さて、01で「二部構成で…」などと言いながら、気が付けば3部構成になってしまった「肉離れ」も今回でようやく完結できそうです(;^ω^)
と、その前に前回のおさらいを少々。
前回私は
瘢痕組織と筋繊維とのあいだに生まれた「強度の格差」が「肉離れの再発」の原因と考えられ
「強度の格差」を是正することで肉離れの再発を防止することができるということになるだろう
というところまでお話ししました。
今回は、その「強度の格差」を是正するための手法についてお話しします。
「瘢痕」「筋組織」双方の組織間の「強度の格差」を正常化するということは具体的にはどういうことなのでしょうか?
それは、瘢痕を正常な組織へと置き換える作業を身体に促すということです。
手技療法にそんなことができるのか?
と思われる方もいるかもしれませんが、多少の時間はかかるものの決して不可能なことではない
というのが私の出した結論です。
私たちの身体に起こる通常の治癒過程では、
まずはじめに細いコラーゲンの繊維で傷をふさぎ、
次いでコラーゲンの繊維が太く成長するなかで断面同士を強固に引き寄せつつ、
その一方で傷跡を形成するコラーゲンの塊を吸収しながら新生した血管や筋繊維を傷跡に潜り込ませ、
最終的には正常な組織、つまり筋繊維や血管や神経を再配置して、不要なコラーゲン繊維の塊は吸収されて修復完了!
となります。
しかし、
残念ながら傷が大きいとコラーゲンの再吸収と正常な組織への置き換えが上手に進みません。
患部が治りきる前に運動を繰り返し、新たな傷が累積するような状況が続くケースも然りです。
治した先から壊されているわけですし、新たなキズが刻まれるたびに瘢痕組織も分厚く大きくなってしまいますからね。
治癒力の許容範囲を超えるような「大きな瘢痕組織」が出来上がってしまった場合、正常な組織に置き換えるのを身体が諦めてしまうこともあるんです。
手術の後の術創などはそのよい例でしょう。
しかし、だからと言って諦めるわけにはいきません。
こちらとしてはふたたび元気にスポーツを楽しんでもらうためにも、身体に正常な組織への入れ替えを完了してもらいたいわけです。
さて、この状況を打破するためにはどうすればいいのでしょう?
そんなときに役立つのが「DTM」という手法です。
DTMとは
Deep-深部
Tranceversuse-横断
Massage-揉捏法(マッサージ)
の略で、筋繊維を横に横断するように揉みしだくという、ある意味とてもシンプルかつ原始的な手法です。
このDTMは主に組織の繊維化や癒着を解消するのにつかわれる技法で、「肉離れ」の治療では組織の炎症が消退した時期を見計らって使用します。
非常に原始的な手法なのですが、実際の治療経過を見る限り「肉離れ」には相性の良い治療です。
DTMを施すことでなぜ瘢痕組織の吸収が再開されるのかは想像の域を出ませんが、
恐らくはDTMを施すことで瘢痕組織を構成するコラーゲンの塊が瓦解され(ほぐされ)ることが組織の新生のきっかけとなっているのだろうと考えています。
組織の修復の初期段階では傷口に露出したタンパクに遊走細胞(免疫細胞)が食いつき傷の断面を綺麗にしてから種々の治癒反応が展開されますので、DTMによって瘢痕組織が壊されることがきっかけとなってコラーゲンの再吸収が始まり、肉芽組織の入り込む隙間が作られ、組織の新生を促すことにつながるのでしょう。
上記はあくまで推論なのですが、私自身の治療経験を顧みる限りは「肉離れ」を繰り返す症例がDTMで順調な回復がみられる例は非常に多いので、そう的の外れた話ではないと考えています。
以上、「肉離れの治療」についてのお話しでした。
「肉離れ」でお困りの方がいらっしゃったら、一人で悩まずにお気軽にご相談ください。
~おわり~