良いお天気になった。初めて外套を脱ぎ捨てて、軽装で外に出かけた。いい気なものである。まだ北国では寒かろうに。そして、愚生はその北国の育ちではないか。同胞たちにどうやって言うべきか。謝るすべを知らないという自省の念にかられる。
在籍校の院生室や図書館にずっといた。ここのところ私的な用事で、通学できなかったからである。明日も千葉市に出かけなくてはならない。10時から、郷土史の研究紀要の編集会議である。午後は、文化講演会と古文書学講座(近世の)があるから受講しなくてはならない。まだまだ素人である。不勉強であるからやるしかない。一日かかる。しかし、うれしいものである。一丁前になったといううぬぼれを破壊してくれるからである。おめぇなんか、ハンパモンじゃぁねぇかとせせら笑っているデーモンが、そのへんにいるような気がしてならないのだ。はははははっははである。
当然である。愚生ごとき、うぬぼれていたら、話にならん。今でも屁みたいなくだらない駄文を書いて、自称論文と言っているんだから、これじゃあデーモンも呆れかえるなぁと実感している。
新しい視点の下、いろいろと文献を漁っていると、いかに読書量が不足しているかということがよくわかる。話にならない。もう人生に残されている時間が圧倒的に不足している。正直焦る。一つの研究分野ですら、まだまだ入り口を徘徊しているだけであって、なにをしているんだろうと思う。
唯一救いはある。それは、何かになろうとしているのではないということである。これで食っていこうとはさらさら思っていないし、そんな場もないからである。自分が学べればそれでいいだけ。いろいろ駄文を書いて、生涯に一本記念になる論文を書ければそれでよし。評価されないだろうから、焦る必要もないのだ。ただし、自分の要求水準と合致しないから若干の焦りを感じるのだけれども。
自宅の書庫にでもできあがった論文を積み重ねておいて、この世とおさらばじゃ。できるだけ遅い方がよろしいけどねぇ。こればかりはわからんが。
中沢新一著 「熊から王へ」 講談社 2002年を読んだ。ポメラでいろいろと読書メモを作っていた。この先生は、某一流国立大学の教授のイスを教授会の反対でそれこそ棒に振ってしまった方である。思想と宗教を研究されていたのだが、現在でこそ中央大学の教授になっておられるけれども、それまでどうやって暮らしておられたのだろうと不思議に思っている。いろいろ発言をめぐって、一時はマスコミからも批判されたが、愚生は当代一流の学者であると思っている。なにしろ幅広く、奥が深い。ついていけないくらいである。年齢は愚生より一歳上である。
どうやったらこのような碩学になれるのだろうかと思った。しかし、思っただけである。能力が違いますな。全く違う。
今日作ったポメラでのメモをアップしておいて、また何かの機会に駄文を書いてみたいと思う。↓
熊を神とする狩猟民たちの「対称性の思考」とは?
王をいただく国家が、「無法の野蛮と結びつく根元の思考」
1、ニューヨークからベーリング海峡へ pp.9_34
非対称な文明
神話を語っていた人々は、動物たちのことを野蛮などとは考えなかった
神話が語られた社会では、人間が動物に対して一方的な優位に立ったりしていない
具体的な権力関係はなかったのだ
神話の世界では、人間は文化を持ち、動物たちは自然状態を生きていた
動物たちは、人間が触れることもできない「自然の力の秘密」を握っていた
国家が発生してこのようなことは、崩れてしまった
野蛮を内部に組み込んだ現代社会
宮沢賢治の世界はまさに人間と動物との間に絶対的な非対称な関係が作られていることを見通していた
利口な動物たちが、山猫や狐たちが、人間と動物たちの間の非対称をひっくり返していく物語 注文の多い料理店
この物語をつき動かしているのは、神話的思考
2 失われた対称性を求めて
対称性の社会と神話的思考は同じ意味
分離されているもの同士は、神話的思考をする
山羊と人間の結婚
しかも発情期があって、それ以外は性交をしてはならない
トンプソン・インディアン神話学 レヴィーストロース「山猫の物語」1991年
結婚には二重性があって、放っておくと自然状態になる 安定した制度などではなく、不安定そのものが結婚 不倫はこの自然状態の別の視点
3 原初神は熊であった pp.55_76
ネアンデルタール人たちと熊との神話的関係
洞窟の哲学
熊を神とする
古い記憶として現生人類に伝わっている
今でもアイヌの人たちは、イオマンテ(熊送り)で熊の頭蓋骨をきれいに化粧している
グリズリー熊は半分人間 マクラレン「熊と結婚した少女」1970年
4 対称性の人類学 pp.77_98
熊は贈与される
5 海岸の決闘 pp.99_122
6 環太平洋の神話学
折口信夫の直感
古代
タマ観念の原型
冬ということに着目した人折口
魂の浄化と再生の儀礼
折口はそこに目をつけた
アメリカインディアンたちの祭りと日本中部地歩の祭りがまったく似ていた
ボアズの研究にも触発されている
アザラシ結社のハマツァ
7 人喰いのシャーマン 王
8 野生の思想としての仏教
ゴータマはインド人ではなかった
サーキャ族のゴーマタ 少数民族 モンゴロイド系の民俗
ヒマラヤ山麓の
一種の知恵の宗教
非アーリア民俗が、古くからの伝承宗教をバラモンと対比させて説いたもの 渡辺照宏