水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ちげーとか言う意味じゃね?

2016年10月04日 | 国語のお勉強

 

 文化庁の調査によると、「ら抜き言葉」を使う人が半数を超えたという。
 まじで? 半数?
 おどろいた。いまどき「ら」を入れてる人が半分近くもいるなんて。
 いや、実際にはそんなにいないだろう。アンケートに記入するというよそ行きの行動ゆえに、少しきどって答えた人が多かったにちがいない。もしくはアンケートの対象が特殊な層だったか。
 「昨日の帰り、映画観れたの?」「観れた!」がふつうで、「観られた」と答えたなら、自分に敬語つかっちゃった感がただよってしまう。
 そんな実感とすりあわせることもなく、ただ結果を発表している感覚が、実にお役所ぽい。
 本来は、文法の方が「後付け」の理論なのだから、どっちが正しいとは言えないものだし。
 それよりも、「違う」の意味の「ちげー」という言葉が気になる。若者たちは普通にもちいるが、さすがにおじさんには無理だ。
 日本語は、母音が二つ並んだとき一つの母音になろうとする。
 「ア・ウ」は「オー」に変わるのが日本語の音韻の歴史上の原則だった。
 だから「ちがう」を俗語化するなら「ちごー」って言うべきだ。
 ちなみに石川県では「ちがう」を「ちごー」という。能登が舞台の「まれ」は、なんといっても門脇麦ちゃんの訛りぐあいが素晴らしかった。
 若者の使う「ア・ウ」の「エー」化は、何年前ぐらいからの用例が採取できるのだろう。「ア・イ」を「エー」化する江戸弁の影響下にあるものだろうか。
 学部の言語学のレポート一本分ぐらいのネタになりそうだ。
 「言い方!」「~する意味!」とかの新しい体言止めの用法も研究課題になりそうだな。ノーベル賞には絶対該当しないけど。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

調教作業

2016年10月04日 | 学年だよりなど

 

    学年だより「調教作業」


 たとえば「小説家」という生き方ができる人は、おそらく神から命じられた選ばれし方々だけだ。
 そのような限定的な才能を万人がもっているとは普通考えられない。ブンデスリーガでプレーするサッカー選手しかり、メジャーリーガーしかり。
 作家の村上春樹氏は、「小説家にとって最も重要な資質は何ですか」という質問に、「言うまでもなく才能」だと答える。「文学的才能がまったくなければ、どれだけ熱心に努力しても小説家にはなれない」と。
 そして才能の次に大事なのは何かと問われ、氏は「集中力」そして「持続力」だと言う。


 ~ 自分の持っている限られた才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める能力。これがなければ、大事なことは何も達成できない。そしてこの力を有効に用いれば、才能の不足や偏在をある程度補うことができる。
  … 集中力の次に必要なものは持続力だ。一日に三時間か四時間、意識を集中して執筆できたとしても、一週間続けたら疲れ果ててしまいましたというのでは、長い作品は書けない。 (村上春樹『走ることについて語るときに僕が語ること』文春文庫) ~


 近年、この時期になると必ずノーベル文学賞の有力候補と話題になり、今年は最有力と予想されている村上氏。近年の作品『1Q84』は、数百万部を越えるベストセラーとなった。
 そんな村上氏は、「自分には才能が不足している」と語っている。
 こちらからすれば「うそ!」と驚くしかないが、あくまでもご自身の感覚としてはそうであり、その才能の不足分を、「集中力」と「持続力」とで補ってきたと言うのだ。
 「才能」はもってうまれたものだが、「集中力」と「持続力」については、いくらでも向上させていくことができると氏は考えている。


 ~ このような能力(集中力と持続力)はありがたいことに才能の場合とは違って、トレーニングによって後天的に獲得し、その資質を向上させていくことができる。毎日机の前に座り、意識を一点に注ぎ込む訓練を続けていれば、集中力と持続力は自然に身についてくる。これは前に書いた筋肉の調教作業に似ている。日々休まずに書き続け、意識を集中して仕事をすることが、自分という人間にとって必要なことなのだという情報を身体システムに継続して送り込み、しっかりと覚え込ませるわけだ。そして少しずつその限界値を押し上げていく。気づかれない程度にわずかずつ、その目盛りをこっそりと移動させていく。これは日々ジョギングを続けることによって、筋肉を強化し、ランナーとしての体型を作り上げていくのと同じ種類の作業である。刺激し、持続する。刺激し、持続する。この作業にはもちろん我慢が必要である。しかし、それだけの見返りはある。 ~


 集中力や持続力は、筋力を鍛えるのと同様に身体的かつ運動的努力で身につけられるのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする