

『世界を創った男 チンギス・ハン』  

2007年08月10日 | 本・新聞小説

070811asagao_023 モンゴルは、朝青龍、白鵬で取り上げられることが多くなりましたが、2006年は「日本におけるモンゴル年」、2007年は「モンゴルにおける日本年」として二国の交流が深まっています。

それにあわせた堺屋太一氏の日経の新聞小説『世界を創った男  チンギス・ハン』が537回の連載を8月5日に終えました。堺屋氏は東大経済学部卒、通産官僚、経済企画庁長官を歴任しただけあって、モンゴル帝国が形成されていく中で、経済面にもしっかりと照準を当てわかりやすく書いています。

堺屋氏は、チンギス・ハンの「人間に差別なし、地上に境界なし」の理念をグローバリズムの先がけとして高く評価し、そこに21世紀の世界の未来を見ようとしています。

堺屋氏は、チンギス・ハンがどのような思想をもち、どのような人材を登用し、東西交易の商人や旅芸人から何をどのように学び取り、どのようにモンゴル帝国を広げていったかを、歴史的正確さに気をつけながら書いています。時には現代の世界や日本の政治経済と重ね合わせながら、時には日本の歴史と比較しながら、時には地図を系図をと、分かりやすく興味深く面白い歴史小説として書いています。

ユーラシア大陸を縦横無尽に走るモンゴル騎馬兵や、広大な草原の暮しのイメージがなかなかつかめずに、チンギスハンの映画も観たし、本も読んでみました。関口知宏の「中国鉄道大紀行」も大変役に立ちました。

  • 井上靖 『蒼き狼』 新潮文庫―――亡くなるまでひたすら敵を求め、侵略と略奪を繰り返したチンギスの征服欲はどこから来るのか。彼の内面の苦悩を突きとめながら、優れた為政者であり他面では非情冷酷な虐殺者としてのチンギスを、井上氏らしい格調高い文章で書いています。

  • 司馬遼太郎 『ペルシャの幻術師』 文春文庫―――この中に、西夏の李睨(リーシエン)公主の降伏を、司馬氏は40ページの短編「戈壁の匈奴」に書いています。5度目の西夏攻めでついに手に入れた西夏の女。「お前を得るために40年を費やした。世界を従えて、ついに西夏を得た。そのお前が、いまわしの前に居る」といったように、司馬氏はチンギスを性欲と好戦欲と略奪欲の人一倍激しい男として描いています。

  • 陳舜臣 『チンギス・ハーンの一族』 中公文庫

     1巻―― 「草原の覇者」  草原から世界帝国へ、殺戮の底に潜む英知

     2巻―― 「中原を征く 」  チンギスの息子たちの権謀術数と分裂の危機

     3巻―― 「滄海への道 」 骨肉の争いを制したフビライの野望

     4巻―― 「斜陽万里 」  王国の叛乱、フビライの死 帝国は終焉に向かう

  • 「中国の歴史」が分かる! 三笠文庫―― 殷の文明、秦の統一から激動の現代まで。複雑な中国史の全貌が分かりやすく書かれています。

面白い新聞小説は、毎朝の楽しみをもたらしてくれます。今度は北九州が舞台となった北方謙三『望郷の道』が始まりました。タイトルの筆の字体が東山魁夷の「道」を連想させ、それだけで気になっている小説です。

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