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虐殺器官 伊藤計劃
昨年の読書界とりわけSF界の話題を独占した本書。長編小説2冊、ノベライズ本1冊、短編小説3編を残して、2009年に35歳の若さで夭折した著者の最高傑作である。題名のおどろおどろしさとマニアックなSF読者からの高評価をみて、少し苦手な「サイバーSF」系かと思い込み、敬遠していたのだが、読んでみて完全な勘違いであったことを痛感した。無機質なサイバーSFとは対極にある非常に思念的でむしろリリックな雰囲気の漂う傑作だった。SF小説の各賞を総なめにし、2000年から2009年の10年間のベストSFにも選ばれた本書、日本のSF史上特筆すべき作品という評価は誇張ではないだろう。ただ、本書に対する小松左京の「本書のメインテーマである『虐殺の言語』とは何なのか、虐殺を引き起こしている男や主人公の最後の行動の説明が不十分」というコメントは、非常に判る気がする。こうした本書の小さい欠点と、本書全体の驚くべきアイデアのどちらを重く見るかで、本書の評価は大きく分かれるだろう。それにしても、作者の本があと1~2冊しか読めないという事実には、心底打ちのめされる。(「虐殺器官」伊藤計劃、ハヤカワ文庫)
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ギイ・ラフレール サイン NHL
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