「歪み」ってなんだ?

2019年10月08日 | 治療の話

 

「むぅ(-"-)これは背骨が歪んでる!」

とか

「なんと!Σ(゚Д゚)骨盤が歪んでる!」

とか

「頭蓋骨の歪みが原因です!(`・ω・´)キリ!」

とか

「内臓が…」

とか

よく耳にする「歪み」という脅し文句言葉。

一見分かっているようで実はよくわからない「歪み」という表現。

今日は歪みについてのお話しです。

 

そもそも(身体の)歪みとはなんでしょう?

「歪み」という言葉は医学的な用語ではありません。

なので、正確な定義もないのです。

ですが、近い概念に「体性機能障害」というものがあり、不良姿勢や関節の異常運動が定着した状態を示します。

私たち治療家は皆さんが「歪み」と称する問題を「体性機能障害」として読み解き、治療を施してゆくのです。

面白いもので、きちんと勉強して真面目に臨床に(治療に)向き合う先生ほどこの「歪み」という言い方を嫌う傾向があります。

なぜなら、故障のメカニズムを解釈せずになんとなく判った体で使われているケースが多いから。

また、問題の本質を捉えていないのにそれをうやむやにするために使われていることが多いから。

なので、私も好みません。

もちろん患者さんに「体性機能障害」なんて言っても通じるわけもありませんから、

説明の中であえて「歪み」という言葉を使うことはあります。

でも、たぶん苦笑いしながら使ってると思います。

仮に、真面目に「骨盤がゆがんでいる」とか「頭蓋骨がゆがんでいる」って言われたら

ぜひ「具体的にどう歪んでいるのか」聞いてみてください。

「右の寛骨の○○方向への動きが狭くなってます」とか「左の後頭骨と頭頂骨、側頭骨が重なり合う部分の動きが狭くなってしまってます」とか

意図的にあえて「歪み」というワードを使っている先生なら明確な答えが返ってくるはずです。

以上、「歪み」のお話しでした。


ベンチプレスの肩の痛みⅡ~セルフで簡単根本治療編~

2019年09月15日 | 治療の話

ベンチプレスの肩の痛みへのセルフケアを動画でまとめました!

いやぁ~手間食ったぁ~(;´Д`)

もうここの所ずっと宵っ張りでぐったりです。

つたない仕上がりですが、なんとか伝えたいことは盛り込めたと思います。

どうぞご覧ください!!!

渾身の作品がこちら↓↓↓

〇ベンチプレスの肩の痛み~セルフで簡単根本治療編Ⅱ~

こちらは2019/01/30 公開の「リフターズケア:ベンチプレスの肩の痛み~腱板炎・二頭筋長頭腱炎後の拘縮の解除とアスリートリハビリ~」の続編となります。

 

〇リフターズケア:ベンチプレスの肩の痛み~腱板炎・二頭筋長頭腱炎後の拘縮の解除とアスリートリハビリ~// 徒手医療協会

 

今回の動画では肩の痛みの根本原因に対するセルフケアと運動療法を紹介しています。

腱板炎や上腕二頭筋長頭腱炎の原因を解消する方法となりますので、

前回の動画でご紹介したストレッチと併せて行っていただくことで、

より高い効果が期待できます。

今回は「ベンチプレス」に焦点を絞ってまとめましたが、

パワーリフターでなくとも肩の故障でお悩みの方に広くお役立ていただける内容となっております。

例えば、デスクワーカーやクロスフィッター、○十肩のお父さんお母さん、

ウエイトリフターや水泳、バスケットボールやテニス、バレーボールetc…といった頭上へ腕を挙げる所作が多いオーバーヘッドアスリートの方々。

そうした方々の肩の故障にも、先の動画で紹介した手法強い味方となってくれることでしょう。

ぜひお試しください!

それでもだめなら…

治療にいらしてください(^_-)-☆

⇒とよたま手技治療院 hp:toyotama.net

 


東北重量挙の旅~三日目・ホタテ小屋~

2019年08月28日 | 治療の話

16:18 青森駅到着

駅を出ると五年前に見た八甲田丸が見えました。

思い出しますねぇ。

ひどい目に遭った…(遠い目)

※詳細はこちら

5年前、家族できた時に入れなかった「ホタテ小屋」がありました。

500円で2分間ホタテ貝をがつり放題なんだとか。

釣ったホタテはもちろん食べてOK。

えらく気になったんですが、うちの家族はみな貝が苦手んですよね。

私は食べるんですけど…

前回来たときは即却下でしたが、今回は止めるものがありません。

ラーメンもいいですが、せっかくなので5年前のリベンジを果たすことにしました。

このホタテ釣り、なかなか人気があるようで私の前に3組か4組まっていました。 

しばらくは順番待ちです。

皆さんなかなか釣ることができず、残念賞のホタテ2枚を手にしょんぼり席に戻ってゆきます。

あまりに連れないので見かねた店員さんがアドバイスをくれました。

ここで紹介してしまうとお店が気の毒なことになってしまうので伏せますが、

5枚のホタテをゲットできました!

通常1枚450円ですから約4枚分得した勘定です。

せっかくなのでカキとサザエ、ビールを追加で頼みます。

ほろ酔い気分でお店を出たのが17:00。

八戸行きの電車が17:23。

ラーメンはあきらめて青い森鉄道で八戸へ移動です。

 

八戸に着いたのが19:00。

焼き貝とビールでお腹いっぱいでしたので、銭湯を探して一風呂。

帰りに地元のスーパーでご当地カップラーメンを購入。

こうして3日目を終えたのでした。

<続く>

 


予防接種の影響で生じた肩峰下インピンジメント症候群

2019年08月10日 | 治療の話

今日は肩の故障の臨床報告です。

臨床報告といっても一般の方にお読みいただけるよう専門用語は極力使わず

挿絵も多めに書いておりますのでご一読いただけましたら幸いです。

 

先日、ちょっと興味深い症例に出会いました。

一見、ごくごくありふれた肩の故障。

いや、一見しなくともありふれた肩の故障なのですが、

その発症の切っ掛けがちょっと興味深かったんです。

主人公はシャツの脱ぎ着で左肩が痛むとご来院のAさん(60代女性)。

ことの発端は昨年の冬。

左の肩にインフルエンザの予防注射を受けてから、シャツの脱ぎ着で肩がギクギクと痛むようになったとのこと。

初めのうちは「注射を受けてから」という患者さんの言葉はあまり気に留めていませんでした。

でも、Aさんのお身体を調べるうちに『確かにそうかもしれない』と宗旨替えすることになったんです。

Aさんの肩の所見を並べると以下の通り。

・ペインフルアークサイン陽性

Aさんの肩は腕を90度~100度開くと肩の側面に痛みが走ります。

その角度を過ぎると何とか170度(本来、故障がなければ180度は開きます)ほど挙げることができます。

これをペインフルアークサイン(有痛弧徴候)といい、肩峰下インピンジメント症候群では特徴的な所見となります。

さらに調べると、以下の所見が取れました。

・二の腕を90度開いた角度での内ねじりの動き(第二内旋)が狭い=棘下筋/小円筋の短縮

これも肩峰下インピンジメント症候群ではよく見る所見です。

以下の所見もスタンダードな異常所見です。

・肩甲骨を固定して腕を開くと痛みを強く訴える(インピンジテスト=棘上筋の腱(腱板)にダメージを負っていることが分かる)

↓・上腕骨の頭は肩甲骨の関節窩に対して前方へずれている(棘下筋/小円筋の短縮と肩甲下筋の延長や弛緩を示唆)

↓・ 上腕骨の頭は肩甲骨の関節窩に対して上方へずれている(三角筋の短縮 / 肩関節上面の靭帯の拘縮~烏口肩峰靭帯・関節上靭帯~を示唆)

〇通常の肩関節

〇異常所見

・左肩(故障側)は「なで肩」に見える=三角筋の短縮

上の3つの絵からわかることは「三角筋の短縮」これがあるということです。

 

でも、ここまでは肩峰下インピンジメント症候群ではごく一般的な所見です。

Aさんのケースでいえば、関節上面の拘縮ができていたあたり、腱板や靭帯の損傷が徐々に深まっていることが分かります。

障害の深さは中の上です。

ここまでの所見でAさんの肩の痛みは主に三角筋の短縮が犯人であると考えました。

三角筋の短縮は腕を横から開く「外転動作」で肩関節に引っ掛かりを生み出します。

まとめれば、Aさんの肩の痛みは、

何らかの理由で縮んだ三角筋が上腕骨を引き上げ、

肩峰(肩甲骨と上腕骨の関節部の天井)の下で棘上筋腱を挟み込むことで傷つけ

傷ついた棘上筋腱に痛みを生じているという判断になります。

これを腱板損傷といいます。

 

これにプラスアルファの所見が「予防接種」との関係を明確にいしてくれました。

その所見とは、三角筋の上腕への付着部、三角筋粗面の少し上の瘢痕組織の存在です。

瘢痕組織は上の絵の赤い三角より少し上にありました。

ちょうど予防接種で筋肉注射をする部位です。

これには三角筋を触察しながら上腕骨を内外に動かし、

三角筋の長さと三角筋筋膜のすべり具合(滑動性)を調べていた時に気が付きました。

いつもの瘢痕の場所としてはあまり見ない場所だったので『あれ?』っとなったんです。

そして、冒頭の「インフルエンザの予防接種」の話を思い出したわけです。

Aさんの肩は腱や靭帯の損傷、瘢痕ができていた割に治療によく反応し、可動域もほぼ正常まで引き出すことができました。

でも、瘢痕化した組織や拘縮した組織の形状記憶性は強いですから、状態を安定させるにはセルフケアも大切です。

Aさんには下の動画の手法を2~3日に1度は行っていただくようお伝えして初回の治療を終了しました。

リフターズケア:ベンチプレスの肩の痛み~腱板炎・二頭筋長頭腱炎後の拘縮の解除とアスリートリハビリ~// 徒手医療協会

しかし、まさかインフルエンザの予防接種と肩関節の故障がリンクするとは…

もう20年近く治療を生業としていますが、こうした発見や気付きがいつまでも現れる。

これだから臨床はやめられません。

こうした発見が続いている限り、楽しくお仕事がつづけられそうです。

以上、臨床報告でした。


四頭筋の筋挫傷からのリカバリー<第3話>

2019年04月23日 | 治療の話

さて、延び延びになっていた「四頭筋の筋挫傷からのリカバリー」の話。

だいぶ間延びしてしまったので今までのおさらいから。

事故は昨年9月5日に起こりました。

そのころ私は秋の大会(関東マスターズ)へ向けて練習を重ねており、

事故の日の私は疲れた体を引きずって義務感だけで練習に行きました。

事故は集中力を欠いたままクイックリフトの練習をし、手を滑らせてバーベルを膝に落とすというもの。

落としてはいけないジムであったためとっさに膝で受けてしまったのででした。

傷害部位は膝のお皿の上あたり。

肉離れでいうところの二度の筋挫傷。

発症から3日はテーピングとお薬(消炎鎮痛剤)のお世話になり、

4日目から損傷部位の回復を促す目的でペルビックティルトというエクササイズを開始しました。

【ペルビックティルト】

 

それから、前回の記事では書き忘れていたのですが

傷ついて狂ってしまった膝の動きを正常化するために日常生活では以下の二つの工夫をしていました。

 

<工夫1>

下肢の関節運動を正常化する効果を持つ「アンクルテープ」「ニーテープ」(別名「TOYOTAMAテープ」。

自身の編み出した手法です。

変形性膝関節症やジャンパーズニー、腸脛靭帯炎など膝の故障全般の治療に役立つテープです。

 

膝・足首の調整:ニーテープとアンクルテープ(TOYOTAMA TAPE)の張り方

<工夫2>

姿勢制御の正常化のために「フィジオエイド」という足につける装具を利用しました。

姿勢制御に関する反射を引き出すことで姿勢バランスの崩れを補正し、正しい姿勢と筋バランスを引き出す装具です。

現在、意匠登録に向けて準備中。

詳細はまたの機会に…

 

6日目にはさらにヒップスラストを追加しました。

【ヒップスラスト】

このヒップスラストをペルビックティルトと併せて行うと、体軸の安定性に対する効果はペルビックティルト単体よりも高くなります。

体軸が安定すると不良姿勢に起因した四肢の筋バランスの異常も解消されます。

下肢においては四頭筋やハムストリングスの異常緊張も解けますから、前屈も後屈もスクワット動作も広くスムースにすることができます。

傷からの侵害刺激を受けて生じた下肢の異常な筋緊張も大幅に緩和してくれますので、今回のような下肢の傷害では組織の回復に大いに役立ちます。

 

そうこうして8日目。

急性炎症も落ち着いたので、ダメージなくできる動作を探りに行くことを目的にリフティングの練習を再開しました。

〇受傷後8日目の練習メニュー

・ウォームアップ

ペルビックティルト / ヒップスラスト / 脛骨大体関節のMWMs

脛骨大体関節のMWMs 

・ハイスナッチ:3レップで70%の重量まで。1レップで82%までできましたがここで膝に違和感が出現。

・ハイクリーン&ジャーク:クリーン3-ジャーク1。こちらも70%で違和感出現。

※スナッチもクリーンもハイでやったのはしゃがみ込む動作が小さく膝への負担が小さいからです。

動作の理解に再度動画を載せます↓

high snatch 40kg

high clean & jerk 40kg

このころの練習では膝をキネシオテープとエラスティックテープで保護しました。

練習に対する感想としては思いのほか重量を触れたなといった感じでした。

損傷の程度としては決して軽いものではなかっただけに、ほっと胸をなでおろしたのを覚えています。

 

翌日(受傷後9日目)には膝以外の補強を行います。

運動刺激自身が回復に関わる種々のホルモンや再生因子を引き出すトリガーとなりますので、回復のためにも適度な運動刺激を入れるという選択をしたのです。

〇受傷後9日目の練習メニュー

・ベンチプレス:ほとんどやったことがないので少しずつ重量を挙げつつ5~3レップでフォーム練習。

・ディップス:目標は10レップ3セットでしたが8・6・4レップがやっとでした。

・チンニング(懸垂):これもストリクト(反動をつけない)で5レップできれば…と考えていたのですがなんと2レップでドボン。

 キッピングプルアップ(反動を使った懸垂)で5レップの3セットがやっとでした。

・レッグスラスト:これはペルビックティルトの強化版です。

 骨盤前面を支える下腹の筋をしっかり鍛えつつ、腸腰筋の遠心性収縮のコントロール(遠心性収縮は脳からのコントロールのみ)

 を学習させ腰椎・骨盤・股関節の正常なコントロールを手に入れるトレーニング方法です。

 膝の故障にはケアエクササイズとしても役立ちます。

動画はコチラ⇒【レッグスラスト】

 

以上、ここまでが前回までの話と補足説明。

 

ここからが続きのお話となります。

 

その後は3~4日に一度、「8日目のメニュー」を違和感を上限に回復状況を探りつつ行い、

間に「9日目のメニュー」を入れたり入れられなかったり(お仕事の関係で時間がコンスタントに作れませんでした)が続きます。

また棒を使ったウエイトリフティングのフォーム練習は日常の中で暇を見つけてはちょくちょく行いました。

そうして、受傷後3週間がたったところで自体重でのフルスクワットができるようになりました。

怪我の程度から考えるとかなり早い回復です。

今回のアクシデントでは実験的に普段患者様に提案しているセルフケアに絞って回復を追うことをテーマとしましたが、

それらのエクササイズたちがしっかりと機能してくれることが実体験として確認でき、仕事上の大きな収穫となりました。

 

そして自体重のスクワットができるようになってから3日後(受賞後24日後)、

今後の練習強度を決めるために、重りを担いでのバックスクワットのスコアを確認しました。

〇受傷後24日目の練習メニュー

・バックスクワット:アップセットは5レップ~3レップで挙げて行きます。

 ベストの-15kgあたりから違和感が出始めましたが、様子を見ながら重量を挙げてゆきました。

 2.5kg刻みで一本ずつ挙げて行き、-10kgで軽い痛みを感じたため終了しました。

 パフォーマンスとしては91.7%のできでした。

・ハイクリーン:クライアントの練習に「VBT:速度基準トレーニング」の導入を検討していたため計測器の試運転もかねて

 30%と60%のハイクリーンを行いました。

・補強:チンニング(懸垂)/ レッグスラスト / ディップス / FT(ヒップスラストの強化版。機能的側弯症の改善にも高い効果を発揮する優れものです。)

【FT】

この時点では膝の保護に貼っていたエラスティックテープは1/2ほどまで減らせていました。

スクワットの結果は当初予想していたよりもスコアも高く、回復も順調であることが分かります。

90%を超えたのでセットを組むこともできそうですが、損傷後2か月は瘢痕組織は脆い(リモデリング期といいます)ので追い込み過ぎには注意が必要です。

この日の練習は痛みをこらえるようなことはせずに終えましたが、翌日には傷跡に軽い痛みが現れました。

でも、これはいたって正常な反応で心配のないものです。

ダメージを受けた組織は正常な組織よりも弱いので、健常な組織と比べて「非常に強い運動をした」ことになり、いわゆる強い筋肉痛を起こすものなのです。

リハビリではよくある現象ですのでここでびっくりしないことです。

ここで大切なのはトレーニング後の回復を数日掛けて見極めることです。

動作痛(私の場合はスクワット動作)と傷跡に現れた圧痛が落ち着いたのを確認したら次の練習に移ります。

この圧痛や動作痛は問題のないものであれば通常、2日程度で消えます。

それ以上痛みが続く場合は練習中の「違和感」が「痛み」ではなかったか振り返ってみましょう。

上手くゆかないケースの多くは痛みを無視した追い込みをしていたケースです。

怪我をした時は

『これは痛みではない!こんな程度、痛みとは認めない!』

とおかしな思考にとらわれてしまうものです。

治ったときに振り返ってみると

『あれは痛みだったよなぁ…(^_^;)』

となるのですが、人間、早くもとの練習を再開したくて焦っているときには自分に都合の良い解釈をしてしまいやすいものです。

怪我からの回復記にはそれをぐっとこらえて、クレバーな対応を心がけましょう。

冷静な判断ができれば怪我はちゃんと治すことができます。

実際、この痛みは翌々日(26日目)には消えていました。

〇27日目の練習

・スナッチ:ロー(しゃがみ込む)スナッチに挑戦しました。ストラップを使用してですが、嬉しいことにベストの-3kg(70kg)まで取ることができました。

・クリーン&ジャーク:これもローでベストの-8kg(85kg)まで取れました。

クイックリフトは負荷が強いのでセットは組まず、サッと挙げられる重量を確認したら練習終了です。

回復期は欲張らないことが大切です。

次の練習までの間は自宅でディップスやレッグスラスト、FTに取り組みました。

その後の練習は以下の通り。

〇31日目の練習

 十分な時間がなく、27日の練習と同じ内容です。

エラスティックテープによる保護は外し、膝の保護はサポーターのみ(通常の練習と同じ条件です)で練習しました。

・スナッチ:ストラップを使わず-8kg(65kg)まで。

・クリーン&ジャーク:立てませんでしたが90kg(-3kg)をキャッチするところまでできました。

膝の痛みもなくキャッチができてホッとしたのを覚えています。

〇34日目の練習

 ・スナッチ:ストラップを使わずに3レップで82%まで挙げました。

 怪我前はハイスナッチ(下までしゃがまずにキャッチするスナッチ)で取れた重量ですが、

 ロースナッチ(下までしゃがみ込むスナッチ)で3本とるのが精いっぱいでした。

 つまり、怪我で失われた地力はまだ元のレベルまで育っていないということです。

・ボックススナッチハイプル:35cmの台にバーベルを置いて、そこから胸へ引き上げる練習種目です。

 脚の出力を高める(神経系の適応を促す)目的で90kgまで触りました。

・クリーン&ジャーク:脚が効いてしまったのか80kgまで。

・ベンチプレス

・懸垂:キッピングで5レップを5セット

・ポックン:韓国のウエイトリフターがやっている(いた?)というかなり負荷の高い腹筋です。

 これを5レップ5セット

 

〇36日目の練習

練習後の膝のダメージの抜けがよかったので、サラッとフロントスクワットだけ行いました。

嬉しいことに自己ベストタイ(100kg)を立つことができました。

 

〇38日目の練習

・スナッチ:ストラップを使っていますが自己ベストタイの73kgを立つことができました。

・クリーン&ジャーク:ジャークは失敗でしたが、クリーンベストの-2kg(93kg)まで立つことができました。 

 

両側四頭筋遠位部筋挫傷後38日目

 

当初は回復に2か月以上を見込んでいたので38日目でスタート地点まで戻ることができたのには驚きもありつつ、非常にうれしかったのを覚えています。

お気づきの方もおられるかと思いますが、ウエイトリフティングの種目練習を入れ始めてからスクワットはほとんどやっていませんでした。

膝の耐久性を考えたとき、クイックリフトとスクワットを両方やり込むのは負荷が大きすぎると考えたからです。

回復期の瘢痕組織は正常な強度を持っていません。

それは傷をつなぐコラーゲンの繊維が無秩序に張り巡らされていて、関節機能に沿った運動方向からの負荷に耐える力が低いためです。

正常な運動方向を支える線維だけを選択的に育てるためには適度な運動と適度な休養が必要です。

クイックリフトのような瞬間的な屈伸動作は負荷が強いのであまり多くの種目で患部を追いこむのではなくクイックリフト単体の刺激で十分と考えたのでした。

しかも、瞬間的な遠心性の伸張刺激は瘢痕組織内のコラーゲン繊維に対し、関節の支えに必要な繊維を強化し、必要のない繊維を排除するのに役立ちます。

もちろん「適度に行えば」の但し付きですが。

ともあれ、受傷後38日目を境にスクワットもデッドリフトもセットを組んで行うようになりました。

もちろん患部の違和感にはよくよく耳を澄ましての練習であることには変わりません。

セットを組み始めてからさらに2か月(つまり受傷後3か月)頃からスクワットで扱える重量も伸び始め、

1月にはスナッチもジャークも1kgの記録更新ができ、2月の頭にスクワットのベストを5kg更新できました。

それからさらに1か月半後の現在。

ボックススナッチでは80kg(+5kg)に成功し、クリーン&ジャーク95kg(+1kg)で、ボックス練習では100kg(+5kg)のクリーンに成功することができました。

バックスクワットもさらに2.5kg、フロンとスクワットも3kg伸びました。

今回の怪我は結果として怪我前の練習に戻るまで5か月弱かかりました。

学ぶことも多かったのですが、怪我がなければ今のスコアは昨年中に出ていたかもしれません。

そう考えるとやはり怪我はないに越したことはありませんね。

みなさんも怪我にはお気を付けください。

怪我をしてしまったら、怪我を抱えた自分(の数字)と向き合って、冷静にリハビリに取り組んでいただきたいと思います。

リハビリ期のトレーニングにおける基本ルールはいたってシンプルです。

痛みのない範囲で患部の違和感を上限とした安全なトレーニング強度を探ること。

決して痛みに挑みかかることの無いように。

これにつきます。

どうにもならんと思えても、視点を変えれば解決の方法は見つかるものです。

この記事が故障の繰り返しに悩む方の助けとなれることを願っています。

開けぬ夜などありません。

どうしたらいいか迷ったら、一人で悩まずいつでもご相談ください。

チーム単位のサポートも承りますので、お気軽にご連絡ください。

 

とよたま手技治療院 

〒176-0012 東京都練馬区豊玉北5丁目18−10 プリマヴェーラ701

03-3994-5048 

 


四頭筋の筋挫傷からのリカバリー<第2話>

2019年02月17日 | 治療の話

だいぶ間が空いてしまいましたが、今日は昨年9/5に膝の上にバーベルを落して負った両膝の筋挫傷の回復記の続きを書かせていただきます。

と、大分前の記事なので事の顛末のおさらい。

当時、私は秋の関東マスターズ二連覇へ向けチョコチョコと練習を重ねる日々を送っていました。

怪我をした日は疲れが抜けないまま、義務感のみでGYMへ向かいました。

前回のトレーニングのダメージが残りコンディションが悪かったため、パワークリーンをチョイスしました。

そして、アップの終盤に差し掛かった時のこと。

バーベルを跳ね上げた瞬間、汗で手が滑ってバーベルを落としてしまったんです。

そのGYMはバーベルを床に落とすことの許されない場所だったので、とっさに膝でバーベルを受け止めるという暴挙に出てしまい膝に筋挫傷を負ってしまったのでした。

断裂部位は外側広筋の筋肉と腱の境目。

傷の幅は4~5cm、深さは1cmほど。

テーピングと弾性包帯で患部を圧迫しつつ、消炎剤も飲みつつ、最初の3日を過ごすと膝の痛みもいくぶん楽に…

身体のリアクションから、患部の出血と炎症が落ち着き始めて人心地ついたということが分かります。

そこで、4日目から「あるエクササイズ」を始めました…

というところまでが前回のお話でした。

 

そのエクササイズとはペルビックティルトという脊柱・骨盤・股関節の筋バランスを正常化するエクササイズです。

四頭筋の過緊張を抑える効果が高いので今回のような怪我の回復には役立つと考えたのです。

実際このエクササイズはウエイトリフターからのジャンパー膝の相談に大きな成果をもたらしています。

下の動画は「ペルビックティルト」の紹介動画です。

通常の手法に独自の工夫を施しています。

骨盤・脚の歪みを解消!腰痛・膝の痛みの予防&回復 No.1【ペルビックティルト】// 徒手医療協会

 

6日に入ると階段の下りでの痛みのレベルも軽くなってきました。

そこでヒップスラストというエクササイズも追加しました。

ヒップスラストについて、下の動画をご覧ください。

こちらも通常の手法に独自の工夫を施しています。

ざっくり説明すると、脚をガニ股にすることで仙腸関節から腰椎部の安定性を引き出す効果が高まります。

骨盤・脚の歪みを解消!腰痛・膝痛の予防&回復 No.2 【ヒップスラスト】// 徒手医療協会

このヒップスラストをペルビックティルトと併せて行うと、体軸機能が安定するため四肢の筋はリラックスすることができるようになります。

四肢の筋は速筋繊維が多く含まれるので、高いパフォーマンスを引き出すためにもリラックスした状態であることが重要となります。

つまり、上の二つのエクササイズは故障の回復にも練習や競技の際のパフォーマンスを高めるためにも役立つエクササイズなんです。

 

そうして8日目、リフティングの練習を再開します。

しかし、結構シビアな怪我をしてしまいましたので、トレーニングとしての取り組みではなく、ダメージなくできる動作を探りに行くのが目的です。

仮に患部が耐えられないような負荷がかかれば「痛み」という警報が鳴り響きます。

その手前には「怖い感じ」や「不安な感じ」が患部に現れます。

故障時や回復期のリハビリとしてのトレーニングでは患部に現れる「怖い感じ」「不安な感じ」といった違和感を負荷の上限とします。

そして、通常であれば上限が見えたらセットを組みますが、現れた上限の数値が故障前の~90%の出力に高まるまではセットは組まない方が無難です。

これはアスリートリハビリを通じて得た経験上の話となります。

もちろん怪我の大きさによって回復後のパフォーマンスにはばらつきがありますので、90%までというのはあくまで目安です。

 

さて、受傷後8日目の練習メニュー。

・ハイスナッチ:3レップで70%の重量まで。1レップで82%までできましたがここで膝に違和感が出現。

・ハイクリーン&ジャーク:クリーン3-ジャーク1。こちらも70%で違和感出現。

※スナッチもクリーンもハイでやったのはしゃがみ込む動作が小さく膝への負担が小さいからです。

動作の理解に動画を載せました↓

high snatch 40kg

high clean & jerk 40kg

 

この時点でのテーマは痛みを感じることなくできる上限を体感させること。

その利点はなんでしょう?

練習を完全にゼロにしてしまうとディトレーニング(練習をしないこと)による委縮が進んでしまいます。

すると怪我が治ってからリハビリ開始の時期を迎えたときにパフォーマンスが必要以上に低くなってしまいます。

今残っている能力を温存するために「できる範囲の能力」を確認するようなトレーニングを行うんです。

もちろん痛めた個所以外のトレーニングは積極的に行います。

これは怪我をした時の利点ですね。

普段できなかった領域の強化が復帰後の成長にプラスに働くことも大いにあるわけです。

それを戦略的に行うのがアスリートリハビリの腕の見せ所です。

また、適切な運動刺激は回復に関わるホルモンの分泌を促します。

回復を促すためにも安全にできる範囲の運動は続けた方がいいのです。

ここで注意するのは患部の出血が止まっているかどうかです。

今回のように皮膚の下の筋組織がざっくり切れている場合、血圧上昇や運動による物理的負荷で再出血するリスクがありますので、

少なくとも患部の出血が落ちつくまでは安静が必要になるということを忘れてはいけません。

その目安は怪我から1週間です。

私の場合、この時期を積極的に待つために上述のエクササイズ「ペルビックティルト」を選択したわけです。

でも、血圧をガンガン上げるようなことはしていなかったでしょう?

患部の出血が多いと回復は遅れますからね、怪我の後は時期を待つことも大事な要素なのです。

待つこともトレーニングととらえてぐっと我慢。

えっと…何の話でしたっけ?

話がそれてしまいましたね…

話を戻して8日目の練習。

この日の練習を終え、その夜も事なきを得ましたが、翌日は膝がガチガチになりました。

でも、それ自体は驚くことでもありません。

怪我をして萎えた組織に耐久限度内であるとはいえ刺激が入りましたから「強い筋肉痛」が起こったと考えましょう。

傷の周囲の元気な組織には大した刺激でなくとも、

傷ついた弱い部分には限界近くの強い刺激であったと考えれば翌日の筋肉痛が大きく強く出るのも不思議ではないでしょう?

これがダメージであった場合は練習中も痛みをこらえていたはずですし、練習が進む中で痛みが明確になっていったはずです。

それがなければ一先ず安心してOK。

患部の痛みが落ち着くまでまたじっくりペルビックティルトとヒップスラストをしながら次の練習へむけて期を伺えばいいのです。

私の練習日誌を見るとその翌日(受傷後9日目)にはベンチプレスをしていました。

ウエイトリフターはあまりやらない種目です。

でも、リフティングを安定させるために必要な前鋸筋を含め脇下の筋群を鍛えるのにブリッジを組んだベンチプレスは大きな意味を持ちます。

社会人になると練習日も十分に避けません。

すると『やったほうがいい』と分かっていてもできないまま通り過ぎるトレーニング種目もあるわけです。

怪我の時にはそうしてスルーしてきた種目に取り組むチャンスです。

他にもディップス、チンニング(懸垂)の類に取り組みました。

これらもバーベルを引き上げる際の肩甲骨と体幹との連動制を高める効果が期待できます。

つまり、セカンドの動作が安定するということです。

さらに、ディップスに関しては腱板損傷や二頭筋長頭腱炎後のリハビリにも役立ちますし、

二つのエクササイズを積むことで肩甲胸郭間・肩甲上腕骨間の安定性が高まることから肩や肘、手首への負担も減らせます。

ディップスとチンニングは一粒で二度三度おいしい優れた補強なんですね。

練習日記を見返してみても、早く治従っている当時の自分がうかびます。

さて、続きままた今度。

今日はここまでにいたします。

<続く>


新年早々ギックリ腰が増えてます

2019年01月21日 | 治療の話
このところ、やたらとギックリ腰の相談が寄せられてます。
時間の許す限りご依頼を受けさせていただきましたが、どうにも予約の枠がなくお受けできないケースが続きました。
せっかく頼っていただいたのにお応えできなくて申し訳ありません。

予約をお受けできた方の傾向として、
年末に下痢を伴う風邪を経験された方が多くいらっしゃいました。

下痢はギックリ腰の主要な原因となる大腰筋(腰椎前面に付着するインナーマッスル)の過緊張を誘発します。

何でかともうしますと、
下痢は大腸炎によって大腸の働きが落ちることで便内の水を吸収できなくなった結果の症状なのですが、
その腫れた大腸の隣に大腰筋があるからなんです。
腸の炎症の影響で過緊張を起こすんですね。

駆け込まれたみなさんはだいたいお腹の調子が落ち着いて日常に戻った辺りでギックリいっていました。
これは下痢が治まっていた(=大腸の炎症が落ち着いていた)のでしょうが大腰筋の過緊張が残ってしまっていたためと考えられます。
そうした下地があった上で急に動き出したので大腰筋の痙攣を起こしたのでしょうね。
しかも、このところ寒かった。
この寒さもお腹の風邪をされた方にとってタイミングが悪かった。

なぜか。

寒気は足下から襲います。
ふくら脛の深層には大腰筋と関連の強い後脛骨筋がありますから、寒気の影響で後脛骨筋が過緊張を起こすと大腰筋の緊張がさらに増長してしまうからなんです。
ですので年末年始の冷え込みも今回のギックリ腰増加の要因と考えられるわけなのです。

こうした理由の腰痛であれば下の動画の手法が役に立ちます。

"伸展型腰痛・アキレス腱部の疼痛のセルフケア=後脛骨筋のテニスボールマッサージ" を YouTube で見る


足の冷えにもオススメの方法ですので、ぜひお役立てくださいm(__)m

動画で紹介~ドケルバン病(親指の腱鞘炎)のセルフケア~

2018年12月09日 | 治療の話

数か月前から左の親指が痛くて動かせなくなったとご来院のAさん。

病院に行くと、左の親指をそらせる働きを持った筋肉の腱鞘炎といわれたそうです。

Aさんの故障は「ドケルバン病」という短母指伸筋と長母指外転筋の腱鞘炎です。

この故障では二つの筋を支えている伸筋支帯という靭帯が炎症の影響で縮み、

縮んだ靭帯が腱鞘ごと腱を圧迫してしまうことで指を動かせなくなり、動かそうとすると痛みも伴うようになります。

痛みは上の図の赤く描かれたあたり。

Aさんの手首もご多分に漏れず、腱鞘と伸筋支帯の交差部に圧痛と癒着が見つかりました。

 

そうした状態では、こんな動作をすると強く痛みを訴えます。

この動作、フィンケルシュタインテストといいまして、ドケルバン病の鑑別検査として有名な手法です。

Aさんのケースでは親指がほとんど曲げられず、親指をにぎろうとしただけで痛みを訴えていました。

ドケルバン病の徒手医学による一般的な治療では、締め付けられている長母指外転筋や短母指伸筋の緊張を和らげ、

腱鞘を締め付けている支帯を引き伸ばすために支帯部へ筋膜リリースやDTMを選択することが多いように思います。

当然それも大切なんですが、経験上そうした介入だけに終始すると治療の成果はひじょうに渋くなります。

Aさんの治療では上記の筋・筋膜への対処を済ませた段階で50%ほどの痛みの改善(自覚的な疼痛強度)がみられました。

ですが、親指は先ほどより辛うじて曲がりが深くなったかな?といった程度。

Aさんの手首(の筋や腱)は慢性的に過度に使われることで傷ついたものと推測されます。

そこには過度に使わざるを得ない理由となる、なにがしかの背景となる要因がるわけです。

正常な回復の道筋をたどるには、その「なにがしかの背景要因」も解消しなくてはなりません。

その「背景要因」とはなんでしょうか?

それは手根関節の拘縮です。

とりわけ親指側の手根関節の拘縮がこの障害の核となります。

↑赤丸のあたりです。

 

手根関節(主に大・小菱形骨-舟状骨間)に動きを付けたところAさんの親指は大きく曲がるようになりました。

一度患うと治りにくいといわれる「ドケルバン病」ですが、

こうした変化を目の当たりにすると原因が解消されればその限りではないのだなとしみじみ思うのです。

とはいえ、まだまだ道なまば。

まだ可動性は正常範囲の50%といったところですので引き続き計画的な介入が必要です。

つまり、今後も計画的に治療をお受けになられることが望ましいということ。

でも、関節の拘縮に対する治療はコンスタントに行う必要があるのが頭の痛むところなのです。

なんで頭が痛むって、Aさんのようなケースでは週に2~3回ほど手を入れる必要が出てきます。

かりにAさんに週2~3かいご来院いただくとすると、一か月で48000円~72000円をご負担いただくことになります。

そんな治療は現実的ではありません。

これが自由診療の難しいところ…

こうした問題を私自身はセルフケアをお伝えすることで解消しています。

幸運なことにこの手根関節の拘縮へのセルフケアはとてもよく効く効果の高い技法が見つかっています。

Aさんのケースでもその手法を紹介し、自宅での治療の継続をお願いして初回の治療を終えました。

 

その手法、じつは動画で公開しているんです。

ですので「ドケルバン病だけど練馬に通えない」そんな方もご安心くださいね。

ウエイトリフティング関連の手首の痛みのセルフケアとしてまとめた動画ですが、

ドケルバン病を含め手首の故障全般に非常に効果が高いので、手首の相談ではまっ先にお伝えする手法ですのでどうぞお役立てください。

その動画がこちらです(1分あたりからご覧になってみてください)。

【手首の痛みのセルフケア/手根関節リリース編】

※ドケルバン病とCM関節症へのケアにはこちらの動画もございます。ちょっと難しいのですが、こちらの手法もご参照ください。

【ドケルバン病・CM関節症セルフケア動画 // とよたま手技治療院】

 

さらに丁寧なセルフケアを目指すのであれば、周囲の筋への対処を展開されることをお勧めします。

さきに大きな問題として指摘した手根関節の拘縮。

その背景として、長母指外転筋と短母指伸筋と拮抗した作用を持つ母指内転筋の短縮があります。

動画の手法は手根関節の拘縮への対処法ですが、

この母指内転筋(母指球筋全般にも)の緊張を解く効果も高いので、この点においてもドケルバン病との相性がいい。

問題はその先です。

関節の拘縮は関節を動かさずに固定し続けることで生じます。

つまり、手根関節の拘縮があるということは手根関節の動きを阻害する筋緊張が長く続いてきたということなんです。

では、その筋とはどの筋なんでしょう?

それは、母指球筋と協働関係を持つ尺側手根屈筋と橈側手根屈筋です。

これらはモノをつまむピンチ動作や把握動作で共に働き、手根関節を構成する骨の位置を「つまんだ・にぎった」位置に固定してしまいます。

こうした背景要因に対してはキネシオテープでの対処がおススメです。

そちらの動画はこちら↓

【手首の痛みに効くキネシオテーピングの貼り方】

さらに、

手根骨の動きをただすことで腱への負担を解消する手法がこちら↓となります。

こちらもリフティング関連の手首の痛みに対してまとめていますので、

前半は飛ばしていただいて、1分半あたりからご覧になってみてください。

【手首の痛みのテーピング】


手首の腱鞘炎全般にも使う手法ですので、

授乳期のお母さんの腱鞘炎にもぜひお役立ていただきたい手法です。

む、Aさんの話から大きく脱線してしまいましたね(^_^;)

ともあれ、手首の故障にお困りの方のお役に立てれば幸いです。

=おわり=


ランナーズケア~中殿筋由来の臀部痛~

2018年11月08日 | 治療の話

10月に左臀部痛の相談でいらっしゃったランナーのAさん(男性)。

「中殿筋 トリガー」の画像検索結果

中殿筋の過労(trp2の部分)による臀部痛なのですが、

左の中殿筋が過労に陥る原因は右の寛骨の機能障害にありました。(←よくあることです)

「寛骨」の画像検索結果←右寛骨

Aさんの右寛骨は骨盤底筋右半側の緊張から前傾したまま固定されていました。

寛骨は前傾すると股関節の支点が下方に下がってしまいます。

すると、見かけ上、右脚は左よりも長くなります。

これを機能的長下肢というのですが、

こうしたとき私たちの身体は帳尻を合わせようとするんですね。

Aさんの場合は長くなった脚を左脚の長さに合わせようと、右下肢は膝を内に絞ったニーインという片側のX脚で代償していました。

この状態で走ると右脚での蹴りだしで身体が左へと流れやすくなり、左足の接地が強くなります。

そのブレーキとして働かされるのが左の中殿筋です。

なので、治療としては左の中殿筋の労れを癒やしつつ右の寛骨の働きを正す手立てを講じます。

 

2週毎に治療にいらして本日3回目のご来院。

今は走行中に出ていた臀部痛も落ち着き、治療前の動作分析でもほぼ問題のない状態でした。

わずかに残る骨盤や胸郭の制限(身体の癖)を外し、セルフケアを提案して治療終了。

Aさんも身体に自信ができたようでしたので、あとは症状の再発を抑えるためのセルフケアを自宅で続けていただくことをお約束いただいて、経過観察となりました。

めでたしめでたし。

うん、めでたい…

いつものことなんですが、

故障が治って卒業される患者さんを送り出すのはとってもうれしいものなんです。

ですが、

送り出した後にちょっとした寂しさを覚えたりもするんですよね…

治療に来なくてもいい状態になってとても喜ばしいことなんですけどね。

なんなんでしょうかね、このちょっとした喪失感。

これを○○ロスっていうんでしょうかね。苦笑

困ったもんだ。

冗談はさておき、

ただいまマラソンシーズン真っ盛り。

Aさんが今シーズンめいっぱい楽しまれることを祈っています。


外側大腿皮神経痛の治療

2018年11月02日 | 治療の話

【外側大腿皮神経痛とは】

外側大腿皮神経痛という故障は外側大腿皮神経という末梢神経の傷害です。

この神経は腰椎の2・3番から始まって、股関節の全面を鼠径靭帯という靭帯のトンネルの下をくぐって腿の外側の皮膚へ伸びる知覚をつかさどる神経です。

腰椎や鼠径靭帯部(図の〇の部分)で締め付けられることで知覚鈍麻や異常知覚(チクチクと痛む)といった症状が現れます。

鼠経靭帯直下での傷害はきつくベルトを締め続けたケースや極度の肥満を呈しているケースで生じやすいと考えられています。

治療としては神経の締め付けを開放し、傷ついた神経線維に正常な回復に導いてゆきます。

 

【症例】

5年以上左ももの外側の皮膚がチクチクと痛み続けると相談にいらっしゃった細身のAさん。

病院では心身症を疑われ、整骨院では腰椎の故障だといわれたとのこと。

しかし、なかなか改善が見られず…

そんな時にとよたま日記の「腿の外側がピリピリと痛む:外側大腿皮神経痛」の記事を見つけ

自身の症状は『まさにこれだ!』とご来院を決心されたとのこと。

もう3年も前の記事なんですが、残しておくものですね、文章に。

書いた甲斐があろうってもんですよ。

でも、ですね…

発症から5年以上続いているとなると『後遺障害なのかもなぁ…(-_-;)』と残念なケースが頭をよぎったりもます。

Aさんの期待が大きく見えるだけに、思った結果につながらなかった場合のガッカリした顔を想像すると

ちょっとだけ気が重くなったりもしますが、症状が後遺障害であるかどうかは治療してみなければ分かりません。

やることは一緒。

当たり前にできることを当たり前にやるのみです。

ということで、いつものように全身の機能評価を始めます。

まずは腰椎の故障なはないのかと診てみます

でも、脊柱をどんなに動かしても症状に変化はないようです。

腰椎部の動きもいいですし、どうやらこの部分の問題ではないようです。

つづいて鼡径部(上前腸骨棘という骨盤のでっぱりの内側あたり)との交差部位(図の〇の部分)を調べます。

するとAさん眉間にしわを寄せて痛がります。

「腿に痺れが広がったりしますか?」

と聞いてみると首を縦に振るAさん。

鼠経靭帯でのチネルサイン陽性(外側皮神経痛のサイン)です。

『なんだ、フツーの外側大腿皮神経痛か…』

と拍子抜けする私。

ここで見る限りごく教科書的な状態です。

これがなんで5年以上も見過ごされたのかどうも釈然としませんでしたが、ともあれ原因部位は特定できました。

あと問題となるのは、治療にたいして傷害された神経組織がどの程度のリアクションを返せるか、です。

後遺障害なのか、あるいは回復の余地があるのか、答え合わせに治療を掘り下げてゆきます。

まず、神経と靭帯の癒着を調べます。

『うん、いい感じにへばりついとるね。(^_^;)』

『これって、実に教科書的な大腿外側皮神経痛なんじゃない!?』

と、また拍子抜け。

さっそくDTMという手法で癒着をはがしてみたところ、どうやら症状も軽くなるようです。

5年以上続いた症状のわりに治療への反応はフレッシュなAさんの外側皮神経。

どこに行っても打つ手が見つからなかったと聞いていたので、

いささか拍子抜けな感もありましたが、回復の兆しを見出すことができてよかった。

セルフケアとしてDTMをお伝えして初回の治療は終了です。

あとは経過を追ってゆくことになるのですが、お会計の際にちょっとしたおまけを見つけました。

Aさん、タイトなジーンズを履いていたんです。

ご本人もうすうす気が付いていたのかもしれません。

「このジーンズが悪かったんでしょうか?」

とAさん。

曰く、いつもタイトなパンツをはいているのだとか。

そのズボンをはいたまま足を組んで座り続けでもすれば、確かに。

ベルトラインの締め付けを少し緩める工夫をしてもらうよう付け加え、今回の治療を終えました。

=おわり=


肝機能障害と足底の痛み

2018年10月27日 | 治療の話

1歳のお子さんを丸一日抱っこし続けて肩が痛くなってしまったとご来院のAさん。

私の顔を見るなり

「あ、先生!お父さん脂肪肝でした!」

とニッコリ。

Aさんのお父さんはとある分野の職人さん。

時折お身体の相談をいただいています。

確か前回お会いしたのは夏のころだったような…

そういえば、確かあの時、内科的な問題を疑ったような…

しかし、脂肪肝でよかったとは?

何か肝臓と関係した筋骨格系の症状があったのかしらん?

と記憶の糸をたどりつつ

「あ…え~…それは何より…」

と歯切れの悪い返事で誤魔化すも

『あ、わすれてんな…』

と悟られること0.1秒。

微妙な空気になるより先に

「カルテ診てきていいっすか?(^_^;)」

と白旗を挙げる私。

 

不思議なもので、カルテを見るとその日の情景がみるみる蘇ります。

たしかに「脂肪肝でよかった!」です。

 

 

▲左から正常な肝臓・脂肪肝・肝硬変

 

 

Aさんのお父さんは両側の足の裏がチクチク痛むと来院されました。

かれこれ3か月も足の裏の痛みが続いているとのこと。

お父さん、お仕事では長時間立ったまま。

足元は靴底の硬い長靴をはいています。

お父さんの足裏を診てみると、土踏まず以外が赤く、少し膨れています。

これをみて私は、はじめ単に底の硬い長靴での立ち仕事がたたって足裏が腫れたんじゃなかろうかと思いました。

しかし、お父さんはどうにも納得のいかない様子。

もう少し様子を聞いてみると、お父さんの口からは気になる症状が飛び出します。

・このところ疲れが抜けない

・足がつる

・足がむくむ

・去年から急に太った(10kg体重が増えた)

・お酒は大好きだけど、最近量が飲めなくなってきた

 

疲れが抜けなくて筋肉がつる…

お酒はよく飲むが飲めなくなってきた…

飲まないんじゃなくて飲めない?

そして足がむくんで困っている…

体重が増えたというけれど、10kg脂が付いたようには見えません。

おなかを触ってみると皮下脂肪はさほどでもなく、腹腔が水風船のように膨れています。

私の頭の中は学生時代の病理学各論の授業風景がフラッシュバックしていました。

言い方が悪いのですが、こうしたお腹を「蛙腹」と呼んだりします。

つづいて、「低アルブミン血症」「浮腫」といった単語が泳ぎだします。

そして「アルコール性肝炎」「肝機能障害」「腹水」「門脈圧亢進」という単語が不気味にちらつきます。

ぐるぐる回る単語たちの向こうに「肝硬変」の文字がうっすらと浮かびます。

 

肝硬変では消化管からの血流が硬くなった肝臓を通れずに滞るため、お腹に水がたまったり手足がむくんだりします。

そうすると太って見えないのに体重が増えたりします。(水太りっていうんでしょうかね)

この状態を門脈圧亢進といって、消化管の静脈がパンパンに膨れて食道静脈瘤の破裂なんて危険性も出てきます。

肝臓の働きである解毒作用がうまく働かなくなれば筋痙攣も起こします。

 

 

そんな私の疑念を感じてか、

「足の痛みが内臓からくるってことあるかなぁ?」

と、しきりに聞いてくるお父さん。

多分、ご自身の飲酒歴から肝臓を心配しているのでしょう。

さすがは 吞ん兵衛  職人気質のお父さん。

勘が鋭い。

 

しかし、私は医師ではありません。

検査もできなければ診断もできません。(そもそも診断権というものがありません。それがあるのは医師だけです。)

 

ですが、時に進行性の疾患との判別(つまり、自身の職域で対応していい疾患であるかの判断)はしなくてはなりません。

徒手医学では通常、内科的な疾患の影響が筋骨格系に及んだ場合、手技療法のような治療では改善が得られないといわれています。

その証拠に、食道炎の影響で起こった首の付け根(襟の高さ)の強いこり感は、手技療法や鍼灸治療でも一瞬症状の緩和が得られるも、ものの数十秒で戻ってしまいます。

そうした反応を見たときは、首の付け根のコリの原因が内科的な問題で引き起こされていたことが分かります。

これを診断的治療といいます。

こうしたときは胃薬を飲んでもらうとしつこいコリもスッキリ治ってしまいます。

といった理由から、お父さんの足の裏の痛みが消えるのか試しに治療することで内科的疾患とのつながりが判断できるかもしれない…と考えました。

 

お父さんの足の痛みは下腿の循環障害によるうっ血と浮腫が原因です。

血流を滞らせているのが単にふくらはぎの緊張であれば、緊張を解けばかかとの痛みは消えるでしょう。

門脈圧の亢進であれば消えないかすぐに戻るはずです。

治療はかかとにある失眠というツボと土踏まずの先端にある湧泉というツボにお灸をしました。

かかとへの灸は腓腹筋という筋肉の緊張緩和を狙ったもの、湧泉への灸は腓腹筋の下の深層筋の緊張緩和を狙ったものです。

 

結果、足裏の痛みは消えました…

すぐに再発する様子もありません。

 

じゃあお父さんの肝臓は問題ない?

 

いえいえ、そうとは限りません。

 

諸症状を俯瞰すればアルコール性肝炎なんかも心配です。

肝機能が低下していれば浮腫も起こります(低アルブミン血症)し、筋痙攣も起こります。

さらに言えば、

内科疾患の影響によって生じた整形外科的障害(症状?)にたいして

徒手医学的アプローチ(保存療法といいます)を施すことによる身体のリアクションの話は、

あくまで経験則の範疇の話できちんと証明されているものでもありません。

個々の状況によっては「手技療法で消える痛みだから内科的疾患ではない!」とは言えないケースもあるはずですし、今までも実際にありました。

 

得られた所見を見渡して肝機能障害が疑わしいならば、やっぱり検査をお勧めするべきでしょう。

 

医者でもない、ただの鍼灸マッサージ師の私の言うことがどこまで通用するのかわかりませんでしたが、

きちんと病院に行っていただけるようAさんにお父さんのお身体についてご相談させていただいたんです。

 

で、ようやく冒頭のやり取りに戻るわけです。

 

心配していた「肝硬変」ではなく「脂肪肝」だったということで、一先ずはほっと胸をなでおろしたということです。

でも肝機能の低下はあったということですし、肝硬変の前段階でもあったわけですからしっかりと治療しなくてはなりません。

食事制限、辛いだろうなぁ…

お酒を豪快に飲んでいただろうお父さんの顔を思い浮かべて気の毒に思う秋の日なのでした。

=終わり=


治療効果は治療手技では決まらない

2018年10月19日 | 治療の話

ふと勉強会のHPを見ていたら、五年前に書いた文章が目に留まりました。

そこにはこんなことが書いてありました。

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治療法のセミナーをしていると、「このテクニックであれば何日間痛みを止められるのか?」といった質問を受けることがあります。

この回答となるかは定かではありませんが、私は「テクニック自体が痛みを消す力を持つものではない」と考えています。

そもそも痛みというものは、

日常で頻回に取られる姿勢や動作によって癖付いた筋膜などによって力学的な負荷の偏在が生じたり、

関節する骨同士の回転中心が狂うなどの異常運動が生じて過負荷にさらされた組織に損傷を生じたり、

過緊張に陥って循環障害をきたしたりするなどの経緯で発せられます

(もちろん他にも痛みが生じるシチュエーションはあるでしょう)。

それゆえに、

痛みを止めるには傷害局所への負担を除くために、

局所を含む「全体の機能」を正常化すること(力学的負荷の最適な分配ができる状態を導き出すこと)

が大前提となるのです。

つまり私たちの行う治療とは「傷つき痛む環境を正す」ということが主眼となるのです。

力学的な負荷が正しく分配されるならば、組織は正常な修復の過程を進むことができます。

また、正常な成長を遂げることもできます。

テクニックはそのための道具にすぎません。

そして、道具の効果を引き出すには適材適所、最適な使い分けがなされることが肝要です。

そのために、治療の際に最も重要なのは「評価」だということになります。

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そうなんですよ。

治療の成否は治療手技では決まらないんですよ。

大事なのは問題を読み解く思考力なんですよね。

もちろん技もなきゃだめですが、それは専門家としてはあるのが前提の話ですからね。

5年前の自分に激しく同意です。

でも…

なんでしょう!?

このころの自分が頭よさげに見えるのは気のせいでしょうか…(-_-;)

ひょっとして、今の僕、頭悪げ!?

これはちょっとふんどしを締めなおさねばいかんですね。

12月に大阪で腰痛症の治療についての講義も控えてますからね。

がんばろ。


天気痛-後編

2018年05月22日 | 治療の話

前回から少し(だいぶ?)時間が経ってしまいましたが、天気痛後半戦をお送りします。(前回の記事はコチラ「天気痛」) 

前回は気圧の低下が関節の安定性に及ぼす影響についてお話ししましたが、今回は細胞の膨張についてです。

富士山の山頂では持って行ったお菓子の袋がパンパンに膨らんでしまうそうですが、私たちの細胞も気圧が下がると膨らんでしまいます。

すると血管や神経の通る身体の中の隙間は狭くなってしまいます。

「古傷」と呼ばれるような部位では後遺障害として関節の不安定性が大なり小なりありまして、

それをサポートするために普段から筋緊張が高かったり、

受傷当初の名残としてダメージを受けた筋膜が縮んでいたりしていて血管や神経の通り道が狭い場所がでてきます。

そうした部分では気圧の低下に伴う細胞の膨張によって血管や神経に圧迫を生じ、血流障害(うっ血)や神経圧迫による「痛み」が起こりやすいのです。

ギリギリで無症候にとどまっているようなケースでは、天候の悪化にともなう気圧の低下の影響を受けるたびに血流障害による代謝産物の蓄積で痛みを生じたり、神経の圧迫による神経障害としての痛みやしびれが現れることになります。

筋緊張性の片頭痛なんかもいい例です。

通常こうした故障を抱えるケースでは、頭位前方姿勢など、骨格で上手に頭を支えることができない姿勢が筋膜組織と関節に定着しています。

無理な姿勢を解除できないために、首筋から肩の筋肉たちは慢性的な疲労に陥っています。

筋の緊張が強いと筋内の脈管(主に静脈やリンパ管)は圧迫を受け循環障害を生じ、

その患部にむくみが生じると同時に代謝産物が溜るので重だるい痛みが生じます。

それが僧帽筋や胸鎖乳突筋といった頭を支える筋肉に起こると関連痛としての頭痛や血管圧迫のリバウンドとしての血管炎に由来する頭痛が現れることがあります。

 

話はちょこっとそれますが、

上記のケースでは姿勢の崩れやその背景の筋バランスや関節周囲の柔軟性(支持性ともいえますが)のムラが巡り巡って痛みを生んでいるんですね。

こうした故障を「機能障害」と呼ぶんです。

機能障害というものは筋緊張のバランスの崩れであったり、支える組織の柔軟性のムラによって関節運動が狂った状態ですのでレントゲンでは映りません。

関節の可動範囲や周囲筋の力の入り具合、腱反射や知覚を調べることで判断が付くものです。

それすなわち、鍼灸治療やマッサージ、カイロプラクティックやオステオパシー、運動療法(理学療法)など代替医療の守備範囲。

それを踏まえつつ話を戻します。

 

そうした機能障害の状況にある首筋や肩に低気圧による細胞の膨張が起こるとどうでしょう。

固く締まった筋肉が更に富士山頂のポテチの袋のようにパンパンに膨れたら?

当然、脈管や神経への圧迫は強くなるわけです。

普段は辛うじて痛みを生じないレベルに収まっていたとしても、気圧の低下に伴って機能障害の度合いが深まり、周囲の知覚神経への代謝産物の蓄積や物理的圧迫による刺激が「痛み」へと変わるというわけなのです。

 

ではどうすれば天気(気圧の変動)に振り回されずに済むのでしょう?

もうお気づきかと思われますが、天気痛のバックグラウンドには必ず機能障害が潜んでいます。

であれば大本の機能障害を解消すれば天気に左右されることはなくなると考えることができます。

長い間天気痛に悩まされている方には

「古傷だから仕方ない…」

とあきらめている方も多いと思います。

でも、あきらめるのはまだ早い。

やりようはあるんです。

現に私の膝も腰も雨降りを教えてはくれなくなりました。

「古傷だから…」と諦める前に、ぜひ一度ご相談いただきたいなと思います。

以上、天気痛のお話しでした。


天気痛-前編

2018年05月22日 | 治療の話

見上げる空が晴れ渡る青空であっても、

天気予報が「今日は晴れる」と言っていても、

『今日は降る…』

と、確信をもって傘に手を伸ばす…

 

若かりし頃、私にはそんな時期がありました。

何故わかったのかといえば当時悩まされていた左膝と腰が痛むから。

こうした気象に影響を受けて生じる痛みに最近名前が付いたそうですね。

その名も「天気痛(気象痛とも)」

今日はその天気痛のお話しです。

 

天気痛は何も捻挫や骨折のような外傷の跡だけが痛むのではなく

頭痛や肩腰の強いコリ感のような不定愁訴も含まれます。

それらの故障達の共通の背景は何でしょう?

それはズバリ、低気圧です。

例えば関節痛。

もともと関節の中の圧力は外気圧より低く保たれていて関節する骨同士をひきつけ合って安定しているんです。

これが低気圧になるとどうでしょう?

関節同士、引き合う力が弱くなりますので不安定になるんです。

そうなるとグラついた関節を守るため、関節周囲の筋肉はいつもよりも強く関節を支えることになります。

「古傷」として痛む関節は回復したと言っても正常な関節に比べて不安定な傾向にあり、周囲の筋緊張もアンバランスになりがちです。

これが「古傷」を引きずった状態です。

そうした関節が上記の状況に置かれればどうなるでしょう?

昔の故障の傷跡として残った支えの弱い方向へガタガタとグラつくようになるんですね。

それを防ごうと過度の緊張してきた筋肉は普段以上に頑張らなくてはならなくなりますから、過労や痙攣に由来する痛みを訴えるようになるんです。

 

低気圧は他にも循環障害に由来する痛みも引き起こします。

おっと、もういい時間ですね。

続きは次回。


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