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パラダイス・ロスト 柳広司

待ちに待った「ジョーカー・ゲーム」の第3弾。と言っても、意外と早くでたなという印象だ。あまり早いと内容はしっかりしているだろうかと少し不安になる。こうしたとびきり面白い連作集の続きは少し待たされすぎるくらいがちょうどいいという気もする。本書に関して言えば、執筆を急がされすぎて内容が雑になってしまっていないかという心配はとりあえず杞憂だった。もちろん第1作目を読んだ時のようなインパクトはなかったが、一定の水準を維持してくれているのは大変ありがたいことだ。本作では、シリーズの主人公である魔王=結城中佐の過去に関するエピソードが描かれている。この結城中佐の神秘性が今シリーズの面白さの1つになっていると思うが、それを損なわずに書かれていてホッとした。このシリーズはまだまだじっくり楽しめる気がする。(「パラダイス・ロスト」 柳広司、角川書店)

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ナミヤ雑貨店の奇蹟 東野圭吾

久し振りに夜更かしをして読んでしまった。現実に存在するかのように登場人物が生き生きと動きまわり、なるほどと思わせるトリックや謎ときがあり、真正面から扱ってはいないが何となく社会の歪みや理不尽さを描く、これが最近の著者の作品の真骨頂だと思うが、本書はそうした最近の作風とは少し毛色の異なる作品だ。登場人物が自然に動き回り会話をする点は変わらないが、描かれているのは「過去との手紙のやりとり」というよくある設定の少し不思議な世界。著者の作品は半分くらいしか読んでいないが、こうした少し不思議な世界を描いた作品をこれまでにもいくつか読んだし、もしかするとかなりの数になるのかもしれないが、本書のようなノスタルジックな部分を前面に押し出したような作品は少し珍しいのではないかと思う。複数の過去と現在が入り乱れ、複雑な構成の作品で、どこがどこにつながっているのか、誰が誰を助けているのか、頭の整理をしながら読むのが楽しかった。(「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾、角川書店)

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