goo

ある小さなスズメの記録 クレア・キップス 

老婦人と彼女に助けられた障害を持って生まれたスズメとの交流を、老婦人自らが記録した本書。そのスズメがナチスの空襲におびえるロンドン市民に勇気を与えたというくだりでは、どうしても東北大震災の苦難をいかに乗り越えるのかという課題が、どうしても頭をよぎる。激しい空襲を耐え忍んだイギリス国民の強さは、その「我慢強さ」というよりも、このスズメが「サイレンだ」という掛け声で人の手の中に逃げ込む芸当を見て「笑いながら楽しむ」その「明るさ」にあるということを教えてくれる。羽と足の畸形という障害を持って生まれたこのスズメの観察を通して、「大きな勇気と強い個性があれば特性となりうる」と述べる著者の洞察、最期まで気高く生き抜いたスズメを見ながら考える生き物の「老いと死」に対する定見なども、今の時代に強く響く内容だ。(「ある小さなスズメの記録」 クレア・キップス、文藝春秋社) 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )