京都の老舗料理店「千花」の火災はダクトの掃除にガスバーナーを使っていたことが原因で燃え広がったのだという。
料亭のスタッフがダクトの中に溜まったカスをバーナーを使って焼いて処分しようとしてたようで、
「ン〜〜〜、なにも知らないということは恐ろしい」
とつくづく思ったのであった。
ダウト清掃での火災ということ昔携わった苦手な作業のことを思い出した。
当時勤めていた会社はエアフィルタメーカー傘下の建築設備の会社で、新築ビルディングの竣工検査と諸書類の作成をすること以外に時々メンテナンスの仕事が舞い込んできたのであった。
そのメンテナンスの仕事とはビルの地階に入った飲食店や新聞の印刷設備の排気設備のダクト清掃。
作業着にタオルのほっかむり、マスク着用と言った完全武装でダクトの点検口から頭を突っ込んで、こびりついた油汚れや、焦げカス、ホコリの塊などをケレンや箒を使って削り落とす作業だった。
もちろんかなり汚れる仕事だった。
仕事をした後は作業着がメリー・ポピンズに出てくる煙突掃除のダンサーのようになる過酷な作業で、できれば避けたい仕事なのであった。
そもそも自分の家の台所の換気扇さえ掃除したことがなかったのに、業務用或いは設備用の汚れ固まったダクトの清掃は3K以外のなにものでもなく、
「これは........大学出の仕事ではない」
と、こんな時だけ自分が大卒社員であることをやりたくない仕事を拒絶する理由にしたりなんかしていたのだ。
厨房のダクトは油汚れがダクト内部に付着堆積して塊となっていることがすくなくない。
またレンジの上部設置されたフードは油と脂が堆積して質の悪いグリス状になっていて、それをケレンでそぎ取り、ウェスで拭き取る。
吹きっ取った後は場所によってはペンキを塗ることもあり、周囲は汚れの匂いと有機溶剤の匂いで頭が賢くなりそうなほどの環境になっていた。
こういう環境ではもちろん炎を使ってはいけない。
そもそもダクトの清掃をするのは内部に溜まった汚れが排気気流の妨げになるのを防いだり、汚れそのものが引火または発火して火災になることを防ぐために行う。
厨房のフードには消火設備を装備したものもあるくらいで、行政のホームページでも、
「設備の清掃は専門知識を持った業者に依頼してください」
と書かれてもいる。
妙な作業をすると事故になったり、今回のように火災になるということもありえて、ダクトを清掃するということは見かけは決してかっこいい仕事ではないが、立派な技術職ということができるのだ。
若い頃は「こんな仕事二度とやるもんか」と思ったけれども、今になってみると設計やプランニングをするのには当時の経験をしているのとしていないのとでは雲泥の差があることを痛感している。
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