今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

浄楽寺の阿弥陀三尊に祈る

2019年10月19日 | 仏教

台風19号は、強風を脅された東京においては肩透かしをくった感だったが、東京以外の各地で死者が80名を越す大きな災害となってしまった。

防災的な考察をする前に、まずは不慮の水害で溺死した人たちに祈りたい気持ちになっていた。

そんな折りの今日、横須賀市にある勝長寿院浄楽寺の運慶仏(国重要文化財)が半年に一度の開帳日が重なった。


私は”秘仏巡り”も趣味としており、また鎌倉の寺巡りで、訪れていない唯一の寺(運慶仏は鎌倉の寺にあった)といってもよい。
そしてここは浄土宗なので、死者に祈りを捧げるには最適。

ここへの公共交通機関のアクセスは逗子からの京急バスなので、品川から京急に乗って新逗子に行き(山手線の田端から848円、JRで逗子までだと1100円)そこから逗子発のバスに乗ることにする。

私が生まれて最初に海水浴をした(かすかな記憶のある)葉山海岸を抜け、「浄楽寺前」というバス停で降りる。
もちろんバスを降りたら寺の門前。

まず本堂に上り、この寺(鎌倉武将和田義盛が建てた)の本尊である阿弥陀三尊を拝観。
はじめ、この三尊が運慶仏だと勘違いし、運慶作にしてはあまりに凡庸な造作だといぶかってしまった。
目指す運慶仏は本堂背後の収蔵庫にあった。

収蔵庫前で、住所氏名を書かされ、拝観料200円を払う。


ほぼ等身大の阿弥陀三尊(両脇侍は勢至菩薩、観音菩薩)が中央にあり 、その左に毘沙門天像、右に不動明王像が加わる。
この五体すべて運慶作。
これほどの運慶仏が一堂に居並ぶのは、東国はもとより、運慶の地元奈良にもないだろう。
この寺が元は鎌倉の地にあったためだ。 

じっくり鑑賞する前に、まずは阿弥陀仏の前で合掌して、台風19号の犠牲者に思いをはせながら弥陀の名号(南無阿弥陀仏)を十遍唱えた。

顔や胴体の筋肉がリアルな毘沙門天と不動明王は、精巧な仏像フィギュアを販売しているイスムのラインナップになっている(私はここで観心寺の如意輪観音のフィギュアを買った) 。

私にとっては、きりっとした表情(でも硬くない)の阿弥陀三尊がよかった。
中でもとりわけ勢至菩薩のお顔がよかった(右、寺の絵葉書から)。
憤怒を示す毘沙門天や不動明王と違って、如来や菩薩は無機的な顔立ちに作られがちだが、運慶が作る仏は、中立的ながらも生きた表情があり、生命感がある。

ということもあって、生の人間いや仏様と対面しているようで、いつまでも見飽きず、立ち去りがたい。
写真撮影はもちろん禁止だが、五仏の絵葉書が売られているので、それを買うことにして、やっと離れることができた。

ついでながらこの寺の墓地に、日本の郵便事業を創設した前島密の墓がある。