2泊した山陰旅行は、1泊目が玉造温泉、2泊目が三朝温泉。
温泉ソムリエでもある私は、温泉を肌や気分だけでなく頭(データ)でも味わいたい。
玉造温泉の宿は、湯神社に近い「山の井」。
以下のデータはあくまでその宿の浴室。
まずは分析書(源泉)の解読。
泉温59.5℃で、これだけで「温泉」合格。
pHは8.0で弱アルカリ性。湧出量の所は****となっている(計測不能なほど多いか少ない?)。
残留物(温泉のミネラル的濃さ)は1470mgで「療養泉」(適応症を謳える)に合格だが濃度は薄め。
内容は、陽イオンがナトリウム、ついでカルシウム。陰イオンは硫酸、塩素。
なので泉質は、「ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉」。
ナトリウムと硫酸塩によって美肌効果(しっとり肌)があるので、これを謳ってまずは女性を引き寄せているわけだ。
あとラドンも1.41M・E(マッヘ)と少々混じっている。
さて、今度は浴室での私による計測。
内湯の湯口でサンプルを取る。
pHは7.0と源泉より低い(酸性に傾いている)。ここの水道水は6.5だったから、熱いあるいは少ない源泉を加水しているのだろうか。
電気伝導度は220μS(33℃)と分析(源泉)の1/10。加水してるとしたらその程度もわかる。
酸化還元電位は+732mVもあり、私にとっては最高値。
ちなみに浴室内をガイガーカウンターで測ったら0.3μSv/hで、ちゃんとラドンがあるようだ(浴室外では0.1μSv/h)。
まぁ、玉造温泉は美肌効果を謳うわけだから、温泉としての濃さは期待しなくてもいい。実際、薄い名湯は各地にある。
2泊目は、三朝温泉。宿は源泉が複数あるという「木屋旅館」。
放射能泉好きの私はここを一番の楽しみにしていた。
ところが、体を洗うため広い男湯(河瀬の湯)に行ったら、分析書は「ナトリウム・塩化物泉」としか解釈できない内容。肝心のラドンの値が載っていない!
実際ガイガーで測っても、どうしたことか0.1μSv/h。
これだと玉造温泉より低い(ていうか単なるバックグラウンド)。
ましてやよく行く東濃(岐阜県中津川市付近)の放射能泉とは比較にならない。
同行者は温泉に入った気になっているが、浴室のたたずまいだけで温泉だと思わない私は納得しない。
これが天下の三朝温泉だとは思いたくない。
ちなみに浴槽湯口の値は、pH7.5,電気伝導度は1795μSで玉造温泉よりはずっと濃い。
酸化還元電位は+346で玉造温泉よりは還元水に近い。
”温泉”に満足した同行者が寝静まった後、私は来館時に最初に紹介されたものの、まだ入っていない地下にある貸切りの浴室に向った。
果たしてそこの分析書にはラドン濃度が載ってあった。
玉造と同じ単位M・Eに換算すると、17.34。
放射能泉でない玉造(1.41)とは比べるべくもない濃さ。
こうでなくては。
浴室内の源泉は75℃もあって(湧出量は毎分51.6リットル)、それが浴槽に満ちているので到底入れない。
東濃のかすみ荘と同じく、水で薄めて入るのだが、浴槽が大きい分、いくらホースで水を足してもちっとも適温にならないので入るのはあきらめた。
浴室内に「枕湯」と書いてある飲泉用の源泉がある。
その蓋を開けると、沸点に近い熱湯の湯気が立ち上る。
ビニール袋に入れたガイガーを源泉の数十cm真上にかざしてみる。
まず0.4μSv/hの値を示す。
この値は、東濃の放射能泉(湯の島温泉、かすみ荘)と同じ。
そしてβ線量も含めた値を測るため、測器の遮へい金具をはずすと、見事1.5μSv/hに跳ね上がった。
2011年当時の関東のホットスポット(地表1cm)の並の値。
この値に満足した私は、熱すぎる湯にはまったく入らず、そばにあったコップで熱い源泉をゆっくり呑み込んだ(胃での内部被曝を期して)。
床もかなり暖かいので岩盤浴気分で浴衣のまま床に足を伸ばした。
この浴室ではこれで充分だ。
翌日、この源泉の値が高いことを宿の女将に話すと、自分たちは入ると疲れてしまい、仕事に差し支えるから、あの源泉には入らないのだという。
そう、本物の(一定以上高い)放射能泉は、一浴しただけで湯あたりしてしまうほど刺激が強烈なのだ(他の泉質の温泉だと、湯あたりするのに2,3日要する)。
だから私も、水で減温してまで浴槽に入る気にならず、浴槽の脇に足を伸ばすだけで満足したわけ。
より正確にいうと、ラドンは気体なので、入浴しなくても、そこで呼吸しているだけで効果があるのだ(だからラドン温泉に露天はありえず、浴衣のままの岩盤浴がある。三朝にも露天の共同浴場があるが、ラドン的には無意味)。
満足した。
ただし、同じ宿でもかくも濃さが違うから、ホントはこのような計測値を参考にされるとよい。
といっても、温泉の真のラドン量は、私のような空気中の測定ではなく、水中の測定によるべきものなので、私の値は参考程度。