水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

小説

2008年01月21日 | 日々のあれこれ
 高校の時、模擬試験に幸田露伴「五重塔」が出題され、問題を解くよりもその一節の文章そのものに心惹かれ、さっそく帰りに古本屋で購入して読んだ記憶がある。
 自分が入試問題を選ぶときにまず頭にあるのは、受験生に読ませたい文章かどうかだ。定期考査や校内実力テストでも、それは考える。なかなかこれという文章をえらびきれないままになってしまうことも多いけど。
 しかし、入試は学校の顔でもあるし、せめて自分の担当する問題くらいは、いい文章を選びたい。受験生に読んでもらいたい、できれば、その作品や作家にふれるきっかけになるならなおいい、とも思う。ま、現実には、そんなことはおこらないだろうとは思ってはいても、志としてはそういうものがある。
 今回のセンターの小説をみて感じたのは、出題者は、漱石のこの文章を50万人の高校生に読ませたいとほんとうに思ったのだろうかという疑問だ。いや別に漱石にも「彼岸過迄」にも文句があるわけではない。でも、別にこれでなくてもいいのではないか、あえて漱石でなくても、つまりもっと今を感じさせる作品で、しかも今回の問題程度の読解力を試す問題はいくらでもつくれる。おれでさえそう思うのだから、予備校なんかのプロだったら、なんだかなあという思いを抱いた先生もいらっしゃるんじゃないだろうか。大学の先生方が何ヶ月もかけて作成したのがこれか … というがっかり感をぬぐいさることができない。去年は、評論にも小説にも志を感じた。はい、科学的根拠をもたない感想にすぎないことは重々わかってます。

 
コメント
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