風が起きるのは、

第51話 風伯act.4―another,side story「陽はまた昇る」
午前1時、掌のなかの震動に瞳が開いた。
握りしめた携帯電話に着信ランプが瞬いて、優しい曲が一節流れる。
この曲は唯ひとり専用の着信音、微笑んで周太は画面を開いた。
From :宮田英二
Subject:ごめん
本 文 :遅くにごめん。今、戻りました。全て終わったけれど、藤岡が怪我をしたんだ。
だから今日は藤岡に付添って、学校に戻ろうと思う。ごめん、約束をしたのに、ごめん周太、赦してくれる?
あと、瀬尾に伝えて下さい。似顔絵そっくりでした。
本当に今、周太に逢いたい。
薄暗い部屋のベッドの中、想いつづる画面が静かに光っている。
この文面に今夜の、英二が見つめた現場と想いが伺われてしまう。
見えてしまう状況に、ため息のなか周太はつぶやいた。
「藤岡が、怪我をするなんて…」
藤岡は柔道のインターハイ出場者で、青梅署でも駐在所の柔道指導を担当している。
逮捕術も巧みで、体格が同じ位の周太は藤岡と術科で組むことも多い。
だから実力はよく知っている、素手なら滅多に藤岡は負けないはず。
それなのに、英二が付添うほどの怪我を負わされた。
…きっと凶器を振るわれたんだ、
おそらく強盗犯は、鉄製の凶器を持っている。
それは雲取山頂で被害者の応急処置を見たときに、周太も気がついた。
あのとき、被害者の傷を拭った清拭綿には、確かに鉄製の錆が付着していた。
いったい「鉄製」の凶器は、何だったのだろう?
そして心配になってしまう。
きっと光一は今、怒っているだろうことが解かるから。
光一は明るくて大らかに優しい、だから友達や知人も多くいる。
けれど本当に屈託なく話せる相手は稀で、それだけに心許した友人を大切に想う。
そんな友人の1人で同じ山ヤの藤岡を傷つけられたなら、光一が怒らない筈は無い。
しかも凶行は光一が何より大切にする「山」で行われた。
大切な友人と「山」を傷つけた存在を、光一が赦せるのだろうか?
「…ううん、きっと光一は…」
きっと光一は、何もせずには済まさない。
光一は大らかで純粋無垢、その分だけ怒りも純粋なままに苛烈で容赦ない。
いつもは飄々と淡白なだけに、その少ない逆鱗へ触れたら簡単には相手を赦さないだろう。
そんな光一を真正面から受けとめられる人は少なくて、英二しかいない。だからきっと今、英二自身も安らぎを求めている。
「…ん、逢いたいね?英二…」
顔を照らす画面に微笑んで、周太は返信ボタンを押した。
すこし考えながら指を動かして、想いを綴っていく。
T o :宮田英二
Subject:Re:ごめん
本 文 :おつかれさま、藤岡の怪我が心配です。付添ってあげてね、英二が一緒なら心強いと思うから。
英二と光一は大丈夫ですか?明日も忙しいだろうけれど、無理しないでね。
瀬尾に伝えておきます。それから、約束は、延期でも必ず守ってね。
読み直してから「送信」を押して、そっと携帯を閉じる。
そのまま起きあがりデスクライトを点けると、椅子に座って抽斗を開けた。
クリアファイルから書類を1通だし、その紙面へとペンを走らせていく。
すぐ書き上げて読み直すと、微笑んで周太はデスクライトを消した。

土曜の朝、食堂はいつもより人が少ない。
外泊は金曜の夜から許可されるから、初任総合だと所属署へ戻る者も多くなる。
だから英二と藤岡の不在も特別ではないし、今日が初めてでも無い。
けれど、やっぱり今朝は違う。
「湯原。逮捕されたんだってな、あの強盗犯、」
食事が始まるとすぐ、関根が口を開いた。
もうニュースになっているんだな?すこし微笑んで周太は頷いた。
「ん、昨夜のうちにね…それで、瀬尾の似顔絵とそっくりだった、って英二から伝言だよ、」
「よかった、すこしは役に立ったのなら良いな、」
嬉しそうに瀬尾が頷いてくれる、その笑顔が明るい。
似顔絵捜査官を目指す瀬尾にとって、今回の件は自信になるだろう。それが嬉しくて微笑んだ向かいで関根が笑った。
「すげえな、瀬尾。目撃者自身がよく覚えていない、ってくらいだったのに。よくソックリに描けるよな、」
「あのときは俺、埼玉県警の似顔絵もチェックしてあったんだよ。それをベースにして、あのひとの証言を加えて描いたんだ」
焼鮭を箸でほぐしながら、瀬尾は教えてくれる。
なんでもないふうに本人は話しているけれど、周太は感心して言った。
「それって、埼玉県警の似顔絵を正確に記憶している、ってことだよね?…自分で描けるくらい記憶するって、すごいね?」
「すごくないよ、簡単だよ?」
いつもの優しい笑顔で答えて瀬尾は、何げなく丼飯を口に運んでいる。
そんな様子に瀬尾は本当に「普通」だと思っているのだと、伺えてしまう。
やっぱり瀬尾は基礎能力が高くて、こんなふうに記憶力も優れている。そのことを本人は「普通」と思いこんでいるけれど。
…すごく優秀な叔父さんがいるから比べちゃって、自分は出来ない方って思いこんでるかな?
こういうタイプは自信を持つと抜群に伸びる。
きっと瀬尾は今回の件で自信を持てたら、似顔絵捜査官として能力を伸ばせるだろう。
本当にそうなって、すこしでも早く瀬尾の夢が叶うと良い、この先の5年間を希望した道に生きてほしい。
そして少しでも多くの時間を、似顔絵捜査官に見つめる夢に生きて、この5年の後の時にも支えとなるように。
そんな祈りを思う周太の斜向かいから、関根が呆れたように笑った。
「瀬尾?簡単だって思ってるの、今、おまえだけだぞ?」
「そうかな?でも講習会では俺以外にも、そういう人いたけど、」
バリトンボイスが普通に答えて、いつもどおり微笑んだ。
そんな瀬尾に場長の松岡が笑いかけた。
「そういう人って、現職の似顔絵捜査官の方達だろ?」
「うん、そうだよ、」
にっこり頷いて瀬尾は煮物を口に運んだ。
のんきに口を動かしている顔を見て、上野が素直に尋ねた。
「瀬尾は講習を受け始めて、まだ数ヶ月なんだろ?それで同じように出来るって、すごいんじゃないのか?」
「全然、同じじゃないよ?皆さん、本当に速くて巧いんだ、」
相変わらず何げない口調でバリトンボイスが笑っている。
そんな会話に隣から、内山がすこし驚いたよう話しかけてきた。
「あのさ、もしかして昨夜逮捕された強盗犯の似顔絵は、瀬尾が描いたのか?」
そういえば似顔絵の話は1斑の仲間と担当教官の遠野しか知らない。
きっと隣で聞いていて内山は驚いただろう、その問いかけに周太は微笑んで頷いた。
「ん、そうなんだ。このあいだ救助隊の訓練に参加させてもらった時に、瀬尾が描いたんだよ、」
「それが手配書に採用されていたんだ?すごいな、瀬尾、」
精悍な笑顔が率直に褒めてくれる。
褒められて少し照れくさげに瀬尾は、笑って口を開いた。
「すごくないよ。警視庁では他に無かったから、仕方なく使ってもらっただけだよ、」
ちょっと嬉しそうに笑って瀬尾は箸を動かしている。
その隣から関根が大きな目を温かに笑ませて、快活に言祝いだ。
「どっちにしてもな、すげえよ瀬尾。似顔絵捜査官の一歩だろうが?これ、とりあえずの祝いな、」
言いながら箸を動かして、瀬尾の皿にサラダのハムを置いた。
それへと優しい目が楽しげに笑んで、バリトンボイスが嬉しそうに笑った。
「ありがとう、関根くん。でもさ、どうせ祝うんなら俺、もっとガッツリしたもんが良いな、」
「おまえって結構、言うよなあ?いいよ、明日の昼飯おごってやんよ。成城の駅に待合わせでイイよな?」
楽しそうに答えながら、瀬尾の頭を小突いて関根が笑う。
小突かれて可笑しそうに笑うと、瀬尾は悪戯っ子なトーンで微笑んだ。
「成城で待合わせだなんて、フレンチにでも連れてってくれるの?意外だね、関根くん、」
「ばーか、お互い最寄駅なだけだろ?新宿に出て定食屋だよ、おまえって意外と食うしさ。だいたい、そういう店は俺は無理、」
笑って言い返しながら、関根は大きな口で丼飯を掻きこんだ。
そんな男っぽい仕草を見ながら周太は、ふと心配になって尋ねた。
「あのね、関根?お姉さんと一緒の時は、どんなお店に行ってる?」
「え、朝からその話題かよ?照れるってマジで、」
醤油差に手を伸ばしながら、照れくさげに関根の頬が赤らんでいく。
それを見て楽しげに上野が笑いかけた。
「土曜で休日なんだしさ、朝からだって良いだろ?すごい美人らしいじゃん、宮田の姉さん、」
「ああ、マジ美人。特に心が美人で、俺、ヤバい、もう今から緊張しちゃってヤバい、話題にするとか無理、」
ヤバいを2連発して、快活な笑顔が真赤になっていく。
ほんとうに関根は純情なんだな?そう見ている先で上野が人の好い顔で笑った。
「なにがそんなヤバいんだよ?関根って意外と純情だよな、今日は逢うんだろ?」
「そうだよ、だから今から緊張してんだろが?俺、マジで惚れちゃってんの、だからヤバいんだって、」
赤い顔で笑っている顔は本当に照れ臭げで、けれど幸せが温かい。
こんな貌で笑う関根と一緒に居たら、きっと英理の方も幸せなのだろう。
昨夜も英理は「どの服がいいかな?」とデートの装い相談をメールしてきた。
そんな様子に英理が、どれだけ関根と逢うことを楽しみにしているのかが良く解かる。
だからこそ今ちょっと訊いておきたいな?そんな考えにいる周太の隣から、松岡が温かな笑顔で促した。
「いいから関根、幸せな話を皆に聴かせろよ?どんな店に行くんだ?」
「なに、場長までかよ?あー、こういうのって俺、マジ初心者なんだからな?」
真赤な顔で観念したよう笑って、関根は片手に汁椀を持つと一気飲みした。
まるで日本酒でも呷るような豪快な仕草、それが関根は様になってカッコいい。
こういう男っぽいのは少し羨ましい、けれど自分は真似出来そうにないな?そう感心していると関根は口を開いた。
「この間はラーメン屋で昼、食ってさ。映画見て、英理さんが好きなカフェでお茶して、晩飯は居酒屋に行ったよ。酒は抜きだけどさ、」
やっぱり、そういうコースなんだ?
初デートでいきなりラーメン屋と居酒屋なのは、女の子にとってどうなのだろう?
しかも英理は所謂「お嬢さま」で一流企業の通訳兼エグゼクティブセレクタリーを務めるような女性。
そういう人を最初からラーメン屋に連れて行くのは、ちょっと珍しいのではないだろうか?
それくらいは奥手の周太にも解かってしまう、そして関根らしくて納得してしまう。
そんな「納得」な空気が関根を囲むなか、松岡が口を開いた。
「なあ、関根?最初のデート飯が、ラーメン屋ってこと?」
「おう、新宿に旨いとこあってさ。コッチでは俺、そこが一番好きだから行ったんだけど。なんか拙かった?」
「うーん、拙いって事も無いけれど、なあ?」
ちょっと困ったよう松岡が瀬尾に「なあ?」と呼びかけた。
それに困った笑顔で頷くと、瀬尾は悪戯っぽいトーンで関根に微笑んだ。
「ねえ、関根くん?女の子の好きな店って、解ってる?」
「え、…あ?」
快活な目が大きくなって「今、気がついた」という貌になっている。
そして心底から困った顔になって、関根は友人に手を合わせて懇願した。
「瀬尾、頼むっ、女の子の好きな店、今すぐ教えてくれよ?」
赤い顔が真剣になっている。
本当に関根は何の疑問も無く、英理をラーメン屋に連れて行ったのだろう。
きっと自分が東京で一番おいしいと思う店だから、英理にも食べさせてあげたかった。
それが解かって微笑ましい、瀬尾も同じよう微笑んで友人へと楽しげに尋ねた。
「場所は?」
「新宿で待合わせだけど、あとは特に決めてねえ、」
「ふーん?無計画のデートなんだ、じゃあ、彼女の好み教えてよ、」
口調はすこし揄うようで、けれど優しい笑顔で瀬尾が答えた。
そんな笑顔に関根は困ったように、率直に白状した。
「本と花が好きってことしか、まだ知らないんだ。で、飯はナイフとフォークのとこは俺が無理。箸のトコってある?」
こんなふうに関根は隠さず言える、それが好い所。
こういう関根を英理は好きなのだと周太は知っている、嬉しく微笑んで周太は口を開いた。
「あのね、お姉さんは、お茶席とか好きなんだ。和の情緒とか…きれいな日本庭園とか喜ぶと思うよ、あと美術館も好きみたい、」
時おりのメールや電話で話す事と川崎の家に来てくれた様子だと、そんな感じのはず。
思ったままを告げた周太に、手を合わせて関根は拝んでくれた。
「助かる、その情報。ありがとな、湯原。もっとアドバイスある?」
「ん、…そうだね、」
ちょっとこれは言い難いな?
けれど言っておかないと困るだろう、周太は正直に友達へ告げた。
「お母さんが、フレンチとかイタリアン、すごく好きなんだって。だから…ナイフとフォークは練習しておく方が、良いよ?」
もし結婚する前提の付合いなら、いずれ両親との会食があるだろう。
このまま苦手で済ませていたら、その時に関根自身が困るのは目に見えている。
もちろん英理は気にしないだろうけれど、母親はそうはいかない。それは親戚も同じだろう。
しかも婿入りなら尚更、宮田の家風に沿えと言われても関根には文句が言えない。
…お姉さんはそういう事も心配して、最初は断ったんだよね…好きだから、無理させたくなくて
ふたりは交際する前から、偶然顔を合わせることが多かった。
関根の勤務する交番前で、本屋で、コンビニで。ふたりは偶然の顔をした必然に何度も逢わされている。
まるで瞬間のような一時を重ねながら互いを見知って、メールをやり取りするようになって。
そんな時間とメール文に想い交すなか、聡明な英理なら関根との育ちの違いを真剣に考えただろう。
きっと英理は、伸びやかに闊達な育ちの関根に憧れて、明るい快活を愛している。
だからこそ英理は宮田の家の事情を押しつけたくない、そう考えても不思議は無いだろう。
それでも英二たちの父親は気にしないだろう、でも、母親の方は違うと周太も知っている。
…お母さん、吉村先生の病院で会ったとき、俺がお茶淹れるとこ見てたもの…
彼女は周太のことを「人としては及第点ね」と言ってくれるらしい。
それは周太の煎茶の淹れ方や、茶の点法で英二の父を持成した事を褒めてくれている。
だから逆に言えば、そうしたマナーや躾が無ければ「人としては落第点ね」と言われるのだろう。
それを解かっているだけに関根の今後が心配で、お節介かもしれないけれど言わせてもらった。
「湯原がそんなふうに言う、ってことはさ?宮田のお母さんが行く店って、高級なとこってこと?」
人の好い顔で首傾げて、上野が訊いてくる。
瀬尾と関根以外は英二の家を知らないから、すこし意外なのかもしれない?考えながら周太は答えた。
「ん、ファミレスとかでは無いと思うよ?」
「そうだよなあ、成城のお坊ちゃんだもんな、宮田も。瀬尾はそういうの強そう、」
にこにこと丸顔を笑わせて上野は納得している。
それに瀬尾は優しい笑顔で答えながら、揄うトーンに隠した誠実から訊いた。
「うん、家の辺りに店も多いからね。で、関根くん?そこんとこ覚悟は出来てるの?」
この「そこんとこ」は関根にとって苦手だろうと、ここにいる誰もが想像出来てしまう。
地方の町工場を営む関根の実家は大らかで、家計は苦しくても明るい堅実な家庭だと知っている。
そうした家庭で育った関根にとって、所謂ハイクラスの世界は縁遠い話だろうし興味も無かっただろう。
そんな関根にとって宮田の家に入ることは、未知の遠い国へ行くこと以上に勇気が要ることかもしれない。
それでも関根は英理の為に努力して超えるだろうな?そう見た先で大きな目はひとつ瞬いて、関根は瀬尾と周太を拝んだ。
「頼む、こんど俺にマナーってヤツを教えてくれ、」
ほら、関根は諦めないで、真直ぐに努力を選べる。
こんな友人が自分は好きだ、そして本当に身内になる可能性の未来予想が楽しくなる。
楽しいまま素直に頷いた周太の前で、瀬尾は悪戯っ子のまま愉快に笑んだ。
「いいよ、ただし授業料は高いからね?よろしく、関根くん、」
…なんだか結構スパルタ教育になりそうかも?
瀬尾は優しい笑顔だけれど、厳しい先生の気配が閃く。
けれど関根は、その分だけシッカリ教えて貰えそうだな?そう見ている隣で、内山が感心そうに口を開いた。
「瀬尾って顔も声も優しいのに、結構、言うんだよな?」
「ごめん。俺って本当は、結構辛口なんだよね、」
さらっと笑って返す瀬尾の笑顔も口調もどこか余裕があって、明るい大人っぽさがある。
やっぱり瀬尾は初任教養の時から変わった、ずっと大人びた奥行に余裕を感じられる。
そんな同期に自分は、すこし憧憬を見てしまう。
―…お父さまが亡くなられたショックで記憶が眠り始めたのでしょう。記憶は時間でもあります、そして時間には感情が絡んでいる。
ですから眠った時間の分だけ感情の記憶も眠って、精神の退行が起きる場合もあるんです。だから君は精神年齢が若いのです。
確かに、同じ年頃の友達と比べて幼いと、困ることも多いでしょうね?けれど、焦ることは何もありません、君も成長するのだから
そう吉村医師に言われた通り、焦ることは無いと思えるから素直に憧憬を持てる。
このあいだ奥多摩に行った時は、ふたりで吉村医師と話す時間は無かった。
そろそろ、ゆっくり聴いてほしいことが貯まってきたかもしれない?
…近いうちに、お会いしたいな?お茶菓子とコーヒー持って…救急法も少し教えてもらえるかな、
楽しい予定を考えて、ふと微笑がこぼれてしまう。
その予定の行間から不意に、ふっと風が吹くよう考えが浮んだ。
吉村医師に「ページが欠け落ちた本」のことを聴けるだろうか?
(to be continued)
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第51話 風伯act.4―another,side story「陽はまた昇る」
午前1時、掌のなかの震動に瞳が開いた。
握りしめた携帯電話に着信ランプが瞬いて、優しい曲が一節流れる。
この曲は唯ひとり専用の着信音、微笑んで周太は画面を開いた。
From :宮田英二
Subject:ごめん
本 文 :遅くにごめん。今、戻りました。全て終わったけれど、藤岡が怪我をしたんだ。
だから今日は藤岡に付添って、学校に戻ろうと思う。ごめん、約束をしたのに、ごめん周太、赦してくれる?
あと、瀬尾に伝えて下さい。似顔絵そっくりでした。
本当に今、周太に逢いたい。
薄暗い部屋のベッドの中、想いつづる画面が静かに光っている。
この文面に今夜の、英二が見つめた現場と想いが伺われてしまう。
見えてしまう状況に、ため息のなか周太はつぶやいた。
「藤岡が、怪我をするなんて…」
藤岡は柔道のインターハイ出場者で、青梅署でも駐在所の柔道指導を担当している。
逮捕術も巧みで、体格が同じ位の周太は藤岡と術科で組むことも多い。
だから実力はよく知っている、素手なら滅多に藤岡は負けないはず。
それなのに、英二が付添うほどの怪我を負わされた。
…きっと凶器を振るわれたんだ、
おそらく強盗犯は、鉄製の凶器を持っている。
それは雲取山頂で被害者の応急処置を見たときに、周太も気がついた。
あのとき、被害者の傷を拭った清拭綿には、確かに鉄製の錆が付着していた。
いったい「鉄製」の凶器は、何だったのだろう?
そして心配になってしまう。
きっと光一は今、怒っているだろうことが解かるから。
光一は明るくて大らかに優しい、だから友達や知人も多くいる。
けれど本当に屈託なく話せる相手は稀で、それだけに心許した友人を大切に想う。
そんな友人の1人で同じ山ヤの藤岡を傷つけられたなら、光一が怒らない筈は無い。
しかも凶行は光一が何より大切にする「山」で行われた。
大切な友人と「山」を傷つけた存在を、光一が赦せるのだろうか?
「…ううん、きっと光一は…」
きっと光一は、何もせずには済まさない。
光一は大らかで純粋無垢、その分だけ怒りも純粋なままに苛烈で容赦ない。
いつもは飄々と淡白なだけに、その少ない逆鱗へ触れたら簡単には相手を赦さないだろう。
そんな光一を真正面から受けとめられる人は少なくて、英二しかいない。だからきっと今、英二自身も安らぎを求めている。
「…ん、逢いたいね?英二…」
顔を照らす画面に微笑んで、周太は返信ボタンを押した。
すこし考えながら指を動かして、想いを綴っていく。
T o :宮田英二
Subject:Re:ごめん
本 文 :おつかれさま、藤岡の怪我が心配です。付添ってあげてね、英二が一緒なら心強いと思うから。
英二と光一は大丈夫ですか?明日も忙しいだろうけれど、無理しないでね。
瀬尾に伝えておきます。それから、約束は、延期でも必ず守ってね。
読み直してから「送信」を押して、そっと携帯を閉じる。
そのまま起きあがりデスクライトを点けると、椅子に座って抽斗を開けた。
クリアファイルから書類を1通だし、その紙面へとペンを走らせていく。
すぐ書き上げて読み直すと、微笑んで周太はデスクライトを消した。

土曜の朝、食堂はいつもより人が少ない。
外泊は金曜の夜から許可されるから、初任総合だと所属署へ戻る者も多くなる。
だから英二と藤岡の不在も特別ではないし、今日が初めてでも無い。
けれど、やっぱり今朝は違う。
「湯原。逮捕されたんだってな、あの強盗犯、」
食事が始まるとすぐ、関根が口を開いた。
もうニュースになっているんだな?すこし微笑んで周太は頷いた。
「ん、昨夜のうちにね…それで、瀬尾の似顔絵とそっくりだった、って英二から伝言だよ、」
「よかった、すこしは役に立ったのなら良いな、」
嬉しそうに瀬尾が頷いてくれる、その笑顔が明るい。
似顔絵捜査官を目指す瀬尾にとって、今回の件は自信になるだろう。それが嬉しくて微笑んだ向かいで関根が笑った。
「すげえな、瀬尾。目撃者自身がよく覚えていない、ってくらいだったのに。よくソックリに描けるよな、」
「あのときは俺、埼玉県警の似顔絵もチェックしてあったんだよ。それをベースにして、あのひとの証言を加えて描いたんだ」
焼鮭を箸でほぐしながら、瀬尾は教えてくれる。
なんでもないふうに本人は話しているけれど、周太は感心して言った。
「それって、埼玉県警の似顔絵を正確に記憶している、ってことだよね?…自分で描けるくらい記憶するって、すごいね?」
「すごくないよ、簡単だよ?」
いつもの優しい笑顔で答えて瀬尾は、何げなく丼飯を口に運んでいる。
そんな様子に瀬尾は本当に「普通」だと思っているのだと、伺えてしまう。
やっぱり瀬尾は基礎能力が高くて、こんなふうに記憶力も優れている。そのことを本人は「普通」と思いこんでいるけれど。
…すごく優秀な叔父さんがいるから比べちゃって、自分は出来ない方って思いこんでるかな?
こういうタイプは自信を持つと抜群に伸びる。
きっと瀬尾は今回の件で自信を持てたら、似顔絵捜査官として能力を伸ばせるだろう。
本当にそうなって、すこしでも早く瀬尾の夢が叶うと良い、この先の5年間を希望した道に生きてほしい。
そして少しでも多くの時間を、似顔絵捜査官に見つめる夢に生きて、この5年の後の時にも支えとなるように。
そんな祈りを思う周太の斜向かいから、関根が呆れたように笑った。
「瀬尾?簡単だって思ってるの、今、おまえだけだぞ?」
「そうかな?でも講習会では俺以外にも、そういう人いたけど、」
バリトンボイスが普通に答えて、いつもどおり微笑んだ。
そんな瀬尾に場長の松岡が笑いかけた。
「そういう人って、現職の似顔絵捜査官の方達だろ?」
「うん、そうだよ、」
にっこり頷いて瀬尾は煮物を口に運んだ。
のんきに口を動かしている顔を見て、上野が素直に尋ねた。
「瀬尾は講習を受け始めて、まだ数ヶ月なんだろ?それで同じように出来るって、すごいんじゃないのか?」
「全然、同じじゃないよ?皆さん、本当に速くて巧いんだ、」
相変わらず何げない口調でバリトンボイスが笑っている。
そんな会話に隣から、内山がすこし驚いたよう話しかけてきた。
「あのさ、もしかして昨夜逮捕された強盗犯の似顔絵は、瀬尾が描いたのか?」
そういえば似顔絵の話は1斑の仲間と担当教官の遠野しか知らない。
きっと隣で聞いていて内山は驚いただろう、その問いかけに周太は微笑んで頷いた。
「ん、そうなんだ。このあいだ救助隊の訓練に参加させてもらった時に、瀬尾が描いたんだよ、」
「それが手配書に採用されていたんだ?すごいな、瀬尾、」
精悍な笑顔が率直に褒めてくれる。
褒められて少し照れくさげに瀬尾は、笑って口を開いた。
「すごくないよ。警視庁では他に無かったから、仕方なく使ってもらっただけだよ、」
ちょっと嬉しそうに笑って瀬尾は箸を動かしている。
その隣から関根が大きな目を温かに笑ませて、快活に言祝いだ。
「どっちにしてもな、すげえよ瀬尾。似顔絵捜査官の一歩だろうが?これ、とりあえずの祝いな、」
言いながら箸を動かして、瀬尾の皿にサラダのハムを置いた。
それへと優しい目が楽しげに笑んで、バリトンボイスが嬉しそうに笑った。
「ありがとう、関根くん。でもさ、どうせ祝うんなら俺、もっとガッツリしたもんが良いな、」
「おまえって結構、言うよなあ?いいよ、明日の昼飯おごってやんよ。成城の駅に待合わせでイイよな?」
楽しそうに答えながら、瀬尾の頭を小突いて関根が笑う。
小突かれて可笑しそうに笑うと、瀬尾は悪戯っ子なトーンで微笑んだ。
「成城で待合わせだなんて、フレンチにでも連れてってくれるの?意外だね、関根くん、」
「ばーか、お互い最寄駅なだけだろ?新宿に出て定食屋だよ、おまえって意外と食うしさ。だいたい、そういう店は俺は無理、」
笑って言い返しながら、関根は大きな口で丼飯を掻きこんだ。
そんな男っぽい仕草を見ながら周太は、ふと心配になって尋ねた。
「あのね、関根?お姉さんと一緒の時は、どんなお店に行ってる?」
「え、朝からその話題かよ?照れるってマジで、」
醤油差に手を伸ばしながら、照れくさげに関根の頬が赤らんでいく。
それを見て楽しげに上野が笑いかけた。
「土曜で休日なんだしさ、朝からだって良いだろ?すごい美人らしいじゃん、宮田の姉さん、」
「ああ、マジ美人。特に心が美人で、俺、ヤバい、もう今から緊張しちゃってヤバい、話題にするとか無理、」
ヤバいを2連発して、快活な笑顔が真赤になっていく。
ほんとうに関根は純情なんだな?そう見ている先で上野が人の好い顔で笑った。
「なにがそんなヤバいんだよ?関根って意外と純情だよな、今日は逢うんだろ?」
「そうだよ、だから今から緊張してんだろが?俺、マジで惚れちゃってんの、だからヤバいんだって、」
赤い顔で笑っている顔は本当に照れ臭げで、けれど幸せが温かい。
こんな貌で笑う関根と一緒に居たら、きっと英理の方も幸せなのだろう。
昨夜も英理は「どの服がいいかな?」とデートの装い相談をメールしてきた。
そんな様子に英理が、どれだけ関根と逢うことを楽しみにしているのかが良く解かる。
だからこそ今ちょっと訊いておきたいな?そんな考えにいる周太の隣から、松岡が温かな笑顔で促した。
「いいから関根、幸せな話を皆に聴かせろよ?どんな店に行くんだ?」
「なに、場長までかよ?あー、こういうのって俺、マジ初心者なんだからな?」
真赤な顔で観念したよう笑って、関根は片手に汁椀を持つと一気飲みした。
まるで日本酒でも呷るような豪快な仕草、それが関根は様になってカッコいい。
こういう男っぽいのは少し羨ましい、けれど自分は真似出来そうにないな?そう感心していると関根は口を開いた。
「この間はラーメン屋で昼、食ってさ。映画見て、英理さんが好きなカフェでお茶して、晩飯は居酒屋に行ったよ。酒は抜きだけどさ、」
やっぱり、そういうコースなんだ?
初デートでいきなりラーメン屋と居酒屋なのは、女の子にとってどうなのだろう?
しかも英理は所謂「お嬢さま」で一流企業の通訳兼エグゼクティブセレクタリーを務めるような女性。
そういう人を最初からラーメン屋に連れて行くのは、ちょっと珍しいのではないだろうか?
それくらいは奥手の周太にも解かってしまう、そして関根らしくて納得してしまう。
そんな「納得」な空気が関根を囲むなか、松岡が口を開いた。
「なあ、関根?最初のデート飯が、ラーメン屋ってこと?」
「おう、新宿に旨いとこあってさ。コッチでは俺、そこが一番好きだから行ったんだけど。なんか拙かった?」
「うーん、拙いって事も無いけれど、なあ?」
ちょっと困ったよう松岡が瀬尾に「なあ?」と呼びかけた。
それに困った笑顔で頷くと、瀬尾は悪戯っぽいトーンで関根に微笑んだ。
「ねえ、関根くん?女の子の好きな店って、解ってる?」
「え、…あ?」
快活な目が大きくなって「今、気がついた」という貌になっている。
そして心底から困った顔になって、関根は友人に手を合わせて懇願した。
「瀬尾、頼むっ、女の子の好きな店、今すぐ教えてくれよ?」
赤い顔が真剣になっている。
本当に関根は何の疑問も無く、英理をラーメン屋に連れて行ったのだろう。
きっと自分が東京で一番おいしいと思う店だから、英理にも食べさせてあげたかった。
それが解かって微笑ましい、瀬尾も同じよう微笑んで友人へと楽しげに尋ねた。
「場所は?」
「新宿で待合わせだけど、あとは特に決めてねえ、」
「ふーん?無計画のデートなんだ、じゃあ、彼女の好み教えてよ、」
口調はすこし揄うようで、けれど優しい笑顔で瀬尾が答えた。
そんな笑顔に関根は困ったように、率直に白状した。
「本と花が好きってことしか、まだ知らないんだ。で、飯はナイフとフォークのとこは俺が無理。箸のトコってある?」
こんなふうに関根は隠さず言える、それが好い所。
こういう関根を英理は好きなのだと周太は知っている、嬉しく微笑んで周太は口を開いた。
「あのね、お姉さんは、お茶席とか好きなんだ。和の情緒とか…きれいな日本庭園とか喜ぶと思うよ、あと美術館も好きみたい、」
時おりのメールや電話で話す事と川崎の家に来てくれた様子だと、そんな感じのはず。
思ったままを告げた周太に、手を合わせて関根は拝んでくれた。
「助かる、その情報。ありがとな、湯原。もっとアドバイスある?」
「ん、…そうだね、」
ちょっとこれは言い難いな?
けれど言っておかないと困るだろう、周太は正直に友達へ告げた。
「お母さんが、フレンチとかイタリアン、すごく好きなんだって。だから…ナイフとフォークは練習しておく方が、良いよ?」
もし結婚する前提の付合いなら、いずれ両親との会食があるだろう。
このまま苦手で済ませていたら、その時に関根自身が困るのは目に見えている。
もちろん英理は気にしないだろうけれど、母親はそうはいかない。それは親戚も同じだろう。
しかも婿入りなら尚更、宮田の家風に沿えと言われても関根には文句が言えない。
…お姉さんはそういう事も心配して、最初は断ったんだよね…好きだから、無理させたくなくて
ふたりは交際する前から、偶然顔を合わせることが多かった。
関根の勤務する交番前で、本屋で、コンビニで。ふたりは偶然の顔をした必然に何度も逢わされている。
まるで瞬間のような一時を重ねながら互いを見知って、メールをやり取りするようになって。
そんな時間とメール文に想い交すなか、聡明な英理なら関根との育ちの違いを真剣に考えただろう。
きっと英理は、伸びやかに闊達な育ちの関根に憧れて、明るい快活を愛している。
だからこそ英理は宮田の家の事情を押しつけたくない、そう考えても不思議は無いだろう。
それでも英二たちの父親は気にしないだろう、でも、母親の方は違うと周太も知っている。
…お母さん、吉村先生の病院で会ったとき、俺がお茶淹れるとこ見てたもの…
彼女は周太のことを「人としては及第点ね」と言ってくれるらしい。
それは周太の煎茶の淹れ方や、茶の点法で英二の父を持成した事を褒めてくれている。
だから逆に言えば、そうしたマナーや躾が無ければ「人としては落第点ね」と言われるのだろう。
それを解かっているだけに関根の今後が心配で、お節介かもしれないけれど言わせてもらった。
「湯原がそんなふうに言う、ってことはさ?宮田のお母さんが行く店って、高級なとこってこと?」
人の好い顔で首傾げて、上野が訊いてくる。
瀬尾と関根以外は英二の家を知らないから、すこし意外なのかもしれない?考えながら周太は答えた。
「ん、ファミレスとかでは無いと思うよ?」
「そうだよなあ、成城のお坊ちゃんだもんな、宮田も。瀬尾はそういうの強そう、」
にこにこと丸顔を笑わせて上野は納得している。
それに瀬尾は優しい笑顔で答えながら、揄うトーンに隠した誠実から訊いた。
「うん、家の辺りに店も多いからね。で、関根くん?そこんとこ覚悟は出来てるの?」
この「そこんとこ」は関根にとって苦手だろうと、ここにいる誰もが想像出来てしまう。
地方の町工場を営む関根の実家は大らかで、家計は苦しくても明るい堅実な家庭だと知っている。
そうした家庭で育った関根にとって、所謂ハイクラスの世界は縁遠い話だろうし興味も無かっただろう。
そんな関根にとって宮田の家に入ることは、未知の遠い国へ行くこと以上に勇気が要ることかもしれない。
それでも関根は英理の為に努力して超えるだろうな?そう見た先で大きな目はひとつ瞬いて、関根は瀬尾と周太を拝んだ。
「頼む、こんど俺にマナーってヤツを教えてくれ、」
ほら、関根は諦めないで、真直ぐに努力を選べる。
こんな友人が自分は好きだ、そして本当に身内になる可能性の未来予想が楽しくなる。
楽しいまま素直に頷いた周太の前で、瀬尾は悪戯っ子のまま愉快に笑んだ。
「いいよ、ただし授業料は高いからね?よろしく、関根くん、」
…なんだか結構スパルタ教育になりそうかも?
瀬尾は優しい笑顔だけれど、厳しい先生の気配が閃く。
けれど関根は、その分だけシッカリ教えて貰えそうだな?そう見ている隣で、内山が感心そうに口を開いた。
「瀬尾って顔も声も優しいのに、結構、言うんだよな?」
「ごめん。俺って本当は、結構辛口なんだよね、」
さらっと笑って返す瀬尾の笑顔も口調もどこか余裕があって、明るい大人っぽさがある。
やっぱり瀬尾は初任教養の時から変わった、ずっと大人びた奥行に余裕を感じられる。
そんな同期に自分は、すこし憧憬を見てしまう。
―…お父さまが亡くなられたショックで記憶が眠り始めたのでしょう。記憶は時間でもあります、そして時間には感情が絡んでいる。
ですから眠った時間の分だけ感情の記憶も眠って、精神の退行が起きる場合もあるんです。だから君は精神年齢が若いのです。
確かに、同じ年頃の友達と比べて幼いと、困ることも多いでしょうね?けれど、焦ることは何もありません、君も成長するのだから
そう吉村医師に言われた通り、焦ることは無いと思えるから素直に憧憬を持てる。
このあいだ奥多摩に行った時は、ふたりで吉村医師と話す時間は無かった。
そろそろ、ゆっくり聴いてほしいことが貯まってきたかもしれない?
…近いうちに、お会いしたいな?お茶菓子とコーヒー持って…救急法も少し教えてもらえるかな、
楽しい予定を考えて、ふと微笑がこぼれてしまう。
その予定の行間から不意に、ふっと風が吹くよう考えが浮んだ。
吉村医師に「ページが欠け落ちた本」のことを聴けるだろうか?
(to be continued)
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