日本人の防災は”地震”にかたよりすぎている、とつくづく実感していた(防災の講演経験などから)。
学校でやる避難訓練もたいてい地震だけを想定している(実はそのほうが訓練が簡単)。
東日本大震災の生々しい記憶はそれをさらに強化した
(同じ年に紀伊半島で死者100名を超える気象災害が発生したのだが、覚えている人はいかほどか)。
言い換えると、地震災害は誰でもが「起こりうる」と構えているが、
気象災害に対しては多くの人が、「起きるはずがない」と構えどころか関心すら示さない。
すなわち地震に備えている人でも、気象災害へのシミュレーションをやっていない
(頭の中のシミュレーションだけでもいいのに)。
だから、いざ大雨や河川増水に見舞われても、避難のタイミングが判らないのだ。
予測と実況が可能な気象災害こそ、死者を0にできるのに。
この防災意識のアンバランスは何に由来しているのか。
センセーショナルな危険に関心が集中し、確率的には決してひけをとらない他の地味な危険に鈍感になるのか。
ガンに対してはひどく怖がるが、肺炎には無関心とか。
つまり、防災においても、偏った認知(バイアス)と自動化された不正確な思考(ヒューリスティック)に陥っている
(これらは行動経済学と認知行動療法の共通概念)。
まずは地震に偏った今の防災教育をやり直すべきだ。
わが勤務先の大学でも、学部・学年を問わず誰でも履修できる「安全学」という授業をやっているのだが、
この授業の計画時は地震対応(しかも東海地震!)だけだったが、私が参画して気象災害をつけくわえた。
こういう活動も気象予報士兼防災士としての任務だと思っている。