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Pretenderの備忘録

考えあう技術

2005-03-24 22:26:07 | 読書
あとがきの最後に、苅谷先生が、「本書が、学ぶことの意味を、個人化の呪縛から説くきっかけになることを願っている」と書いている。

苅谷剛彦先生と哲学者の西研さんの対談。
ゆとりある教育の根本にある「内発的動機」、個人の関心だけに重点を置く考え方を鋭く批判する。それが日本的な同調圧力の賛辞にならないように、「自由な社会」で生きる個人の力量を身につけるための教育という位置づけである。他者との関わり、社会とかかわって生きるために必要なものを身につける、「ゲームに参加できる」技量を身につけるという考え方だ。感じていながら言語化できなかった人もいるだろうし、気づいていてもいえなかったという人もいるだろう。ズバッといってくれたと思う。無責任な個性重視教育論者は読んで、今の社会状況を考えて猛省して欲しい。

ただし、二人はかなり理想を見ているのも事実だし、エリート教育を論じてはいないが、かなり教員のレベルが高いことが想定されていないかという印象は否めない。

ちなみに、ここでの主張から、より教養的なものをそぎ落としたのが大前研一の教育論で、義務教育で最低限の社会生活のルールと自動車免許をやればいいということになる。

ここを出発点に皆が考えあうことが出発点であろう。僕もここにあるような内容が自分の言葉として語れるようになりたいと思った。

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エレクトラ 東京オペラの森 小澤指揮

2005-03-22 22:17:39 | 音楽 Opera
今年から始まったオペラ祭り。今年はシュトラウス、来年はヴェルディー、2007年はワーグナーとまで既に決まっている。毎年異なる海外の歌劇場と提携する。
サイトウキネンフェスティバルは松本でもう10年以上になるが、小澤さんがウィーンに行く前は正月に上野でサイトウキネンのマーラーシリーズが二回ほどあった。2番と9番で、1月2日からで凄い緊張感ある素晴らしい演奏だった。それ以来、イベントがなくてなかなか東京では小澤さんを聞く機会もなかったところ、新しい企画。実行委員長に日テレの会長、他に元芸術家の都知事等が名を連ね、発起人には、富士通、ソニー、日本IBM、東京電力、野村等々の大企業が並ぶ。さらに協賛企業としては、JAL、IIJ、楽天その他と凄い。でもチケットは僕のC席(最上階5階の真ん中最前列、といっても二列しかないが)で23000円。もう少し何とかならないのか。結構空席もあり、これは協賛企業等のあまりなのかなあ。
この会場では改装後は冬のサイトウキネンとかバレンボイムのシカゴ、飯守のベートーベンチクルスなんかに来たが、1階の良い席ばかりだったので、5階というのは初めて。メトの天井桟敷よりも圧迫感はある。でも音はきれいに聞こえるし、舞台は見下ろすがオケピまで見えるというオマケあり、笑。
エレクトラは暗い話であるし、Metで観た時も、昨年の新国も、舞台はシンプル。しかし、今日はシンプルを極めたというシンプル。真ん中に扉をイメージした舞台下に続く階段があるだけの黒い一面の舞台。出演歌手もほとんどが黒で、他に白くらい。照明を使って、他は表現するという舞台だった。ダンサーを使ってその表現も大きかった。新国も野田のマクベスなんかも凄くシンプルだったけど、オペラはそういうのが流行なのかなあ。ゼッフェレリの演出を次々と90年代に観てきたものとしてはちょっと違和感。まあ、エレクトラはこんなもの。
さて、肝心の舞台。歌手は素晴らしかった。デボラ・ポラスキの迫力ある声量、アグネス・バルツァの艶やかな声。Metで聴いたベランスやボイトの印象が強かったが、ポラスキも伸びやかに声量があるし、陰影のある表現もいい。
オケはサイトウキネンの中堅どころが中心。オーボエの宮本さんとフルートの工藤さんは例外的大御所で、あとはサイトウキネンではパートの首席の次くらいの人たち。ピッタリと息が合って本当にうまかった。寸分の狂いもなく、ダイナミックに、美しく、不安定な曲を安定した技術で見事な演奏だった。席からオケピが観え、終了後、小澤さんがあの狭いオケピを隅々まで歩いて全員と握手してるのを見て、彼のマネジメント能力を見た気がした。先日の大植さんはこういうのも小澤さんから学んだんだろうな。
文句なしに素晴らしいオペラでした。

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マーラー6番 大阪フィル 大植指揮

2005-03-20 18:19:34 | 音楽 Classic
最晩年の朝比奈のサントリーでのベートーベンを聴いたことがある。ゆったりとした指揮と演奏で、これが「円熟」というものなのかと思いながらもオケのレベルはグローバルはもとより在京の楽団と比べてもと思ったものだ。
今日の演奏も正直、それほど期待してなかったし、花粉症も酷かったしで。
一言で言えば凄いと思う。これだけの水準に2年かそこらでよくオケのレベルを上げたと思う。指揮は非常に正確で、齋藤先生に習ったままを敢えていじらずに基本形で大きくわかりやすく振っている感じだ。オケがそれにしっかり付いていっている。抜群にうまいというわけではないのだけど、弦にしても管にしても安心して聴いてられる。きっちりしたマーラーだった。第一楽章の翳りのあるスピード感、第三楽章の美しさ、第四楽章のフィナーレと引き込まれた演奏だった。
大阪フィルとは設立の経緯を見ても朝比奈隆の楽団だった。朝比奈の名前で持っていた。そこに来て2年かそこらで、レベルをここまで上げた手腕は凄いと思う。またアンコールの拍手に応える様子を見ると楽団員としっかりコミュニケーションをはかって、楽団を掌握しているのがわかる。この人が、もっとレベルが高いオケを振った場合にどうなるのかの一つの答えが、今年のバイロイトでのアジア人初の「トリスタンとイゾルデ」だろう。広島出身ということもプラスだろうし、非常に小柄というのもいいのかもしれない。新たなヒーローが生まれる予感がする。
小澤先生が今年70になる。小澤ブランドで売っていたサイトウキネンも岐路に立たされる日が近づいているのは事実だ。この楽団マネジメント能力とスター性、後継者レースに間違いなく名を連ねるのではないか。

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歌舞伎 十八世中村勘三郎襲名

2005-03-19 17:12:49 | 歌舞伎
猿若江戸の初櫓。勘太郎の猿若に福助の阿国。本当は七之助だった。勘太郎は明るく軽快に演じていた。この明るさは父親譲りか。扇雀が殿様で出ていた。最近は、嫌味な女形が本当に板についてきているので、智太郎時代をふと思い出した。
平家女護島。幸四郎の俊寛。まあ予想通り。前半は動きが小さくこの人らしい歌舞伎。後半は異常に動きを大きくした心理劇という感じで、ラマンチャの男のよう。梅玉の丹左衛門は、海老蔵が演じてもいいなと思った。瀬尾は左団次の当たり役を段四郎が。他に、秀太郎、魁春、東蔵ら。
口上。芝翫が後見。幸四郎がよくしゃべった。驚くほど先代のことについてよく喋り、へーえという感じだった。雀右衛門さん、富十郎さん他、玉三郎、仁左衛門と豪華な口上であった。七之助がいないのは残念だったろう。福助と仁左衛門がサラリと触れていた。
一條大蔵譚。これは勘三郎のためにあるような芝居だろう。雀右衛門、玉三郎、仁左衛門となんとも豪華な芝居。また見せ所もあるし、スジとしてもわかりやすく面白くて、襲名にふさわしかったと思う。


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マーラー5番 東京シティ・フィル 飯守指揮

2005-03-18 22:09:54 | 音楽 Classic
当日売りで行く。一応電話で確認して、今日の会場がオペラシティであると知る。普段は上野の文化会館。この時期は、小澤征爾のオペラで使用しているのだ。
コンサート前の指揮者のプレトークは最後の方だけ聴くことができた。指揮者自らがピアノで旋律を奏でながら解説していた。
第一楽章。金管もすんなりと出て、順調な滑り出しだ。第二楽章も含めて、打楽器が入ると弦の音がよく聞こえないようなカオスの状況になる。ホールのせいもあるのだろうか、非常に打楽器や低音が響く。第三楽章、すっきりと安心感のある金管とは言えないがそつなく。第四楽章はそれなりにキレイに。透明感というイメージではない。最終章は木管が少し不安定であったが、やはりカオスの状況を表現していた。
このオケで飯守さんのベートーベンチクルスに5年くらい前に通った。さらっと聴けるベートーベンだった。やはり同じ頃、井上一義の新日本フィルのマーラーチクルスにも通った。メリハリをつけた、つけすぎもあるような、ダイナミックなマーラーを目指しているのが良くわかった。今日のマーラーは、やはり、カオスもあったが、基本的にはさらっと聴けるマーラーだったような気がする。

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