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粘菌 中垣俊之

「前に書いた新書版の解説書がややとっつきにくかった」という著者自身の反省の弁があって、本書は読みやすさや判りやすさを意識した記述になっているということなのだが、判りにくさを心配するあまり、肝心の論考部分がかなり抜け落ちてしまっているように感じられた。あまり読者に迎合せず、全般的にもっと、実験の結果、そこから導き出される推論、さらなる検証といった科学ドキュメント的な記述が多くても良かったのではないかと思う。ただし、最初の章の「イグノーベル賞の舞台裏」の話はさすがに実際に受賞した著者でなければ書けない話で興味深かったし、後半の「ためらう」粘菌の話や「不安定性」の話なども深い考察から来る記述が大変面白かった。(「粘菌」 中垣俊之、文春新書)

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