変形性股関節症(右)のAさん。
今日は階段を右脚から登ろうとすると「内もも」が痛むとのこと。
試しに20センチほどの台を登っていただくと、鼠径部辺りに痛みが出ていると言います。
登る間際に、右の股関節からちょっとだけ身体が左に傾きます。
この動きの狂い(トレンデレンブルグ徴候といいます)から、
① 大臀筋や中臀筋辺りの筋力が十分に発揮できない
② 内転作用を持つ筋群の緊張亢進や短縮の可能性
そんな問題があるだろうことが伺えます。
また、痛みの領域と痛みの生じるシチュエーションからは内転筋か腸腰筋の故障が怪しい。
どちらの筋のトラブルかを調べる前に、①の可能性を調べるために
こんなことをしてもらいました。
左の掌を上に向け肘を引いてもらうんです。
こうすると右の股関節の伸筋の働きを高めることができるんです。
Aさんはこの腕の形をとると、痛み無く階段が登れると言います。
トレンデレンブルグ徴候も消えています。
ということは、痛みの原因に右臀部の筋力不足が関わっているということになります。
つまり、「筋トレも必要よ♪」ということです。
さらに調べてみると、
やっぱりありました!
恥骨の近く、長・短内転筋腱あたりに痛みの根源「トリガーポイント」が見つかりました。
やるべき方向性がまとまったところで治療開始です。
まず徒手的な治療として、以下を行いました。
・痛みの出所への治療(内転筋のトリガーポイントを解除)
・変形して動きを失った股関節への治療(拘縮の緩和)
・股関節へ無理をかける不良姿勢への治療(身体各所の機能障害の解除)
ここまでの治療を終えたところで、鼠蹊部の痛みを再確認します。
自覚的な痛みは1~2/10、ほとんど痛みは感じられないとのことでした。
しかし、トレンデレンブルグは若干残っています。
ここで今度は、セルフケアの指導に移ります。
私としては極力簡単にできて、痛みを抑えるのにも役立つものをチョイスしたいと考えています。
なので、痛みが残るうちに(場合によっては治療前に)
セルフエクササイズ自身で痛みが変化するかどうかを観させていただくことがあります。
Aさんの場合、股関節の変形のため、内腿の筋肉たちが縮みやすく、
お尻側の筋肉が上手に使われず萎えてしまいやすいんですね。
そこで、セルフケアとして臀筋のトレーニングを行います。
寝転んでできる方法なのですが、
ほんの6回、エクササイズをこなしたところ
見事痛みは0/10に、そして動きの狂い(トレンデレンブルグ徴候)も見えなくなりました。
そこから今度は機能訓練です。
つまり上手に働けないでいる臀筋の働きを取り戻すためのトレーニングに移ります。
とよたま手技治療院では、KINESISというケーブルマシンをよく使います。
再度、階段での痛みが出ないか?
うごきの狂いは改善したか?
セルフエクササイズは上手にできているか?
をチェックをし、ここまででようやく治療終了です。
と、いつもこんな感じで治療をしています。
今回この記事を書いたのは、
変形性股関節症の患者さんへのアプローチ(治療)を患者さんにご紹介したかったのと
同業の先生方、特にクリニックに勤務されている先生方に、
筋膜のつながり合いをどのように臨床で活用するかのヒント、一例となるかと思ったためです。
臨床で見つけたちょっとしたことですが、多くの皆さんのお役にたてたら良いなと、
そう願っています。
<補足:ご同業の先生方へ>
筋膜の繋がりとしては、
バックファンクショナルライン(後機能線)とスーパーフィシャルアームラインを( byアナトミートレイン トーマス)
後面深層アウターユニット( byペルビックアプローチ ダイアン)とディープフロントアームライン( byアナトミートレイン トーマス)
を参考にしてください。
仕組みとしては、オーバーフロー効果をヒントに考えてみてください。