サンシャイン劇場で宅間孝行作「歌姫」を観た。
東京セレソンデラックスという主宰していた劇団を解散し、宅間フェスティバルと銘打った公演をうつようになって四年目。
役者さんは公演ごとにカンパニーを組む形となったが、ヒロイン役は、森田涼花さん(「くちづけ」)、内山理名さん(「夕」)といった十分な実績のもつ女優さんが演じてきた。とくに神がかっていたとさえ感じた田畑智子(「晩餐」)のお芝居は、いまも思い出すと胸があつくなるくらいだ。
今回のヒロインはAKB48の入山杏奈さん。正直、大丈夫か? と思った。ていうかよくオーディション通ったなとも。でも、予想に反してといったら申し訳ないし、あの厳しいレッスンで知られる宅間氏のおめがねにかなったのだから、杞憂にきまっているのだが、ほんとによかった。
ヒロインのお姉さん役の原史奈さんも、記憶を失った主人公の元奥さんを演じる酒井美紀さん、みんなきれいでみんないい。そして上手。勝手な推理だけど、宅間さんチームに入ることで、お芝居ってこうだったんだって気づいた部分があるのではないだろうか。
とにかく女優さんの充実ぶりでは、宅間さんのお芝居の歴史で一番だったと思う。
超ベテランの役者さんが、「宅間くんの芝居にでられてよかった、きびしいけど勉強になった」と、以前カーテンコールの後かたられていたことがある。
そんな宅間氏が、開演前にはパンフにサインし続け、終わったあとはみんなでダンスをする。お客さんに喜んでもらえるためなら何でもしたいという気持ちを、ここまで実践できる演劇人はいない。
もちろんお芝居自体がすばらしいのは言うまでもない。笑わされ、泣かされ、考えさせられ、最後は明日からも頑張って生きていこうという気にさせられる。あの場にいられたことの幸甚これに過ぎたるは無し。
音楽であれ、お芝居であれ、お客さんにこんな気持ちになってもらえたら、演奏する側、演じる側も幸せなはずだ。