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ふじこさん 大島真寿美

今年の本屋大賞候補作「ピエタ」の著者の処女作を含む短編集。3つの中短編が収められているが、いずれも「ピエタ」のような静謐さが漂う文体の作品だ。3作とも女性の一人称で書かれており、当然ながら登場する男性は皆、主人公の目を通した印象で語られるばかりである。それはちょうど「ピエタ」のなかでヴィヴァルディが既に亡くなった人として描写されているのと呼応していて、男性はおしなべて影が薄くて存在感が乏しい。これは、女性作家だからというようなことではなく、この静謐な語りに男性の存在が大きな話がふさわしくないということなのかもしれない。「ピエタ」の良さは正にこの著者の持ち味そのものだということが了解できる作品だった。(「ふじこさん」 大島真寿美、講談社文庫)

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