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春を嫌いになった理由 誉田哲也
裏表紙の解説によれば、本書はホラー・ミステリーに分類される作品とのことで、今まで読んだ作者の作品とは少し毛色の違う作品だった。著者の作品は「姫川シリーズ」に代表される「警察もの」、「武士道‥‥」などの「スポ根もの」、そして本書のような「ホラー・ミステリー」の3つに分類され、著者はこのような本も得意としているのだそうだが、「姫川シリーズ」の凄惨な犯罪の描写はホラーそのもののような気がするし、今まで読んだ3タイプの本はいずれも主人公が女性で、その女性の性格も似ているようで、特にそうした分類が必要という感じでもないようだ。少し毛色が違うと書いたのは、本書が「超自然現象」「超能力者」をストーリーの中で扱っていることで、本書がホラー・ミステリーと分類されるというのは、読者への注意書きのようなものだろう。ヴァン・ダイン以来のミステリーの大原則に「超自然現象や超能力者を扱ってはいけない」というのがあるが、本書をそうした伝統的なミステリーと混同されないようにするという配慮だ。ただ、本書の場合は、犯罪の解決に「超能力者」が関与していても、本書のような役回りならばそれもOKかなと思う。内容としては、全く異なるストーリーが交互に語られ、それがいつどのような形で1つになるのかが最大の焦点で、その2つが結びつく場面には、意外な事実というミステリー要素がちゃんとあって、楽しめる。(「春を嫌いになった理由」 誉田哲也、光文社文庫)
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