新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

指揮:エッシェンバッハ & 五嶋みどり

2023年05月16日 | 音楽
83歳の巨匠がベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団を率いて「アクロス福岡」に登場。そしてヴァイオリンはこの会場には12年ぶりという五嶋みどりさん。見逃すことなく3か月前にチケットを入手していました。
みどりさんの40周年を記念して出版された80ページほどの『道程』が全員に配られました。10歳で渡米しているのに素晴らしい文章力と構成です。
楽団もみどりさんも、パンデミック明けの初めての海外公演だそうで志気もあがっていました。
演奏開始の前にプレ・イベントとして、みどりさんと4名の楽団員とのトークショウがありとてもフレンドリーでした。

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静かに始まった4本のホルンから流れたメロディは「えっ?」。今でも口ずさむ「秋の夜半の~み空澄みて~」でした。確かに中学校の音楽の教科書に出ていました。
この静かな曲がウェ―バー:歌劇「魔弾の射手」序曲の主題だったことを初めて認識しました。おどろおどろしいタイトルとは正反対、美しいメロディーでした。
「魔弾の射手」は10分ほどの曲。この1曲で楽団のファンになりました。

みどりさんの出番はシューマン「ヴァイオリン協奏曲」。難曲だそうですが、どこが難曲なのかわからないまま、ただ美しい弦の音と技巧に吸い込まれました。以前読んだ本から、たぶん楽器はグァルネリ。ストラディヴァリウスとは相性が良くなかったようです。
この協奏曲も暗いイメージで、演奏者に過酷なアプローチを強いる曲だそうですが、そこを経験豊かな名手の演奏で聴く…というのが今回の目的でもあるようです。
プログラムの解説によると、シューマンの妻・クララは「この協奏曲は決して演奏してはならない」と家族に言い聞かせていたそうです。この2楽章の主題をモチーフに別のピアノ曲を書いた直後に入水自殺を図ったとかで・・・。


休憩間の後はブラームスが21年の歳月を費やしたという「交響曲第1」。
ベートーベンの9曲の交響曲に続く「第10交響曲がついに現れた!」と絶賛されるまでにはその時間と労苦が必要だったのです。
高らかに歌い上げるようなクライマックス。いい演奏会でした。
このエネルギーを受けて、しばらくは自分の心を前向きに維持できる気がします。

83歳のエッシェンバッハ氏は三つの曲とアンコール曲・ハンガリー舞曲の指揮の間、手すりに寄りかかることもなく、かくしゃくとして指揮をされました。すごい体力です。
そしてみどりさんのアンコール曲・無伴奏ヴァイオリンソナタ3番のラルゴの時は舞台の入り口に立ったまま聴いておられました。終わると拍手。巨匠がいかにみどりさんに敬意を払っているかが分かりました。みどりさんの腕前と巨匠の人間性を垣間見た時間でした。

上から3ランク目の席でも15000円。少し高いなとは思ったけど、満足度は100%。この組み合わせでもう1度聴くことはないかもしれません。




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