<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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2003年4月のある日。
バンコク経由ホーチミン行きのタイ航空のチケットを持って出発の準備をしていた私は旅行会社から突然の電話を受け取った。

「あのー、ホーチミンからの帰りの便ですが、お客さんの登場予定便がキャンセルされました。」
「え? なんでですの」
「乗る人が少ないので別便に振替ということで」
「そうなんですか。」
「そうなんです。」
「やっぱり、原因はあれですか。」
「あれです」

私は初めてのベトナム旅行の後、バンコクに3日ほど滞在する予定にしていた。
バンコクへの到着が日曜日だったので午前中の早い便を予約して午後からはチャトチャックにあるウィークエンドマーケットを訪れようと思っていたのだ。
でも、その午前の便がキャンセルになったという。
だから夕方の便に乗ってちょうだい、というのが旅行会社からの連絡なのであった。
仕方がない、ウィークエンドマーケットは今回は諦めよう。

で、その原因はその時香港を中心に世界中でアウトブレイクしていたSARSなのであった。

このように海外では「乗る人が少ないから」という理由でフライトが簡単にキャンセルされることがある。
ミャンマーを旅行していた時に最も注意すべき点として「フライトキャンセル」があるということを聞いていたが、ミャンマーではいつも同じ現地の旅行代理店でチケットや通訳のガイドさんを手配してもらっていたのでキャンセルに遭うこともなく列車の不通を除いてスムーズに旅をしていたのだが、まさかタイ航空のフライトでそんなことに遭遇するとは予想していなかった。

最近の日経の記事によると国土交通省は国内の航空会社に対しても搭乗客が少ない場合はフライトキャンセルを認める方向に入ったという。
これは驚きのニュースなのだ。

日本航空が数年前に経営破綻した時の理由の1つが「不採算路線の無理な運営」があった。
半官半民の日本航空は地元の有力者や財界、官僚などからの要求をANAのように簡単に断るわけに行かず、十分な旅客が確保できないであろうローカル路線を数多く運営していて、それが巨大な赤字を生んでいた。まるでJRになる寸前の国鉄のような状況になっていたのだ。
お客さんが数人であってもフライトキャンセルはできず空に近い状態でも東京や大阪と地方都市を無理から結んでいたのだ。
もちろん地方の地元では空路維持のために助成金などを出していたが、そんなものは焼け石に水なのでほとんど役にたたず、JAL経営破綻への未知をじわじわと侵攻し続けていたわけだ。

今回の国交省の方針見直しを受けるとローカル線を運行していても十分にお客が集まらない場合はフラントをキャンセルすることもできるのだという。
これは航空会社にとっては赤字フライトの削減になる一方、地方でのビジネスに影響がでることも必須だろう。

まさか私の経験したように出発前日になって、
「明日の朝のフライトキャンセルです」
とはならないと思うが、各航空会社はネット予約や代理店からの予約の集計をなんらかのルールを決めて搭乗客が集中するように工夫するに違いない。
ある意味、日本の空が海外と同じルールになるときが来たのかも知れず、それに対して日本独自の顧客サービスがどこまで工夫して色を出していくのか注目されるところなんだろう。

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