6/23日の話なのですが、東京医療福祉専門学校の卒業者(柔道整復師・鍼灸師・マッサージ師)を対象とした研修会で
「腰痛治療の実際~大学生アスリートへのケアサポートから~」というタイトルで
腰痛治療の講義をさせていただきました。
腰痛といってもその原因となる病態は様々です。
ですので個々の病態の理解ももちろん大事なのですが、
治療において重要な足掛かりとなるのは「○○症」といった病名ではなく「障害された機能」の把握です。
屈曲・伸展・側屈・回旋各動作を確認し、協調性を失っている部位を割り出し、
その上で故障との関連を整理すると治療の方向性を定めることが容易になります。
腰痛症であれば、まず屈曲・伸展・側屈・回旋各動作においてどの動作方向でどこにどのような痛みが生じているのかを確認します。
そして疼痛誘発がみられる動作において、全体の連動性(機能)が損なわれているのはどの体節なのかをピックアップします。
最期に傷害組織を判別し、治療的介入が許される時期(炎症の落ち着いた慢性期にあるのかどうか)なのか
あるいはそうでないのか(適否の判別)の判断をし
患部の治癒を促進するためにどの部分の何を変えてゆけば良いのかを判断してゆきます。
2時間という短い時間ではありましたが
皆さん現場で長く活躍されるプロの方々でしたのでスムーズかつ楽しみながら実技を習得されていらっしゃいました。
嬉しいことに翌年の講義のご依頼もいただきまして、
これからも自身の臨床を通じた蓄積から治療業界へ貢献できるよう精進しようと気持ちを引き締めた、そんな一日となりました。
こうした場をご用意いただきました厚生労働大臣認定 学校法人 常陽学園 東京医療福祉専門学校様に心より感謝申し上げたいと思います。
当日お話ししたのは以下の項目です。
興味をお持ちの方はどうぞご覧ください。
講義のご依頼はこちらへお願いいたします。
〇腰痛の内訳
トリガーポイントや肉離れ後の瘢痕といった筋膜由来のもの
椎間関節や椎間板などのダメージによる関節由来のもの
〇各内訳
筋膜由来:T11~L1胸腰移行部レベルの起立筋・中殿筋・大腰筋・ヒラメ筋(レアケース)・腹直筋(レアケース)
関節由来:椎間関節のインピンジメント>椎間板症>ごくまれに椎間板ヘルニア
-解説-
傷害の多くは筋膜由来の故障から始まり関節の故障へと移行する。
背景は関節の異常運動や不安定性。
故障を未然に防ぐには個々の関節の安定化と全体の協調性(連動性といってもいい)を維持することが重要。
これに対して、徒手医学的手法をパッケージ化したパフォーマンスチューニングというプログラムを提供している。
運動部のウォームアップに導入後、膝・肩・腰(関節由来)の故障が大幅に減じた。
〇腰痛治療の指針
腰痛治療において損傷部位や障害名ではなく痛みが再現される方向ごとに分類する。
これはシャーリーシャーマンの考えを参考としている。
=各論=
-屈曲型腰痛-
・前屈動作で痛む
筋膜:起立筋・ヒラメ筋
関節:椎間板(椎体間関節)
-伸展型腰痛-
・伸展動作で痛む
筋膜:大腰筋・腹直筋・ヒラメ筋
関節:椎間関節
-側屈回旋型腰痛-
・側屈回旋動作で痛む
筋膜:中殿筋・腰方形筋(深層の繊維=肋突起の圧痛点)
関節:伸展側屈=椎間関節・屈曲回旋=椎間板
解説
疼痛誘発動作の中で患部以外に連動できない部位がある。
患部はそれら連動性を失った体節の機能を過剰に代償して損傷している。
患部の瘢痕や拘縮の解除や支持性の回復はしなくてはならないが、
背景要素となる周囲体節の機能障害を見過ごしては再受傷の連鎖を止めることは叶わない。
〇タイプ別治療ポイント
ここは当日参加された先生のみぞ知るところとさせていただきます。
〇筋膜由来か関節由来か~鑑別のポイント~
筋膜由来:当該筋膜が引き伸ばされるときや収縮したときに痛みが現れる。
トリガーポイントなどの慢性痛では特定の関連パターンを表す。
関節由来:当該の関節が衝突する際に痛みが現れる。
痛みは関節に限局している。(神経へ波及している場合は下肢への放散痛も伴う)
〇急性か慢性か~適否の鑑別~
疼痛部位の発赤・熱感・腫脹・圧痛を診る/自発痛の有無を問う/痛みの性状を問う(ズキズキ=急性)
バルサルバ手技にて増悪を見るかどうか/疼痛誘発動作の反復による痛みの増減をみる(疼痛緩和=慢性期)
〇実技
治療手技=腸腰筋の弛緩法 / 運動療法=腹壁および臀筋の促通技法
以上です