水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

津島祐子「水辺」(センター2001年)④

2020年05月24日 | 国語のお勉強(小説)
津島祐子「水辺」(センター2001年)④


補充記述問題(リモート添削)

設問「歪んだ、こわれやすい、透明なひとつのかたまり」とは、何をこのように表現しているのか。六十字以内で記せ。



S君より

「夫との別居で娘との生活に責任を持ち続けなければいけない不安がある一方、その生活が崩れることなく平穏が続いている生活。(58字)」

 自分でも答えと照らし合わせると、最後で無理矢理終わらせた感じがしました。(一応、「平穏」云々自体は49行目〜51行目から取り出しました)
 思考の順としては、「歪んだ、壊れやすい」=不安、これからの怖れ ↔「透明な一つの塊」=新しい生活が根付き、平穏? といった具合で、取り出しました。
 その思考に間違いがあれば教えてください。
 主人公↔世間 の関係は解答に盛り込んだ方が良かったでしょう



返信1

傍線部を説明するには、
 ①傍線部そのものを見る
   → 求められているのは何か? 何を言い換えればいいのか?
 ②傍線部の前後を見る
   → 指示語、SVO、係り受けなどに注意
 ③傍線部を含む段落・場面を見渡す
   →「=」「←→」のひとかたまりがないか
 の三つが大事です。これは評論、小説まったく同じですね。
 ○○くんは、①の意識はあり、言い換えるべき「要素」をおさえています。
 ③も意識できてます。
 ②は、補問の傍線部だけならとくに問題になりませんが、「=」部分のもう一つの「かたまり」には「愛着を持」つとつながっているのはチェックでしょう。

「歪んだ、壊れやすい」
 →言い換えるとして「不安定」はすぐ見つかるけど、もう一声ほしくないですか?
「透明なひとつのかたまり」
 →=「新しい生活」のことだけど、もう一声ほしくないですか?

「歪んだ」は、世間からは認められにくい家族の形式であると、「私」が意識していることを表現しているのでしょう。
 これを思いつくには、やはり「私←→世間」の意識があるといいと思います。
「透明」って、もう少し「+」にしたいです。まして「かたまり」は「愛着」だし。
 周りからは認めがたいものであればあるほど、人はそれにこだわってしまうこともありますよね。

 ○○君の答案を直すとしたら、「+」「-」の方向性をもっと強く出すということになります。
 解法①の意識はあるのですが、言葉のニュアンスを解答にもっと表したいと思って、これから勉強したらいいと思います。

夫との別居で娘との生活に責任を持ち続けなければいけない不安がある一方、
 → 夫の別居という、周りからは認めてもらえない、不安定な生活でありながら
その生活が崩れることなく平穏が続いている生活。
 → 娘と二人だけの平穏で大事にしていきたいと願ういまの生活。



S君より(2)

 ありがとうございます。改めて傍線部内の対立関係(マイナスとプラス)の相互関係を見直しました。
 主人公の葛藤の中核、主人公の心中のプラスマイナスは、傍線部に集約されている感じがしますが、だからこそ、答えはプラス、マイナスの差異→でも娘との生活に愛着がある、大事にしていきたいという、言葉のニュアンスをしっかり出さなければいけない解答が求められている。
 プラスを強く出す、マイナスを強く出す。そうするために、もう少し強い調味料=ニュアンス を考えてみる。
今後意識してみることとして、こんな理解で大丈夫でしょうか。



返信2

 そうですね、そんな意識をもち、とにかく傍線部をしっかり説明しようすべきなのでしょうね。
「傍線部」には、出題者の強い気持ちが表れてます。
 いろいろ出題したい箇所のなかから、やっぱここかな、この言葉のニュアンスをどの程度読み取ってくれるのかな、と考えるものです。
 試験問題というのは、書かれた文章と読む人の二方向ではなく、出題者という存在を意識しないといけないのでしょう。

解答例
 夫との別居という周囲からは認めてもらえない不安定な生活だが、
 娘と二人だけの平穏で大事にしていきたい今の暮らしの形のこと。

80字パターン
 母と娘だけで生きていくという、不安定で、世間から受け入れ難い形ではあるが、
 自分の気持ちに素直に従い大切にしていきたいと感じられる今の暮らしぶりのこと。
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