萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

紅葉の深夜

2013-11-24 01:18:08 | お知らせ他


近場の城址公園は楓も紅葉を迎えていました。
なんとなく行ったんですけどね、思ったより綺麗で嬉しかったです。
で、今はAesculapius「Manaslu21」加筆校正中、寝落ちするまで書こっかなてトコです、笑

真夜中の休憩合間に、



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk 居酒屋某夜3―Side Story act.5

2013-11-23 22:10:16 | short scene talk SS
未来夜景@居酒屋、交錯



Short Scene Talk 居酒屋某夜3―Side Story act.5

「小嶌さん柚子ので周太がオレンジソーダな、倉田先輩はいつものジントニック?」
「あたり、お願いね?」
「宮田さん、ノンアルコールカクテルはここです、なんにしますか?」
「じゃあこれで(笑顔)」
「バージンメアリーですね、トマトジュース好きなんですか?」
「うん(笑顔)(やっぱコイツは普通に言えちゃうんだよな?でも周太が赤くなった可愛い、萌)」
「…(バ…ってまえにうちやまが真赤になったやつだよね光一からかって…いまはおれも意味わかっちゃう、羞)」
「お、周太もしかして今のバージンで赤くなってんだ?やっぱ初心可愛いよな、笑」
「…きにしないでおれのことは、それよりはやくちゅうもんしなよけんや?」
「いまタッチパネルしてるよ、笑」
「(なんかじゃれてる二人、なんか嫌だな、周太には言えないけど、泣 )」
「なんか手塚くんと湯原くんっていいコンビよね、可愛い、笑 宮田さん、湯原くん学校の外でもこんな感じですか?」
「仲良いヤツとだとそうですね、(笑顔)(っていうか賢弥がコンビってナニそれガッコでこんなじゃれてんのかよ周太、泣)」
「先輩、宮田くんと二人だと湯原くん、もっと可愛いんですよ?ね、宮田くん、」
「うん、そうだね(笑顔)(美代さんナイスフォロー、ほんと良い子だよな空気読めるっていうかさ?さすが光一の幼馴染だ、)」
「…そういうの恥ずかしくなるから、ね、美代さん?」
「あら、ほんとのコトだし仲良しは良い事よ?」
「ふふっ、小嶌さんと湯原くんって双子の姉弟みたいね?宮田さんも思うでしょ、」
「はい、似てるなって友達も言いますね、(笑顔)(それが寂しい時もあるし嫉妬もするんだけどね、)」
「やっぱ小嶌さんと周太ってお似合いですよね?なんで恋人にならんのか不思議、宮田さん的にどうすか?」
「そうだね、(笑顔)(余計なこと言うなバカ賢弥黙れ、)」




昨日UPした英二@東大農学部飲み会の続きです。

いま第71話「杜翳5」加筆ほぼ終わりました、読み直しながら校正する予定です。
そのあとAesculapius「Manaslu21」書いて、ここんとこUP順延中の不定期連載かなと。

取り急ぎ、




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第71話 杜翳act.5―another,side story「陽はまた昇る」

2013-11-23 12:10:04 | 陽はまた昇るanother,side story
And think ye not with radiance more divine 瞬間の再会



第71話 杜翳act.5―another,side story「陽はまた昇る」

『 La chronique de la maison 』

全文フランス語のミステリー小説を祖父は書き遺した。

パリ郊外の閑静な邸宅に響いた2発の銃声。
そして隠匿される罪と真相、生まれていく嘘と涙と束縛のリンク。
そんな物語を披く詞書と贈り相手に向けたサインが意識ゆすらせ、今この窓辺に想う。

“Pour une infraction et punition, expiation” 罪と罰、贖罪の為に
“Je te donne la recherche” 探し物を君に贈る 

あの言葉たちが示す真実はどこにある?

「英二なら解ったでしょう?お祖父さんがなぜ小説を書いたのか…書かれたすべての証拠もあること、」

穏やかな声が自分の唇から告げて、切長い瞳が自分を映す。
父とよく似た瞳は真直ぐ自分を見つめて、けれど微笑の色彩は父と違う。
見つめあう静謐に木洩陽ゆれてダークブラウンの髪を艶めかす、その端整な微笑に周太は問いかけた。

「ね、英二…言わない事で俺を護れるって想ってくれてるのでしょう?」

問いかけて、けれど白皙の貌は動かない。
この貌から本音を惹きだしたい、言わせてあげたい。
そして少しでも分け合いたくて祈るよう周太は笑いかけた。

「秘密を背負わせてごめんね、ありがとう英二…でもね?」

見つめて、けれど切長い瞳は微笑の紗幕に本音を隠す。
この紗幕を払ってしまいたい、そう願うまま白皙の頬やわらかに引っ叩いた。

ぱちん、

「あっ、」

軽い音、けれど瞳の紗幕が落される。
長い睫ひとつ瞬いて切長い瞳が途惑う、その表情が可愛い。

―ほら、英二ってこんな貌もあるんだよね…子供みたいに素直な貌、

端整な貴公子のような美貌の英二、けれど素の貌は純粋に愛おしい。
こんな貌を知っているから憎めくて許してしまいたくなる、そんな相手に周太は笑った。

「英二、嘘を吐かないでって前も言ったよね、さっきも言ったでしょう?家族に秘密は要らないの、なのに嘘吐いたからおしおき、」

おしおき、だなんて本当に子供に話すみたい?
こんな言い方は大人の男に失礼だろう、それでも言ってあげたい。

―だって英二は子供の頃にきちんと叱られていないから…お母さんにも、お父さんにも、

きっと祖母の顕子は叱っていただろう、検事だったという祖父も孫息子に向きあったろう。
それでも両親と祖父母は違う、この違いのまま擦違う哀しみは英二のなかで拭えない。
だから少しでも自分が向きあいたい、そんな願いの真中で幸せな笑顔ほころんだ。

「おしおきって良いな、ね、周太?もっと俺にお仕置きして、俺の女王さま?」

なんか「おしおき」の意味が違う気がする?
そんな困惑かすめて、けれど笑顔が嬉しくて周太も笑った。

「そんな喜んじゃったら、おしおきにならないよ?…英二ってほんとに困るね、」
「周太に困ってもらうって俺、なんか嬉しいな、」

嬉しそうに笑ってブランケットごと抱きしめてくれる。
切長い瞳は底から明るく、真直ぐ綺麗に微笑んだ。

「周太、たしかに俺は嘘吐きな男だよ?でも周太への気持ちは嘘なんて一つも無い、絶対の約束も今だって俺は本気だ、」

嘘を吐いている、けれど気持に嘘は吐いていない。

こんな台詞は少し狡いのかもしれない、けれど本音だと解かる。
そして素顔の言葉だと解かるから受けとめたい、そんな願いに綺麗な低い声が響いた。

「自分の気持ちに馬鹿正直だから俺は光一のことも周太に話したんだ、そんな俺だから周太こそ独り抱え込んで病気になったんだろ?
もし少しでも俺を本気で好きだって想ってくれるなら周太、俺に吐きだしてよ?苦しいことも涙も何でも周太の運命に俺を巻き込んでほしい、」

低く響く声の想いは見つめる眼差しも告げてくる。
後悔も願いも偽らない、そのままに同じ時を生きようと願ってくれる。
共に泣いても生きたいと笑って、そんな瞳は自分を映したまま言った。

「周太、首を振って答えて?言葉にすれば違反だろうから、首を振って答えてくれるだけで良い、」

言葉にすれば規律違反になる、そんな職務と立場に自分たちは立っている。
それは違う部署でも同じ組織なら同じだろう、この現実ごと英二が微笑んだ。

「周太、SATの訓練は喘息にきついだろ?」

ことん、鼓動に敲かれ壁は破られる。

問いかけられた真中を切長い瞳が映りこむ。
その眼差しが懐かしい俤そっくりで、鏡のよう願いが反射する。

『家族に秘密は要らない』

さっき自分が告げた願いは父に叫びたい想い。
その言葉が父と同じ眼差しに微笑んで問いかける、その言葉に答えが言えない。

―もうSATの守秘義務を宣誓したのに…俺がいちばん嘘吐きだ、ね、

Yes、No、どちらを答えても職務違反には変わりない。
けれど答えなければ告げた願いに嘘吐くことになる。
義務と願い、この狭間に竦んだ自責から涙こぼれた。

「…英二、俺、」
「ダメだよ周太、言葉にしたら違反だろ?」

切長い瞳が笑って長い指が唇ふれてくる。
ふれる温もりに声を止められたまま綺麗な低い声が笑ってくれた。

「約束だよ、周太。俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる、この約束を喜んでくれるなら頷いて?」

SATから、

そう告げられる言葉は言えない秘密ごと約束してくれる。
いま互いに秘密を抱いたまま見つめあう、それでも約束は結べる?

「晉さんの小説のことも親戚関係のことも、俺は周太に何も応えないし誰にも言わない、今はね?だけど時が来たら話したいよ、
その時が来るって信じてくれるなら今の約束に頷いて?俺が周太をSATから攫っても良いって許可して命令してよ、俺の女王さま?」

約束は受けとっても赦される?

家族なら秘密は要らない、そう願いながら自分こそ秘密を抱えこむ。
こんな自分こそ本当はいちばん嘘吐き、そんな自分だから英二の沈黙を破れない。
何も言わせてあげられない、共に背負うことも出来ない、けれど約束を頷くことは赦される?

「…さらって?」

赦されるなら頷きたい、そんな想いに言葉が動く。
唯ひと言に願い見あげる真中で白皙の貌は幸せに笑ってくれた。

「絶対に攫いに行くよ、周太?ちゃんと周太のこと攫うから、そしたら俺の嫁さんになってくれな?」

嫁になってくれ、だなんて男が男に言われたら怒るだろう。
こんな申し出を受けるだなんて一年前の自分なら想像つかない。
それでも今、この声に眼差しに言われる自分は嬉しくて、素直な想い微笑んだ。

「その約束ほんとうなら英二…きすして?」

約束は、叶う時まで「ほんとう」とは言えないだろう。
それでも約束を願う今の瞬間が真実なら「ほんとう」だと喜びたい。
そんな願いと見あげる木洩陽はダークブラウンの髪を黄金に梳く、この光彩が懐かしい。
金色ひるがえる森に秋は輝いた、あの幸福な時間に微笑んだ真中でまばゆい笑顔が接吻た。

「絶対の約束だよ、周太?大好きだ、俺の未来の花嫁さん、」

未来、そう告げられて信じたくなる。
約束の時は未だ来ない、それでも今この瞬間に信じたい。
この願いに重なる唇は深い森の香に温まる、その温もり微笑んだ狭間きれいな声が囁いた。

「…周太、絶対の約束ならキスだけじゃないよな?」

とくん、

鼓動ひとつ響いて、囁きの吐息が唇ふれる。






(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Books XI[Spots of Time] 」】

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk 居酒屋某夜2―Side Story act.4

2013-11-22 07:40:03 | short scene talk SS
未来夜景@居酒屋、ひとりごと



Short Scene Talk 居酒屋某夜2―Side Story act.4

「あ、オーダーしよう?手塚くん、メニューとって、」
「ほい、小嶌さん、」
「ありがとう、湯原くんと宮田くんは何にする?」
「ん、そうだね…美代さんと英二は決まった?」
「私は柚子のにしようかな、」
「俺、周太と同じにしようかな?(笑顔)(美代さんナイスフォローありがとうお蔭で周太とメニュー越しにくっつけるよ?喜)」
「ん…でもおれよくわからないんだけど(おなじってなんか照れちゃう皆の前だしどうしよう、照)」
「じゃあ俺が決めてあげるね周太?(笑顔)(アルコール入りのにして酔っぱらわせよっと先に連れて帰る口実になるよな計画万全)」
「…はいおねがいします、照」
「へえ?ほんと宮田さんって周太の保護者なんだな、ガッコじゃ周太ってシッカリしてんのに、笑」
「俺、このオレンジのにする、(頼ってばっかじゃ駄目だよね自分で決めないと、俺も大人なんだし)」
「え、(周太俺が選ぶのじゃ嫌だったのか、泣 っていうか賢弥またおまえが余計なこと言うからだ邪魔すんな、怒)」




昨日掲載した続き、都内某所にてのワンシーン2です、笑

Aesculapius「Manaslu20」草稿UPしてあります、加筆校正3倍くらいになる予定です。
第71話「杜翳4」加筆終わっています、もう1回読み直して校正ちょっとするつもりです。
それ2つ終わったら第71話か短編か、久しぶりのか、気が向いたの掲載します、笑





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk 居酒屋某夜1―Side Story act.3

2013-11-21 21:20:47 | short scene talk SS
未来夜景@居酒屋



Short Scene Talk 居酒屋某夜1―Side Story act.3

「じゃ、俺と宮田さんでコッチ座りましょう、周太ソッチで3人でも良い?」
「(俺は嫌だ、)」
「ん、俺あんま大きくないし、3人できつくないと思うよ?…倉田先輩、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫よ?どう座ろっか?」
「倉田先輩は奥にどうぞ、私は入り口近くがいいんで、」
「お、小嶌さんまた料理のコト店員さんに聴くんだ?」
「うん、商品開発のヒントがもらえるかもしれないし、」
「っ、(待って美代さんそれだと周太がセンターに)」
「じゃあ周太が真中な?両手に花って感じだな、ははっ、笑」
「っ、(ふざけんな賢弥ナンデ周太をはさむんだよ俺とオマエの中間点前になってんだろ半分コとか嫌だって周太なに照れてるの?泣)」
「…賢弥、りょうてにはなとかはずかしいよ?そんなんじゃないし(英二にまた誤解させちゃう、困)」
「あははっ、こんなことくらいで照れるなよ、周太?倉田先輩、周太って可愛いでしょ?」
「(だから余計なこと話ふるなよ賢弥、怒)」
「湯原くんは可愛いって評判なのよね、笑 結構ねらってる子もいるのよ?保護者として宮田さん的にどうですか?」
「モテますね周太は、可愛いから(笑顔)(…やっぱ狙われてるんだ周太どうしよう俺的にどうよって言われても、困泣)」



昨日掲載した続き、都内某所にてのワンシーンです、笑

第71話「杜翳4」加筆校正ほぼ終わりです、あと1回読み直して校正ちょっとします。
このあとAesculapius「Manaslu20」or短編ほかを考えています、



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第71話 杜翳act.4―another,side story「陽はまた昇る」

2013-11-21 08:30:51 | 陽はまた昇るanother,side story
With those two dear ones ふたり、



第71話 杜翳act.4―another,side story「陽はまた昇る」

木洩陽あわい光に時間が見えて、すこし嬉しくなる。

きらきら揺れる梢やわらかな陽光ふらす、まだ午前中だと煌めきがガラス越しに告げてくれる。
まだ夕食までの時間は今の時間までよりずっと長い、今日は夕食まで一緒にいると約束してもらえた。
この約束は護ってもらえると解かるから嬉しい、嬉しくて見あげる梢に周太は微笑んで、けれど溜息ひとつ零れた。

―でも英二なにも言ってくれなかった、ね…

優しい嘘なんて吐かないで?

そう自分は願って、けれど願いの答えはまだくれない。
我儘を言わせてくれ、そう言って毎日の電話とメールを願ってくれた。
この約束も嬉しい、でも、もっと結びたい約束はやっぱり頷いてもらえない。

「…これからもなの?英二…」

ひとり声こぼれた窓辺、ふっとガラスにダークブラウンが艶めかす。
その色に振り向いた向こうワイシャツ姿の長身あざやかに陽光へ明るんだ。

―きれい…やっぱり英二かっこよくなってる、

密やかに溜息こぼれる真中で、端整な白皙の貌は穏やかに笑ってくれる。
2週間とすこし前より深くなった落着きが大人びて、眼差しの燈火やわらかな陰翳が惹く。
真直ぐな熱と冷静の瞳は切長に美しい、その笑顔につい見惚れ羞みながら周太は笑いかけた。

「英二、洗物ありがとう…お白湯まで持ってきてくれたの?」
「うん、薬飲まないとな?」

綺麗な瞳が見つめて長い指の手から薬袋と湯呑を差し出す。
素直に受けとって、薬袋ひらいてゆく指先がなんだか緊張する。

―こんな見つめられると照れちゃう…だってかっこいいんだもの、

久しぶりに逢った笑顔に鼓動ひっくり返されて、ひとりごと困りながら喜んでいる。
こんな思案ごと気恥ずかしいまま白湯に薬を飲みこむと、綺麗な低い声が笑いかけた。

「周太、ちょっとベッドで休もうな?本屋に行くって言ってたから祖母もゆっくりして来ると思うんだ、俺たちものんびりしよう?」

べっどでのんびりだなんてちょっといまどうしよう?

―あ、ばかばかおれのばか、なにかんがえてるのちがうでしょぐあいわるいのきづかってくれてるのに?

ひとり勝手に頭で問答して、なんだか朦朧としそうになる。
こんなでは熱がまた出そう?そんな自分に困って貌見られるのも恥ずかしくて周太は踵返した。

「ありがとう…湯呑おいてくるね、」

素直に頷いてダイニングの方へ歩きだして、その背中がつい意識してしまう。
窓辺から見つめてくれる瞳が前より優しい分だけ熱くて、そんな相手に久しぶりの感情が熾きあがる。

―ほんとに俺のことだけ好きでいてくれてるの?前みたいに…光一と出逢う前みたいに俺だけを、

背中に感じる視線の熱は何ヶ月ぶりだろう?
そんな歳月を数えかけて、ことん、何か響いて綺麗な低い声が心で微笑んだ。

『周太こそ俺の天使だよ』

さっき微睡んだ記憶の聲が鼓動くるんで蘇える。
目覚めて忘れていた聲、けれど想いだした声は今も聴いた声と似ているだろうか?

―でも俺の都合のいいデフォルメかも、それに夢だし…でもほんとならうれしいけど、

考えごとしながら流し台に佇んだまま手は習慣で湯呑を洗う。
こんなふうに独り占めで英二を想うことは久しぶり、この久しぶりにまた逆上せてくる。
それでも確かめたいことが今は多くて、この機会を見つめリビングに入ると綺麗な笑顔ふり向いた。

「周太、」

名前を呼んで笑いかけて、ワイシャツ端整な腕に抱き上げられる。
見あげるダークブラウンの髪を木洩陽が黄金に透かす、その光が視界ごと想い奪う。
黄金に白皙なめらかな肌が映え目映くて、深い切長の瞳から陽光のかけらが幸せに微笑んだ。

「周太をお姫さま抱っこするのって俺、ほんと幸せ、」

本当に今が幸せだよ?
そんな笑顔が額よせて軽くふれて、前髪ごし温もり交わされる。
ふれる吐息はほろ苦く深くすこし甘い、森と似た香り包まれるまま声こぼれた。

「…おれもしあわせ、」

そっと呟いて、けれど静かな廊下に聞えてしまう。
思わずこぼれた声が気恥ずかしい、そんな想いに綺麗な笑顔が訊いてくれた。

「周太、お姫さま抱っこが幸せって言ってくれたの?」
「…ん、」

気恥ずかしさごと頷くまま睫伏せてしまう。
2週間とすこし前あんなふうに別れて離れて、それなのに今は懐で甘やかされている。
こんな自分の本音が同じ男として気恥ずかしくて、それでも幸せな温もりは笑ってくれた。

「お姫さま抱っこ嬉しいって周太、俺こそ嬉しいよ?」

ほら、こんな貌で笑ってくれるから好きになる。

見あげる笑顔は濃やかな睫あざやかで切長い瞳が涼やかに艶めく。
端整で華やかな貌は綺麗で、だからすこし不思議になってしまう。

―こんなにきれいな英二と俺が血が繋がってるってふしぎだよね…でもほんとうで、だからお父さんと似てて、

英二を見つめるごと不思議になる。
父の息子である自分よりも遠縁の英二が父と似てしまう。
こんな現実に思案するまま部屋の扉が開かれて、窓ゆれる木洩陽に周太は微笑んだ。

「風が気持ちよさそう…英二、窓を開けていい?」

きっと梢の風は心地いい、その香も光もふれたい。
そんな願いごと笑いかけた人は綺麗に笑ってくれた。

「周太、窓を開けてって命令してよ?命令なら開けてあげる、」

めいれいしてってめいれいしてるのはそっちだよ?

そう言いたいけど言えない気恥ずかしさに俯きかけて、ふっと森が香らす。
抱えられているワイシャツの懐は温かに寛ぐ、この温もりに綺麗な深い声が尋ねた。

「周太、机の花きれいだな、名前なんだっけ?」
「ん…秋明菊だよ、」

応えて見あげた貌は幸せそうに微笑んでベッドへおろしてくれる。
そのまま額に額つけられて鼓動ひとつ弾ます、その響きに切長い瞳が幸せに笑った。

「周太、熱だいぶ落ち着いた感じだな、気分どうだ?」
「ん、大丈夫…さっきも自分で立って外、見てたでしょ?」

微笑んで見あげて、端整な笑顔が幸せほころばす。
笑顔は綺麗で、きれいな分だけ羞まされてブランケット引寄せた向う英二が口開いた。

「周太、さっきした一年間の約束だけど」

一年だけ喘息を内緒にしてほしい、父を一年だけ追いかけたい。

そう自分が願った約束の一年間を、綺麗な低い声が言いかける。
この声が続ける言葉が切長い瞳に見えるまま周太は約束と微笑んだ。

「ん…来年の夏は一緒にどこか行きたいね?」

来年の夏は一緒に、どこかに。

今は秋、あと9ヶ月で来年の夏は来る。
約束の一年後よりも短い約束の夏、その約束に切長い瞳が自分を映す。
真直ぐ瞳を覗きこんでくる眼差しは自分だけを映して、そして涙ふわり頬に墜ちた。

「周太、来年の夏は北岳に行こう…約束どおりに、」

北岳、

あの山に約束をくれたのは今年の夏だった。
この夏は父の死を共に見つめてくれた、葉山の海に連れて行ってくれた。
そして今年の夏の自分は唯ひとり愛されていると信じて、約束の全てが幸せだった

―幸せだった、北岳の約束の時も葉山も…アイガーの夜までは、

七月の終わり、あの一夜に約束は消えたと想った。
他の相手を抱いたなら自分も約束も忘れ去られる、それを自分は望んだ。
それでも英二は忘れないでいてくれた?この想い見つめるまま英二は涙に微笑んだ。

「北岳草を見せるって約束したろ?来年、6月の終わりに一緒に登ろうな、」

北岳草、世界で唯一ヶ所にしか咲かない純白の花。

あの花に託してくれた約束は、唯ひとり見つめてくれる想いだった。
遥かな太古から咲いて繋がれる小さな花、あの耀く命ごと贈ってくれた約束は幸福。
そう想えて、ただ嬉しくて、嬉しい分だけ愛しくて切なかった夏の想いが今、恋人の声に微笑んだ。

「北岳草はな、周太?北岳の山頂直下で三日間だけ咲くんだ、北岳の空気と土と氷河にしか咲かない花だよ?世界に唯一で一瞬の花なんだ、
だけど周太、氷河の時代から咲き続ける永遠の花でもあるんだよ?だから俺、周太と見たいんだ…ずっと一緒にいたいのは周太だけだから、」

三日間の花、けれど悠久の時から咲き続ける世界で唯ひとつの花。
あの花に想い託して約束を贈ってくれる、その声も瞳も自分だけを映して泣いてしまう。
泣いて微笑んで、約束と見つめてくれる瞳から涙ひとつ自分の瞳へ零して英二は笑った。

「周太だけなんだ、俺が本当に帰りたいって泣きたくなるのは周太だけだよ?この2週間ずっと周太に逢いたくて、帰りたかった、
今夜も周太から離れた瞬間に俺は帰りたくなるよ…きっと50年後の俺も周太に帰りたい、ずっと…想うのは周太が初めてで、唯ひとりだ、」

唯ひとり、その約束を再び自分にしていいの?

今だけじゃない、50年後の約束まで今この瞬間に贈ってくれる。
この約束は去年の秋も見つめて、けれど今年の夏に壊れて、それでも今この秋に再び鼓動へ響く。

「周太、俺は周太をおんぶしても北岳草を見に連れて行くよ?だから喘息ちゃんと治してくれな、いまの職場でも無理するなよ?
毎日、飯は何食って何時間ちゃんと寝たって、メールや電話で毎日ちゃんと俺に教えろよ?でないと俺、心配で周太を捉まえに行くよ、」

食事に睡眠時間まで気にしてくれる、そんな約束事に微笑んでしまう。
いま見つめてくれる端整な白皙の貌と黄金透ける髪は異国の騎士を想わす美貌にまばゆい。
そんなひとが日常生活を心配して毎日の連絡を願ってくれる、こんなアンバランスが愛しくて周太は笑いかけた。

「出来るだけするのじゃダメなの?…毎日じゃないと英二、捉まえに来ちゃうの?」
「そうだよ、毎日じゃないと捉まえに行く。どこにいったって俺は周太のこと見つけ出す、絶対だ、」

捉まえると笑ってくれる泣顔は視線が勁い。
いま絶対だと告げてくれるまま約束は護られる?そんな相手は涙と笑いかけた。

「周太、俺は思った通りしか出来ない身勝手なやつだってこと、もう周太は知ってるだろ?いつも俺が自分勝手だから周太を哀しませるんだ、
それでも俺のこと周太が少しでも好きだって想ってくれるなら、俺は絶対に周太を探して捉まえる。だから毎日ずっと構ってよ、今…キスしてよ?」

愛して、約束を信じて、そんな願いが端整な唇に微笑んでくれる。
この約束をもう一度だけ信じてみたい、愛して護りたい、そう願う名前に周太は微笑んだ。

「英二…」

名前を呼んで、繋いだ掌そっと握りしめる。
応えるよう長い指は握り返して、見あげる瞳が微笑んで、その眼差しに掌そっと伸ばす。
ふれる白皙の頬なめらかに温かい、この温もりごと静かに降りてくる唇に瞳を閉じ、接吻けた。

―森の香、…懐かしい、

重ねたキスの香は、懐かしい。
交わす吐息に森の香が深まる、この息吹に懐かしい時間が映りだす。
いま自分の部屋のベッドの上、けれど黄金の落葉松とブナの瞬間が幸福の時を詩に変える。

When,in a blessed season
With those two dear ones-to my heart so dear-
When in the blessd time of early love,
Long afterward I roamed about In daily presence of this very scene,
Upon the naked pool and dreary crags,
And on the melancholy beacon, fell
The spirit of pleasure and youth‘s golden gleam-

祝福された季節に、
愛しい私の想いの人と、ふたり連れだって
愛の始まりの時は祝福の季、
はるか歳月を超えて 同じ季を日々に歩めるなら、
枯れてしまった池に 荒んでしまった岩山に、
そして切なき山頂の道しるべ、その上に
あふれる喜びの心と若き黄金の輝きはふり注ぐ

―英二、あのブナの木に連れて行って?あの秋にもう一度だけ…あなたとかえりたい、

くちづけの想いは幸福の秋、あの時間にもう一度だけ還りたい。
ただ還りたくて薄く披いた瞳に黄金透ける髪ふれる、この輝きに秋の時間が鼓動を響く。
今このまま攫われて時間を戻れるのなら?そんな叶わない願いに吐息ひとつ交わして、そっと離れ微笑んだ。

「英二…お祖父さんの小説、英二も持ってるんでしょう?俺と同じに…読んで、知ってるよね?」

ほら、今キス交わした唇は確かめるべき過去と明日に微笑める。
問いかけて、見つめあう切長い瞳は俤を映したまま自分を映す。
その眼差しに呼吸ゆっくり飲みこんで周太は真実を問いかけた。

「思ったままを言って、英二…お祖父さんの小説から何を読んだの、何を…本当だと、英二は思う?」

いま贈られた幸福の秋は唇に残る、この温もりのままどうか真実の聲を聴かせて?







(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Books XI[Spots of Time] 」】

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk キャンパス某夜 ―Side Story act.2

2013-11-20 22:34:45 | short scene talk SS
未来夜景@大学構内



Short Scene Talk キャンパス某夜 ―Side Story act.2

「あ、出てきた周太…ってなんで賢弥隣にいるんだよ(そんなくっつくなよアイツなんだよ美代さんガードしてよ?)」
「あ…湯原くん、あそこにいるの宮田くんじゃない?宮田くーん、」
「こんばんわ美代さん(笑顔)(気づいてくれてありがとう美代さんナイスフォロー)」
「湯原くんのことお迎えに来たのね、良かったね、湯原くん、」
「…ん、(なんでこんな遅くまで待ってるの今8時だよ?英二ったら何時間待ってたのかな?何して待ってたんだろう?)」
「こんばんわ宮田さん、遅くまで待たせてすみません、」
「いや、用があったついでだから(笑顔)(おまえのせいで心配で周太出待ちが用事だけどね)」
「周太、せっかく迎えに来てくれたんなら一緒してもらおうよ?」
「あ、皆で飯だった?笑顔 (っていうか一緒って何言ってんのコイツそれより早く周太と帰らせてくんないかな二人飯したいんだけど?)」
「うん、皆でご飯食べて帰ろうかって話してたの。手塚くんのおススメなお店があるんだって、」
「ワンゲルでたまに使う店なんですけどね、安いけど美味いんですよ、個室だし、」
「楽しそうだな、でも俺も一緒して良いの?(個室とかって3人にしたら周太の隣か前に賢弥座っちゃうじゃん絶対阻止だそんなの)」
「もちろんですよ、山の話とか聴かせて欲しいなって俺、思ってたんです(笑顔)」
「俺の話で良いならするけど(笑顔)(あれ以外とコイツ話し易そう東大首席だからアレかと想ってたけど性格も良いんだ…って余計に周太が)」
「宮田くんの山の話、私も聴きたいな?ね、宮田くんも一緒して?湯原くんも帰り道とか安心だし、愉しいだろうし、」
「…ん、(英二も一緒なのは嬉しいけど賢弥に変なこと言ったりしそうで心配だな?さっきのも賢弥全然気にしていないみたいだけど)」
「じゃあ4人で行きましょっか?あ、もしかして宮田さん車ですか?」
「うん、だから俺ちょっと酒は飲めないけど運転手してあげられるよ?(笑顔)(帰りは夜ドライブしようって思ってたんだよね周太と夜景デートで)」
「お、ありがたいです。あれ?倉田先輩だ、こんばんわー」
「あ、手塚くん?暗いから解んなかった、遅くまでおつかれ、」
「先輩こそお疲れさまです、今帰りですか?」
「うん、図書館でちょっとね。森林チームも今帰りなの?小嶌さんと湯原くんも遅くまでお疲れさま、」
「おつかれさまです、先輩が言ってたこの間の本、すごく面白かったです。ね、湯原くん、」
「はい、林檎の野生化の話が面白くて…あ、俺、先輩に質問があったんです、」
「私でよかったらお答えするわよ?でも時間大丈夫?」
「俺らは良いんですけど、宮田さんすみません、なんか待たせちゃって、」
「いや、俺も大丈夫だよ?(笑顔)(誰この人?っていうか結構美人だ周太と仲良く話してるし周太って年上好きだし無自覚に周太モテるし)」
「あ、彼も一緒なんだ?…え、やだちょっとスゴイカッコいい人じゃない?どうしよ私ほぼスッピンなんだけど、笑」
「先輩、宮田さんは周太の保護者なんです、山岳救助隊の人なんですよ?」
「初めまして、宮田です。周太がお世話になってます、(笑顔)(保護者とかって巧いこと言うな賢弥、でもココは彼氏の方が牽制できてよかったのに、)」
「はじめまして倉田です、山岳救助だなんてカッコいいですね(照)」
「いつも泥まみれですよ?そんなにカッコよくも無いです(笑顔)(いま周太ちょっと嫉妬とかしてくれるかな?今どんな貌して…う、)」
「ね、賢弥?倉田先輩もお誘いしようよ、俺、質問したいし(先輩も一緒だと楽しそうで良いな、美代さんも女の人の友達増えるの良いだろうし)」
「え、(周太ちょっと待って周太なにいってんの嫌な予感するソレなんか嫌だ)」
「そうだな、人数多い方が愉しいか、俺も先輩に訊きたいことあるんだ、」
「私も林檎の加工技術の応用とか聴きたいな、でも先輩、遅くなると彼氏さんに悪いですよね?」
「確かに男って恋人が遅いと心配だね(笑顔)(なんだ彼氏いるんだ良かった周太狙いかと思ったでも油断禁物だよな?でも美代さんナイスフォローありがとう、)」
「あ、それなら先輩、今日は大丈夫ですよ?森田さん今夜は青木先生たちとワンゲルOB会で飲み会がさっき決まったから、」
「っ、(賢弥また余計なこと言いやがったコイツこれで周太とこのひとが親密になったらどうしてくれんだよ?)」
「ありがとう、でも宮田さんに悪いから遠慮するわ、私もこんなイケメンと飲むの緊張しそうだもん、今日スッピンだし、笑」
「いや、俺も今加えてもらうとこなんです、だから遠慮とか気にしないで下さい(笑顔)(このまま帰ってほしいな?ややこしいことなりたくないし)」
「ほら先輩、宮田さんも言ってくれてるしさ?それこそこんなイケメンと飲む機会ってないんだから一緒に行きましょうよ、」
「っ、(おい賢弥なに誘いまくってんだよやめてくれなんか嫌な予感する)」
「ありがとう、でもオジャマじゃないかな?笑」
「良かったら一緒して下さい先輩…英二、今日は車で来てくれてるから送ってくれるし(笑顔)」
「え、初対面からそれ悪いわよ?」
「悪かったら誘わないですよ?5人乗りだし…ね、英二?(笑顔)」
「はい、ご迷惑じゃなかったらどうぞ?(笑顔)(待って周太ソレしたら夜ドライブデートの時間が減るのに賢弥が余計なこと言うからだ、怒)」
「お、やっぱ5人乗りなんですね、宮田さんの車かっこいいですよね、」
「ありがとう(笑顔)(おまえに褒められても今全然嬉しくないし嫌な予感するし周太も俺との夜時間が減るのに?やっぱ賢弥や大学の方が愉しいのかな、泣)」
「五人で乗るなら俺、後ろに座るね?賢弥が助手席に座る方がきつくないから…英二いいよね?(笑顔)」
「周太が良いなら(笑顔)(だめ周太ホントは駄目だ助手席は周太の特等席で美幸さんは例外なのに?平気で譲れちゃうくらい賢弥が好きなのか周太?泣)」

喜劇 !ブログトーナメント



英二と周太@弥生キャンパスでのワンシーン、2013.11.17掲載の続きです。
この続きをソノウチ載せるかと思います、

いま昨夜UP『Savant』加筆校正が終わりました、馨と紀之@北岳山小屋での会話です。
Aesculapius「Manaslu18」加筆校正まで終わっています、雅樹と父の吉村医師の対話後編です。
第71話「渡翳7」校正も終わりました、英二と周太@周太の部屋でのワンシーンです。
後半は久しぶりにR18なんで18歳未満は途中からラスト7行まで飛んでください、笑

Aesculapius「Manaslu19」はこれから加筆校正します、予告より遅いけど、笑
これ終わったら不定期連載続きor第71話を考えています。
 
取り急ぎ、


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第71話 渡翳act.7-side story「陽はまた昇る」

2013-11-18 09:45:10 | 陽はまた昇るside story
They left behind 忘れ得ぬ嘘
※念のため後半1/3ほどR18(露骨な表現はありません)



第71話 渡翳act.7-side story「陽はまた昇る」

They left behind? 

現実を取り残したままに去ることは出来ない。
それが生きている現実なのだと今また思い知らされる、そして逃げられない。

「英二なら解ったでしょう?お祖父さんがなぜ小説を書いたのか…書かれたすべての証拠もあること、」

穏やかな声が自分を見つめて静かな瞳が自分を映す。
この声に眼差しに自分は捉えられる、この唯ひとりは自分を従えてしまう。
だから今も動き全てが奪われる、体も心も時を停めたまま木洩陽はベッドを揺れて、オレンジの香が微笑んだ。

「ね、英二…言わない事で俺を護れるって想ってくれてるのでしょう?秘密を背負わせてごめんね、ありがとう英二…でもね?」

でもね?

ただ3つの音で黒目がちの瞳ゆっくり瞬いて、優しく自分を覗きこむ。
純粋な眼差しは凛と真直ぐ見つめて、そして頬ふれる掌やわらかに引っ叩いた。

「あっ、」

ぱちん、優しい音に声が出て視界ひとつ瞬いてしまう。
いま頬を叩かれた、その優しい掌は頬ふれたまま大好きな瞳が笑ってくれた。

「英二、嘘を吐かないでって前も言ったよね、さっきも言ったでしょう?家族に秘密は要らないの、なのに嘘吐いたからおしおき、」

おしおき、だなんて良い言葉ですね女王さま?

なんて心つい呟いてしまう、今そんな台詞のシーンじゃないだろうに?
それでも今言ってくれた言葉に誘われるよう口許もう微笑んで、大好きな瞳に言ってしまった。

「おしおきって良いな、ね、周太?もっと俺にお仕置きして、俺の女王さま?」

お仕置きでも何でもいいから自分に構って?
そんな本音が隠さず笑った真中で恋人は困ったよう笑ってくれた。

「そんな喜んじゃったら、おしおきにならないよ?…英二ってほんとに困るね、」
「周太に困ってもらうって俺、なんか嬉しいな、」

笑いかけて尚更に嬉しくなってしまう。
困って貰えてなんだか嬉しい、困らせる事すら出来る今が幸せでいる。
困って笑って自分で心を充たしてほしい、そうやって自分だけ考えていてほしい。
そんな我儘と笑いかけてブランケットごと抱えこんで、見つめて、そして呼吸ひとつ事実と微笑んだ。

「周太、たしかに俺は嘘吐きな男だよ?でも周太への気持ちは嘘なんて一つも無い、絶対の約束も今だって俺は本気だ、」

自分は嘘を吐いている、けれど気持に嘘は吐いていない。
こんな自分だから大切な人を泣かせてしまう、追い詰めてしまう、この後悔ごと恋人を抱きしめた。

「自分の気持ちに馬鹿正直だから俺は光一のことも周太に話したんだ、そんな俺だから周太こそ独り抱え込んで病気になったんだろ?
もし少しでも俺を本気で好きだって想ってくれるなら周太、俺に吐きだしてよ?苦しいことも涙も何でも周太の運命に俺を巻き込んでほしい、」

どうか自分を君の運命に巻き込んで?
共に泣いても生きられる相手だと認めてほしい、選んでほしい、独りで泣かせたくない。
もう独りにならないで、離れず傍にいて、そう願うまま英二は真直ぐ恋人の瞳に笑いかけた。

「周太、首を振って答えて?言葉にすれば違反だろうから、首を振って答えてくれるだけで良い、」

言葉にすれば規律違反になる、そんな職務と立場に自分たちは立っている。
それは違う部署でも同じ組織なら同じこと、だからこそ抜け道も見つめて英二は微笑んだ。

「周太、SATの訓練は喘息にきついだろ?」

SATの訓練はきついのか?

そう問いかけた真中で黒目がちの瞳が大きく強張りだす。
どうして良いのか解らない、ただ困惑が瞳を揺らせて長い睫を零れ落ちた。

「…英二、俺、」
「ダメだよ周太、言葉にしたら違反だろ?」

笑いかけて、人差指ひとつで唇を制止する。
物言いたげな唇は指にやわらかい、そんな温もり幸せなまま笑いかけた。

「約束だよ、周太。俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる、この約束を喜んでくれるなら頷いて?」

約束と笑いかけて、けれど訊かれた質問は秘密のまま封じこむ。
こんなことは自分勝手だろう、けれど叶えたい約束のために秘密でいたい。
こんな約束は不平等かもしれない、それでも護りたい唯ひとつの想いに英二は綺麗に笑った。

「晉さんの小説のことも親戚関係のことも、俺は周太に何も応えないし誰にも言わない、今はね?だけど時が来たら話したいよ、
その時が来るって信じてくれるなら今の約束に頷いて?俺が周太をSATから攫っても良いって許可して命令してよ、俺の女王さま?」

君を攫う約束を、どうか喜んで頷いて?

この約束の為に自分は秘密も嘘も抱えこむ、それでも約束だけは真実だと解かってほしい。
こんな遣り方しか思いつけない自分でも受容れてほしい願いに見つめた真中、黒目がちの瞳に涙ひとつ微笑んだ。

「ん…さらって?」

攫って?

唯ひと言に願ってくれる、その声は小さいけれど自分に命じた。
この聲に自分を望んでもらえる、それがただ嬉しくて幸せごと抱きしめた。

「絶対に攫いに行くよ、周太?ちゃんと周太のこと攫うから、そしたら俺の嫁さんになってくれな?」

嫁になれ、だなんて男が男に約束する台詞としては言葉が変だと言われるかもしれない。
それでも自分にとっては全て懸ける願いで約束、だから幸せに微笑んだ真中で大好きな唇が命令した。

「その約束ほんとうなら英二…きすして?」

命令のよう願ってくれる瞳は羞んだまま自分を映す。
いま木洩陽ゆれる枕で黒い髪やわらかに艶めいて長い睫へ光は踊る。
きらきら縁どる瞳から気恥ずかしげな想いが微笑む、この眼差しに全てを見つめて英二は笑った。

「絶対の約束だよ、周太?大好きだ、俺の未来の花嫁さん、」

大好きだ、そう瞳を見つめて約束を告げられる。
幸せな呼名で笑って見つめるベッドは白く陽だまり優しい、その純白に祝福を見てしまう。
男同士だから幸せな約束も法律では認められない、それでも唯ひとつの想いに唇ふれて、接吻けた。

―大好きだ、幸せだ、オレンジの香も今は幸せだ、

想い心に呼んで重ねる唇は温かい、そしてオレンジが甘くて鼓動が疼く。
あまい優しい香、けれど罹患の徴なのだと解かっている、それでも今は優しく甘く愛おしい。
たとえ病の証だとしても大切な人の一部なら愛せてしまう、そんな想いに欲張りたくてキスのはざま囁いた。

「…周太、絶対の約束ならキスだけじゃないよな?」

囁いた吐息と見つめる至近距離、長い睫ゆるやかに瞬かす。
前髪ふれあうまま吐息も交わされる、あまやかなオレンジの香に英二は誘惑を微笑んだ。

「未来の花嫁さんと絶対の約束をさせて、体ごと…約束は肌で感じ合いたい、」
「ぁ…、」

微笑んだ唇かすかな吐息あまくふれて、その香ごと唇を重ねこむ。
重ねる温もりに惹かされて融かされる、この今を交わせる香も吐息も愛しくて離れたくない。

「周太、愛してる…周太、」

想い、名前を呼んで唇重ねて通う吐息ごと抱きしめる。
ブランケットごと肩を抱いて、白い衿に指かけて寛げて、指先ふれた素肌が鼓動を撃つ。
半月より長く離れていた温もりが掌ふれて肌を求めだす、その想いのままブランケット脱がせて紫紺の帯に手を掛けた。

「…っぁ、」

キスに小さな喘ぎこぼれて煽られる、そのまま帯解けに手は絡めだす。
窓ふる陽光きらめいて紫紺の川が床へ散る、その色彩に微笑んで唇ほどき笑いかけた。

「きれいだな、周太の肌は…困ってる顔も可愛い、俺こそ困るよ?」

本当に自分こそ困ってしまう、こんなの歯止めを忘れそう?
いま病み上がりの体と解かっている、それなのに忘れそうな自分が怖い。

―ほんとに俺、このまま全部しそうだよな?準備もちゃんとしてないのに、

心裡に言聞かせたくて廻らす思案に、男同士の現実で歯止めを作りたい。
もし準備も無く男が抱かれてしまえば体を傷める、そんなリスクを恋人に冒したくない。
だから今は全部を最後までは出来ないな?そう納得しながら首筋へ唇よせて、けれど羞んだ声が囁いた。

「…あの、おれずっとたべてないから…あまりしすぎないでね」

ずっと食べていないから、なんて誘い文句に今はなっちゃうんですけど?

「周太、一昨日から祖母のアップルサイダーしか食ってないとか?」

つい質問して確かめたくなる、だってそうなら今こそチャンスだろう?
もし温かい林檎と水分しか摂れていないなら今、準備も殆ど必要ない。

―胃から空っぽなら直腸も綺麗ってことだもんな?

男同士のセックスで「最後まで」するなら抱かれる側は直腸に受容れる。
だから浣腸などの洗浄を事前に施す、けれど腸内が空なら話は少し違う。
その稀なチャンスを今に抱いている?そんな期待に恋人は素直に頷いた。

「ん…おばあさまのりんごと水と薬だけなの、ココアもさっきのが久しぶりで…だからたいりょくないから」

ばきん、

自制心の折れる音が久しぶりに響いて自分の衿元に指かける。
すぐボタン外れてゆくままワイシャツゆるんで肌が露わになる、その素肌に視線がふれる。
見あげてくれる黒目がちの瞳は途惑うよう羞んで、この貞淑ごと欲しくて腰のベルト引き抜いた。

かたん、

落したベルトが床を鳴らす、そしてウェストボタンも外される。
もう肩からワイシャツ落ちかけて素肌へ木洩陽ゆらす、その光すら温かい。
この温もりごと交わしたい吐息と体温が恋しくて、白い浴衣ひらいて恋人へ乗り上げた。

ぎしっ…

ベッド軋むまま重ねた素肌に温もり通う、この体温に融かされる。
ワイシャツも脱ぎかけのままで腕は恋人の肌を抱く、なめらかな肌に頬よせて髪ふれる香が愛おしい。
抱きしめる肢体は鍛えた洗練が端正で、けれど華奢のくゆらす少年のような体に鼓動ごと掴まれ微笑んだ。

「きれいだ周太は…大好きだ、体ごと全部を愛させて…周太、」

体ごと全部を愛したい、全てを交わして融けあいたい。
そう願うまま愛しい肌へ唇なぞらせる、キスふれるごと小さな震えが募らせる。

「…ぁ、ん…」

震えごと喘ぎこぼれて、鼓動から煽られて唇が肌に想いを刻む。
光あわい肌へと薄紅の花ひらく、その花の数だけ愛しくて離せない。
そんな想いへ優しい掌が髪かきあげ頬ふれる、すこし怯えたような仕草が淑やかに惹く。

―あ、俺もう?

ほら、惹かれるまま自分の体は素直に反応しだす。
そんな感覚すら幸せで、微笑んで英二は浴衣の脚そっと寛げ下着へ手を掛けた。

「…ぁ、あのえいじ…あ」

途惑うような声、けれど手は動いて恋人の肌が露わになる。
まだ陽が高い時、窓から照らされる艶やかな肢体は少年のまま瑞々しい。
もう腕だけが白い浴衣に隠される、前より透けるような裸身が視線を奪う。

「きれいだ…また綺麗になったね、周太は…俺の花嫁さん、」

見惚れるまま微笑んで、なめらかな脚そっと抱えて広げさす。
ゆるやかに委ねてくれる肢体は素直で、その首すじから紅潮あざやかに頬を染めてゆく。
優しい薄紅いろの貌は困ったようで、けれど見上げてくれる瞳の熱が嬉しくて笑いかけた。

「周太、俺ずっと寂しかったよ…メールもなくて哀しくて俺、ほんと傷ついて…だから周太の全部で受けとめて、癒して?」

君の全てに受けとめられたい、君と離れた孤独も哀しみも癒してほしい。
この愛しい肌に体温に自分を受容れられる、その幸せを求めて下着ごとスラックスから脚を抜いた。

しゅっ、

かすかな衣擦れ聴きながら愛しい肌へ指なぞらせる。
ふれるごと肌なめらかに震えて恥じらう、その微かな仕草に惹きこまれる。
惹きこまれて、募らされる想いごと唇で指で肌ふれるまま密やかな窄まりへ接吻けた。

「ぁっ、えいじまって!」

恋人の声が驚いて優しい手が髪ふれてくる。
頭ごと押しのけようとして腰も逃げかけて、けれどワイシャツの腕に抱きこんだ。

「だめえいじっ、なにもじゅんびしてないのにだめっ…ぁあ」

制止の命令が訴えて、けれど今は聴けない。
今は求めるまま愛しい全てに溺れこむ、その願いごと接吻けながら微笑んだ。

「…だめじゃない周太、ここも周太は綺麗だから大丈夫…俺にまかせて、」
「っ、だってえいじしたく…っあぁ…っぁ、ぁ」

止めようとする声、けれど喘ぎへ融けて委ねだす。
逃げかけた腰も腕のなか緩められ素直になる、もう肌から赦しだす。
ふれる唇に密やかな蕾ほころびだして舌を挿しこむ、その温もりに恋人が艶めく。

「ぁ…えいじ…ぁあ…ん…」

あまくなる吐息ごと肌の蕾は花ひらきだす、この深くへ自分を納めたい。
そう願うまま接吻けを解いて、細やかな腰へ腰を重ねて脚をからめて幸せに笑いかけた。

「愛してる周太…俺を受けとめて、」

自分をどうか受けとめて?そして裡から愛させて欲しい。

いま肌を盡したキスのまま君の深くも自分で充たしたい、自分だけを見つめてほしい。
この今の瞬間に願いたいまま肌ふれる、ふれる尖端に優しい蕾かすかな息づきは温かい。
このまま挿しこんで愛しい花びらに埋もれたい、そんな願いの真中で恋人は羞むよう微笑んだ。

「あのえいじいま…げんかんひらいたみたい、」

いま、なんと仰いました?

「え?」

言われた事に停まって薄紅いろの貌を見つめてしまう。
いまの言葉は冗談だと想いたい、何か新しいプレイだといいな?
そんな願望ごと首傾げて見つめて、けれど恋人は浴衣そっと掻きあわせ微笑んだ。

「あの…玄関があいたの、おばあさまかえってきたみたい?」

なにこれ寸止めかよ?

そんな心の声が呟いて、つい諦めきれない想いごと恋人を抱きしめる。
せめて15分早くしていたら叶えられたはず、その15分を今ほんとうに戻したい。
けれど抱きこんだ恋人はもう浴衣ひとつ肌を隔てて、その一枚に落胆するまま階下から呼ばれた。

「英二、周太くん、お昼にしましょう、降りていらっしゃいな。ちゃんと英二はエスコートしてきなさいよ、節度あるマナーでね?」

ほら、祖母の声は陽気なまま悪戯っ気が笑う、こんな祖母だから自分はやっぱり敵わない?








(to be gcontinued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Books XI[Spots of Time] 」】

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk キャンパス某日 ―Side Story act.1 

2013-11-17 22:01:00 | short scene talk SS
未来点景@大学構内



Short Scene Talk キャンパス某日 ―Side Story act.1

「そんなに学校こないで、賢弥にも余計なこと言わないで?」
「そうやって周太が名前で呼んだりするから気になって来ちゃうんだよ、」
「名前で呼ぶくらい良いでしょ?英二だって光一って呼んでる癖に、」
「俺は名前で呼ぶの多いだろ?周太は珍しいから気になるんだよ、」
「俺だって光一って呼んでるよ?美代さんのことだって名前で呼んでいます、いいからもう帰ってね?」
「あ、待ってよ周太、昼飯一緒にしようって来たんだから待ってよ?」
「ほらっ、やっぱり彼だわ、お久しぶりです!」
「え?」
「あ、憶えていませんか?アルバムの時にお話しした法学部の、」
「ああ、あの時はありがとうございました、(ってタイミング悪、早く周太追いかけたいのに声かけないでほしいんだけど?)」
「憶えていてくれたんですね(照)よかったらランチご一緒しませんか?」
「ありがとう、でも先約があるんです、あっ、周太?」
「先約あるんだね英二?じゃあ、」
「あ、待ってよ周太ちがうんだってば、周太と飯食いに来たんだよ俺?」
「やくそくなんてしていないです、だからあのこたちとごはんたべたら?」
「あ、周太、嫉妬してくれるんだ?嬉しいよ、(笑顔)」
「…どれいのくせになまいきです、もうかえって?いまから演習のミーティングランチなの、部外者はこないで?」
「部外者って…そんな冷たいこと言わないでよ、周太?」
「かってにきたくせにどうじょうひくかおしないで?ほんと忙しいのかまえないの、夜もおそいかもしれないの、じゃあね、」
「あっ、待ってよ周太…ほんとに置いてかれた俺…(賢弥が隣に座ったらなんかヤダ、美代さんの隣には絶対に座ってそうだけど周太、泣)」




英二と周太@本郷キャンパスでのワンシーンです。
第61話「燈籠act.2」2013.2.22掲載とリンクしています。

いま第71話「渡翳6」校正まで終わりました。
Aesculapius「Manaslu17」これから加筆して、終わり次第で第71話の続きかなってトコです。

取り急ぎ、







blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月光湖

2013-11-16 21:15:35 | お知らせ他


こんばんわ、こんな↑写真撮りに行ってきました。
月が湖に橋を渡してるトコなんですけど、ぴりっと冷たい空気に光が冴えました。
ってわけで加筆校正これからです、笑

第71話「渡翳6」が終ったら「Manaslu17」の予定です。
その前に『Short Scene Talk』をUPするかもしれません、

取り急ぎ、





秋のお出かけ 2ブログトーナメント
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする