さて、たぶんこれで完結編。
「そもそも論としてフォアに拘るべきか?」といったところも踏まえ
身体の特性に合わせた走り方についての考察です。
そう、考察なんですよね。
なので、私の個人的考えであることをお忘れなく。
今までを通してまとめるならば、
フォアフット走法は「身体をバネのように使う点」が運動の効率化の肝となっているようです。
(詳しくはフォアフット走法と腸腰筋由来の股関節(鼠径部)痛 =その2= =その3=をご参照ください)
では何がバネとなるのかと言えば、主には腱そして筋膜となるでしょう。
腱は靭帯や筋膜と同じくコラーゲンという蛋白の線維で出来ています(※筋膜は少量のエラスチンというゴムのような繊維も含まれてます)ので、
前出のネグロイドやコーカソイドの関節周囲の靭帯の発達の良さを考えれば、彼らは腱も強いのだろうと思われます。
逆に、関節の柔らかな、つまりコラーゲンの発達の弱い方(多くの日本人⁉)の場合、腱の発達も弱い傾向にあるでしょう。
そうした場合は、腱や筋膜などのバネを使うよりも骨格を上手に使った走り方の方が合っています。
骨格を使った走りとは、関節を複合滑車装置として使うことで運動の効率化を実現している走りだとご理解ください。
複合滑車は定滑車という位置を変えない支点と動滑車という位置を変える支点が組みになった滑車装置で、
一組の複合滑車で伝わる力を2倍にすることができます。
いくつも合わせれば4倍6倍…と力が強くなってゆくわけです。
それを踏まえ…
筋肉と関節は滑車装置だと言われています。
これを複合滑車装置として使うにはどうすればいいのでしょうか?
私の見解では、
関節ではなく胴体・太もも・すねといった節々の中心に定滑車としての運動中心を作り、
股関節・膝・足首は動滑車として定滑車をつなぐライン上に寄せる、もしくは離すといった運動をすれば複合滑車としての作用を得ることができると考えています。
では、そうした走りとはどんな走りなのか?
それはずいぶんと前に流行った「ナンバ走法」が良い例だと思います。
私はあの走りは骨格を主として筋(筋膜ユニット)を従として使った走りだと解釈しています。
ちなみに、
どちらの走り方も重力を上手に味方につけることが大切な条件となると思われますが、
フォアはバネを使って跳ねることで重心を引き上げ、そこから得た位置エネルギーを落下による運動エネルギーに変え、またその接地時の床からの反力をまたバネによって加速させることで走るという運動を効率よく継続させている(と考えている)点と
ナンバは重心を引き上げずに倒れこむことで位置エネルギーを運動エネルギーに変え、倒れる前に次の脚(という骨組み)を継いでゆきつつ、それらを複合滑車として身体を連動させる中で倒れた分の位置エネルギーを補い、走るという運動を効率よく継続させている(と考えている)点で
対照的な走法だなって感じます。
…伝わりにくいでしょうね、字だけだと。(-_-;)
フォア=重心を斜め上方へと跳ね上げる
ナンバ=重心を斜め下へ転がす
そんなイメージです。
え?
よくわかんない⁉
ま、仕方がない。
そこのところが知りたい人は、治療院にチューニングを受けに来てください。
話は戻って…
治療家目線でモノ申せば、
走り方を変えたことで故障をしてしまうと、ついその走り方が悪いのか?と考えられてしまいがちですが、
そうではないのですね。
フォアは腱や筋膜の(コラーゲン線維)の弾性を利用するエネルギー効率の高い走りであることは間違いない。
ナンバも骨格を複合滑車として利用するエネルギー効率の高い走りであることは間違いない。
大切なのは自身の身体の特性に合った走り方を選んだかどうか、だと思われます。
世界的に長距離の早い外人さん達が皆フォアフット走法が得意だったとしても、
彼らの身体特性というものもあっての「効率的走法」ですから、
足首の軟らかい方の場合は「ナンバ走り」のようなスリ足に近い方法の方がよいかもしれません。
というのが私の意見です。
でも、フォアフット走法の優れた点も手にしたい!
と考えるのであれば、それなりの準備をすればよいでしょう。
フォアでケガを負う方はその走り方をするための構造物、つまりは腱の強度が間に合っていない点と、
反射的で強い筋力発揮を含む運動全体をコントロールできてないことに問題があるとみています。
※それに関しても「腱の強度」に依存しているのではないかと思いますが、それもいまは置いておいて。
フォアを自身の走りのプラスにしたいのならば、件の故障(腸腰筋の故障)の背景となる
「過労して縮みあがったふくらはぎ」からの異常運動の連鎖、これを止めるための準備が必要です。
あ、ここで「話が飛んだ」と感じた方はシリーズ全般をご覧になってくださいね。
下腿の筋腱をしなやかに鍛えるには縄跳びも良いでしょう。
腸腰筋にばかり負担をかけないようにするためには脚全体を丁寧にコントロールできていることも大事です。
それにはバランスツールを使ったスクワットやランジといったトレーニングもお勧めです。
そうした方法は、またの機会にでもお伝えできたらな、と思います。
興味をお持ちいただいた方はお気軽にご相談を。
以上、「フォアフット走法と腸腰筋由来の股関節痛完結編」でした!