麻原彰晃が率いたオウム真理教は、合法的な選挙による日本支配の構想が潰えた後、
無差別テロによって、日本に内戦をもたらそうとした。
実施に成功したのはサリン散布だけだが、
その他に生物兵器そしてロシアから核兵器の入手も画策していた(過去のNHKの放送による)。
日本史上、最も危険な人物だったのだ。
麻原一人の意思で、本来は善良な市民だった信者らが、
いやそれどころか一流の頭脳を持った科学者・医者・弁護士らの信者らがコマのように動かされた。
この恐ろしい現象は、ミルグラムの「服従の心理」の実験で、すでに心理学界では知られていた。
それが現代日本で大々的に再現されてしまったことに驚いた。
かように、私がゾッとするのは、麻原個人の無差別殺人志向ではなく(それだけだったら他にもいる)、彼を教祖と仰いで、その殺人命令を実行した信者たちの姿。
誰がそうなってもおかしくない現象だから。
宗教教団という強固に統制された社会集団が内包する恐ろしさだ。
事実、オウム真理教の前には、連合赤軍がいて(共産主義も宗教と同じ)、
その後にはイスラム原理主義者たちが続いている。
事件を起こす前の麻原は、実は、新興宗教の教祖たちの中ではレベルが高いと、
当時の宗教学者らの間で評価が高かった。
宗教に対して免疫がある人たちまでもが、麻原の虚像を見抜けなかったということは、
それなりの引き付ける力をもっていたのだろう。
私自身、この恐ろしい吸引力を探ろうと、教団発行の書籍(麻原の著作)などを集めたものの、一向に読む気になれないままでいる。
教祖麻原がいなくても(名を変えた)教団として存続可能になっている事も、
教義が独り歩き可能になっていることを示しているようで、不気味だ。