定刻通りに9時40分に関空に着き、残った€を両替して、スーツケースの宅配を頼み、身軽にして大阪経由で帰ることにしました。関空→福岡を変更したのは、途中下車で大阪市立美術館の「岸田劉生展」に行きたかったからです。
しかし、いざ天王寺に着くとそんなに時間がありません。伊丹空港発→福岡が3時20分。せっかくのゆったり旅をエピローグであわただしい旅に切り替えるには少し抵抗がありました。というより、なかなかペースが切り替えられなくて、結局透明エレベーターの中から美術館の森を見ただけで終わりました。
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パリの辛い記憶を書こうか書くまいか、ずいぶん考えましたが、やっぱりパリの事実として書いておきます。
オペラ座の開場には少し時間があったので、すぐ傍のレストランのテラスでオニオンスープを食べていました。歩道に張り出したテーブルの2列目で。
その時「!!!」と何かの言葉が発され目の前で、ボーイさんがアラブ系の老人を突き倒して、その老人は仰向けに倒れ、ワイングラスが割れて歩道に飛び散りました。ボーイさんは見向きもせずに店の中に入っていき、布巾を持って出てくるとワインで汚れたテーブルを拭きました。足元でその老人は立ち上がろうにもふらふらして立ち上がれないでいます。テラスで軽食を取っていた客はびっくりして固まってしまっていました。ボーイさんは冷ややかな顔で老人の襟首をつかむと、飛び散ったガラスの上を、片手でずるずるとまるで荷物を引きずるかのようにビルの壁際まで引きずって行きどさっと置きました。
見ていて震えが止まりませんでした。誰も止める人はいません。外国人の私はおろおろするばかりです。どんないきさつがあってこの暴力に及んだのかは見てはいません。ひょっとしたらお客さんに何か物乞いをしたのかもしれません。でもそれが日本だったらまずは口で注意するはずです。このお洒落なパリで暴力による冷たい「排除」が起きるとは。まるで人を物としか見ていないようなその行動に恐ろしさを感じました。そのあとはせっかくのオニオンスープももう喉を通りませんでした。
夫が「倒れた時に後の鉄柱で頭を打ったかもしれない、少し脳振盪を起こしているようだ・・・、後で病院に行くにもお金がいるだろう・・・」と、倒れている男の人のところに行ってユーロ札を手に握らせました。老人はお札を掴むのがやっとの動作でした。あの後重篤な状態に陥っていないことを祈っています。
ショックだったのは、テラスのお客さんはフランス人が多かったと思いますが、その人たちは何にも言わず何にもしなかったことです。その暴力に対して非難もせず、ただ見逃しているということは、このようなことが日常的に行われていることなのでしょうか。
華やかなパリの日向と日陰を見たようで、楽しい旅の途中にもちらちらとその老人の顔が浮かんでとても辛い気持ちになりました。フランスの複雑な移民問題を垣間見た思いでした。楽しかった旅の思い出とともにこの記憶はずっと残ると思います。
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パリの地下鉄をつなぐ地下道は、地上の道路みたいなもので迷路のようです。でもここに楽しみがあります。そこにはバイオリン、ギター、アコーディオンと楽器を一生懸命に奏でる人たちがいることです。そして必ず前にはお金を投げ入れる箱が置いてあります。たまには地下鉄の電車の中で乗客は演奏者と一緒に盛り上がることもあり、にぎやかな「地下鉄のメロディ」になります。
地下道で、30代半ばの女性が素晴らしいバイオリンを弾いていました。全身で表現している姿を見てプロだと感じました。パリの人は慣れているのでさっさと通り過ぎてしまいます。もったいないのでゆっくり歩いて通り過ぎましたが、こんな素晴らしい音楽をタダで・・・と思うと申し訳なくなって急いで引き返して10€を置くと、にっこり微笑んで急いでポケットにしまい、何度もうなずきながら弾いてくれたのがエルガーの「愛の挨拶」でした。後ろ髪を引かれる思いでを振り返ると又にっこり微笑んでくれました。音楽を通してちょっと心が触れ合った瞬間です。地下道の通路が共鳴箱の役割を果たし、ずーっと聞こえていました。素晴らしい音をありがとう!
やっぱりパリは、地上も地下も芸術で満ち溢れています。
民主主義を勝ち取るまでには長い歴史がありますね。
歴史をエピソード的に読むとよくわかり、楽しいのです。
今はハプスブルグの歴史を読んでいますが、
これがまた楽しいのです。
スペインとオーストリアに亘る帝国のことが、私にもわかるように
書かれて、テーマごとに有名な肖像画があるんです。
》kazuyoo60さん
すごく興味深い話ですね。初めて聞きました。
「人類みな兄弟」がいつの間にこんなに戦火を
上げるようになったのでしょう。
長い歴史、宗教などで考え方、行動の違いがあるのを感じます。
日本ではあまり考えられないボーイさんの行動。
世界に立ち向かう時の難しさはこんな違いからあるのでしょうか。
経由するならほんのちょっとでも観光できるといいのですが、
在職中はなかなかそうはいかないのが現実のようですね。
主婦から考えるともったいない気がします。
パリは今度が最後と思っていましたが、機会があるなら
何度でも…と言うのが本音です。
》mokaさん
世界を見るときは、その昔に狩猟民族だったのか農耕民族だったのかも影響してくるように思います。
それに人種、宗教、文化、政治経済が複雑に絡み合ってくるのでなかなか
地球はまとまりません。
でも根底に人間的な優しさや愛があれば、きっとうまくいくはずですよね。
先日何賞か忘れましたが今年の選ばれた作品を見ました
小さな兄弟のゴミ集積場だと思いますが悲しい目をして。
思わず涙が・・・のじーじでした。
この世に中、悲しい惨い世界がいっぱいで・・・・
それはそうと良い思い出もいっぱいで楽しい旅行をされ
じーじまでしっかり楽しませていただきました。
ありがとうございました。
今夜、こちらへ来てよかったです。
パリへの旅、ゆったりと個人で行かれた旅、一部拝見しました。
最初に9を拝見して、1、2と拝見しました。
9のアラブ系の老人の件のことは、読んでいて少々ショックでした。
でも事実を記事アップして下さりありがたく思います。
そういう差別や暴力はわたしも好きではありませんが・・・・・。
そういう事実もあるということなのですね。
それでも、外国へ一度だけ行けるのなら、チャンスがあるのなら、
わたしは、やはりフランスかイタリアへ行ってみたいです。
記事の2のスリの件も色んな人から聞いてはいましたが、やはり
実際にあるんだと思いました。
そういうマイナスの面、そしてプラスの魅力的な面、どちらも
フランス、パリの姿なのでしょうね。
また明日以降、chaguままさんのパリの旅のわたしの読んでいない
残りの記事も読んでみたいと思っています。
chaguままさん、ありがとうございます。
宗教の違いを超えてあのアルハンブラの建造物には侵しがたい歴史と技術がありました。
しばらくお休み・・・とのこと、また旅の虫が疼きだしたんですか?
》博多のじーじさん
戦争で人格が全く変わるとは聞いていますが、日常の路上で、一対一で向かい合った喧嘩でなく一方的に暴力で排除するなんて、日本人ではどうしても納得できないものがありました。
世界のいたるところで同じようなことが起きていると思うとつらいですね。
》浜辺の月さん
旅行記を読んでもらってありがとうございます。
そうですね~、イタリア、フランスはやはり何度でも行ってみたいところです。
歴史と文化の層が違うし、何度行ってもとてもとても満足はできないでしょうね。