学年だより「才能×努力」
「M-1グランプリ2018」(テレビ朝日)を見ながら、今のみなさんは若手の芸人さんみたいなものだなと考えていた。
といっても、M-1決勝に進めた9組のような売り出し中の芸人さんではない。
いつか自分もテレビで持ちネタを演ってみたいと夢見ながら、地下ライブのチケットを知り合いに手売りしようとして断られ、ふざけんなと悪態をつきながらバイトに向かい、深夜の公園で相方とネタ合わせをしながら行き詰まってケンカしてしまい、アパートで発泡酒を開けているような、あまたいる芸人の卵たちだ。
お笑い芸人を目指す若者たちは、山ほどいる。俳優、声優、ミュージシャン、ダンサーしかり。 そして夢を叶えることができるのは、ほんの一握りにすぎない。
売れるためには才能が必要だ。芸人を目指して10年がんばり、それで芽が出ないなら才能がないのだから諦めた方がいい――、そう考えた島田紳助氏(元漫才コンビ「紳助竜介」)が企画して作り上げたのが「M-1グランプリ」だ。だから当初の出場資格は芸歴10年未満のコンビだった。
~ 全て才能やねん。世の中。なんの仕事も。才能ってのはわかりやすく言うと、6段階。0から5まであると思うんすよ。努力も0から5まであんのよ。
ほんで、才能5の人間が5の努力をしたら5×5=25 で最高点の結果が出ると。
だからひょっとしたらM-1落ちてる君たちの中にもその5の努力をしてへんのちゃうかと。
やったつもりでいても間違えた努力をしてるんちゃうかと。1ぐらいの努力しかしてへんかったらひょっとしたら才能が3、4あんねんけど、かけたって3、4にしかならない。1×3=3 やと。 (DVD『紳竜の研究』よしもとミュージックエンタテインメント) ~
NSC(吉本興業養成所)での講義で、彼はこう語る。
~ 才能はオレたちが得たんちゃう、親が与えて神様が与えて、でもがんばれる5を覚えるやろ? ほんだらこの世界でダメでも絶対成功すんねん。
なんでか。また違うもんを見つけたときに5をかければいいねん。
またダメやったら、また新しいことに5をかければええねん。だから成功すんねん。 ~
5の努力をしたところで、ほとんどの卵たちは芽が出ないままに終わる。
しかし、5の努力をした経験は体に残る。お笑いの才能は1だったことがわかっても、別の分野では3あるかもしれない。それは5の努力をかけてみて初めてわかる。