自由、民主、人権、平和・・・人間が尊いものとして追求してきたものに、過去の独裁主義で対向し核までちらつかせて地球を震いあがらせる・・・。国外に避難する120万の人の列、これが21世紀の今起こっている現実です。
政治家、学者、知識人、マスメディア、市民が自由に発言し、誰もが情報を得るのは当然の日本ですが、情報が遮断されているロシア。プーチンさん支持が62%だって。正しい情報を届けたい!!!
過去に日本にもあったけど、情報操作は怖い!正確な情報が届かないと正常な判断ができず、とんでもない方向に取り返しのつかない所に行ってしまいます。
これも息をもつかず一気読み。棋士になるための「奨励会」には、無知な私にもそれほど心を掴む凄みがあったのです。
奨励会は、帯の『奨励会の厳しさは、産まれた川に命をかけて帰っていく鮭の姿に似ているかもしれない。6級という稚魚は一斉に川に放たれ、よろよろとそれでも懸命に海を目指して泳ぎ始める』『そんな彼らがまず出くわすのが21歳までに初段という関門である。そこをくぐり抜けた者だけが、自分が生まれた川に戻り遡上することを許され』て、さらに「26歳」という数字の非常な鉄の壁に立ち向かう、というのが端的に表しています。
プロローグは雑誌掲載の小さなモノクロ写真の解説から始まります。
『一人のセーター姿の青年ががっくりと首を落として座りこんでいる。場所は東京将棋会館4階の廊下の片隅である』。
奨励会の過酷な三段リーグの最終局に敗れ、26年の将棋生活に決別を覚悟した中座誠(ちゅうざまこと)は靴箱の前で帰り支度を始めます。そのときに「他の二人が負ければ、中座さんに上がり目があります」と声をかける人が・・・。
実際その通りになり、中座の全く予期していない四段昇段が確定したのです。その現実に腰が砕けその場にへたりこんだ姿がそのモノクロ写真だったのです。
『わずか一時間前までは挫折感や後悔や、容赦なく襲いかかってくる様々な感情を封じ込めようと懸命に唇を噛んでいた青年が実は勝ち残っていた、それはあまりにも残酷で皮肉でそれゆえに神々しい瞬間の映像』で、多くの人の心を震わせました。
「勝つも地獄、負けるも地獄」と呻吟した棋士がいました。仲間は苦労を共有しているだけに、勝っても心底喜べない苦しさ、それは紛れもなく奨励会三段リーグの厳しさの現実を的確に表現したものでしょう。
雑誌「将棋世界」の、長年編集長を務めた著者は、どうしても書かなければならないことがあると退職を決めます。
それは将棋棋士を夢見ながら志半ばで去っていった奨励会退会者たちを書くことでした。それがこの『将棋の子』になったのです。
本の裏カバーに『奨励会・・・。そこは将棋の天才たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る"トラの穴"だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ち構えている厳しく非常な生活を、優しく温かく見守る感動の一冊。』の紹介文があります。
第23回講談社ノンフィクション賞受賞作です。やはり将棋の『聖の青春』の著作もあります。