糸魚川市の大規模火災には、心を痛める。
人的被害こそ、死者0であるが、焼け出された人たちは、すべてが無くなって年末年始を迎えるとは夢にも思ってもいなかったろう。
今は茫然となっているにちがいない。
このような大規模火災は、日本では昔から多く(百万都市の江戸も幾度も経験)、近代以降になっても特に日本海側で目だつ。
大規模火災になると、既存の消火システムはお手上げになってしまい、山火事のように、鎮火を待つしかなくなる。
こうなったら自然災害と同じ規模になり、その損害額は個人の能力を超えてしまうが、自然災害ほどの法的ケアがない。
なので、できるだけ直接原因となる出火を抑えるしかない。
自然災害でないので、それは可能だ。
大規模火災が発生するのは、出火レベルから、延焼レベルまで複合要因が重なったものだが、気象条件も複合的に重なっている。
気象条件からみると、まずは、火災になりやすい大気状態であることの確認が第一歩。
以下の2つがかかわる。
①乾燥:空気と可燃物が乾燥していて燃焼しやすい状態
②風:燃焼を拡大する酸素を供給する風が強い
①は空気に関しては、相対湿度が分りやすい指標となる(他に絶対湿度)。
一般に相対湿度が30%を切ると「乾燥」となる。
ただし、同じ30%でも気温が高いと飽和(100%)に至るまでの水分量が増えるため、
絶対湿度でいうと、気温が低い、つまり夏より冬の方が、水分量が少ない。
夏より冬に火災が多いのは、暖房の火という原因もあるが、冬の方が絶対的に乾燥しているためだ。
さらに、物が発火・着火しやすいのは、空気の乾燥だけでなく、物自体が乾燥しているためである。
それは大気中のその時刻の相対湿度では測れない(降水後は湿度が低くなっても物は湿っている)。
これに対応する指標は、「平衡含水率」というもので 、いわば”木材の湿り気”を表している。
この平衡含水率は、気象庁からは発表されていないが、モデル計算が可能なので、私のような私設気象台で常時情報提供している。
たとえば、今この記事を書いている9:30現在、わが私設「本駒込気象台」(東京都文京区)の平衡含水率は8.9%,
勤務先の「日進気象台」(愛知県日進市)では14.1%である(リンク先の画面の下の方、「参考」の真ん中へん)。
同時刻の相対湿度はそれぞれ、43%、71%である。
この地域差は、もととも東京が定常的に相対湿度が低いためだが(今日は気温も高い)、二日前の降水量の違いも含まれている。
平衡含水率はおおざっぱにいうと、15%以下で「乾燥」、
すなわち木材が燃えやすい状態といえる(両地ともだいたい冬の間は15%を下回っている)。
②の風は、もちろん風速でわかる。
風向も注意してほしい。
日本海側では、南風だと、山越えの乾いたフェーンとなり、乾燥した強風になってしまい、ますます火災の危険が高まる。
今回の火災もこの南風によって延焼してしまった。
太平洋側だと、南風は暖かい湿った風となるので、むしろ湿度・含水率は上がる(さらに降水確率も上がる)。
こちらは北風(からっ風)に注意したい。