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屍者の帝国 伊藤計劃×円城塔

夭折のSF作家伊藤計劃が残した遺稿を別の作家が完成させたということで話題になった本書。別の作家というのは芥川賞受賞の「円城塔」。受賞後にそういう話になったのかと思っていたら、順序が逆で、実はずっと前からその作品にとりかかっていることを芥川賞受賞の席で発表したということだったようだ。この話を聞いて、俄然、私の中で、本書への注目度も高まった。本書を読むと、流石に熱狂的なファンの多い伊藤の遺稿を完成させるということで、一筋縄ではいかない凝った内容になっていて、やややりすぎではないかという感じだが、逆に、そこまで徹底的にやってくれたので文句のつけようがない、という言い方もできる。実際に、伊藤がどの様なストーリーを考えていたのかは知りようもないし、それをとやかく言える人はいないだろうが、本書はストーリーの面でも、これならばというところまで突き抜けているような気がする。変に「彼ならばどうしただろう」ということに囚われず楽しめるのは、著者の芥川賞受賞のおかげという部分もあるかもしれない。(「屍者の帝国」 伊藤計劃×円城塔、河出書房新社)

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